第1号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2014年7~9月期)

  • 売上高、経常利益ともプラス水準である。ただ、業種によってはマイナス水準になっているところもあり、業種間格差がみられる。今後、円安や消費税増税といった経済情勢に注意しながら、会員企業は経営体質の強化を図らなければならない。
  • 売上高DI、経常利益DIとも前期比、前年同期比ともに2ケタ水準になっており、安定した経営体質を維持しているといえる。次期見通しでもプラス水準を保っており、会員企業の日頃の経営努力の積み重ねによるものとみられる。しかしながら、次期見通しで唯一マイナス水準となった商業では、消費税増税による一般消費者の需要停滞がさらに悪化すると見込まれる。また、サービス業は次期見通しのDIが高く、需要の増加が見込まれる。
  • 設備投資の実施企業は全体の2割強であり、建設業・商業でやや設備投資に前向きな姿勢がみられる。設備投資の内訳では「機器設備」、「情報システム関連」、「事務所・店舗」を中心に設備投資の割合が高い。
  • 資金繰の状況では、窮屈感がみられ今後の動向に注目する必要がある。
  • 経営上の問題は、「同業者相互の価格競争の激化」、「従業員不足」の割合が高く、これに対応するため、「新規受注の確保」、「付加価値の増大」、「人材確保」に力点が置かれている。
  • 全体として景況は、良い傾向にある。建設業を中心に需要増大がみられる一方、内需依存度の高い商業は厳しい状況が続く。業種間の格差はみられるものの、全体的に会員企業の経営体質は良いといえる。引き続き会員企業の経営体質を強化していく取り組みが必要である。

 

【調査要領】

(1)調査時 2014月9月11~30日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAXによるアンケート
(4)回答企業数 716社より124社の回答を得た(回答率17.3%)
(建設業12社、製造業38社、商業29社、サービス業43社)
※不明2社含まず
(5)平均社員数 1.正規社員20.3人 2.パート・アルバイト8.5人
※文章中のDIとは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
~概況報告~

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

景況調査の結果

1.売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準

1-1. 売上高

全業種の売上高のDIは、前期比で13、前年同期比で23、次期見通しは13となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。全業種をとおして、数値が高く、経営状態が良いことがわかる。特徴的なのが、建設業の前年同期比DIが42となっていることである。この背景には、消費増税前の駆け込み需要によって、住居用のマンション等の建設が進み、その余波がいまだに続いている可能性が高い。一方、商業に限っては次期見通しのDIが△4で、この図表1のなかで唯一のマイナス水準である。この要因としては、消費税増税後の一般消費者の需要低迷が長期にわたって続くことが考えられる。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益のDIは、前期比で11、前年同期比で10、次期見通しは8となっている。各業種のDIは下記の図表2の通りである。売上高DI同様、全業種をみてもほぼプラス水準である。建設業に関しては、前期比、前年同期比ともに33と他の業種と比べて高い水準を示しており、売上高と連動している。ただ、次期見通しに限り、建設業は0と低く、円安による材料費の高騰等によって、利益が減少傾向にあると考えられる。商業では、前年同期比のDIが△12となっており、売上高がプラス水準であったとしても、消費税増税後の増税分を価格に転嫁できていない現状が示唆される。次期見通しについても0であり、今後需要停滞の厳しさが増していくことが見込まれる。

 

図表2 経常利益DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-3. 経常利益の水準・業況水準

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは25、建設業→5、製造業→24、商業→41、サービス業→12である。全体をとおしてプラス水準である。なかでも商業は41と突出したDIを表している。

業況水準については、今期と次期見通しについてみていく。今期の全業種のDIは4、建設業→5、製造業→0、商業→△7、サービス業→2である。商業は経常利益の水準では突出して高いDIを表していたにも関わらず業況水準ではマイナスの数値となっており、売上高DIと経常利益DIに連動していることがわかる。次期見通しの全業種のDIは12、建設業→5、製造業→11、商業→17、サービス業→0である。ここでは商業がプラス水準に持ち直している。

 

2. 売上・利益が増加した理由、減少した理由

売上・利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の49.2%であった。次いで「得意先の業況変化」の16.9%、「売上単価・客単価の上昇」の8.1%であった。一方、売上・収益が減少した理由でも1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の19.4%であった。次いで多かったのが、「得意先の業況変化」の13.7%、「原材料費・商品仕入額の低下」の12.1%と、増加した理由も減少した理由もほぼ同じことであることがわかる。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期、設備投資を実施したと回答したのは全体の26.6%にとどまった。さらに、次期に設備投資を計画していると回答したのは27.4%であり、若干上昇しているが設備投資の傾向は芳しくない。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、多い順に、「機器設備」が36.4%、「事務所・店舗」が33.3%、「情報システム」が21.2%であった。次期の設備投資計画でも、「機器設備」が55.9%と高い割合を示しており、次いで「事務所・店舗」が26.5%、「情報システム」が8.8%であった。事業運営に特に重要な項目があがっていると考えられる。

資金繰の状況について、今期の借入金の増減と現在の資金繰の状況をみていく。今期の借入金に関して、増加→16.9%、横ばい→30.6%、減少→26.6%、無借金→24.3%で、借入金が増加している企業の割合が比較的少ないことがわかる。一方、資金繰の状況に関しては、余裕あり→13.7%、やや余裕→13.7%、順調→31.5%、やや窮屈→31.5%、窮屈→8.0%とやや窮屈もしくは窮屈と回答した企業が約4割もあった。また、資金繰に余裕があっても、必ずしも設備に投資しているとはいえず、景気の先行きが不透明な現状では余裕のある資金を蓄える傾向にあるといえる。

 

4. 現在の経営上の問題点・力点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「同業者相互の価格競争の激化」の32.3%で、次いで「従業員不足」の29.0%、「仕入単価の上昇」の26.6%、「人件費の増加」の25.0%となっている。従業員が不足しているうえに、人件費の増加も問題となっており、人手不足感による経営体質の悪化が懸念される。

経営上の力点については、現在実施している項目と、今後新たに実施したい項目それぞれで上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」→57.3%、「付加価値の増大」→44.4%、「社員教育」→32.3%、「人材確保」→30.6%となっている。今後新たに実施したい項目でも1番多かったのは「新規受注の確保」の39.5%であった。次いで、「付加価値の増大」→35.5%、「人材確保」→30.6%、「新規事業の展開」→26.6%、「社員教育」→25.8%となっている。現在実施中の項目の上位と今後新たに実施したい項目の上位がほぼ同じであった。この結果は、既存の顧客を大切にしながらも、新規の顧客を開拓するための経営行動に積極的に取り組んでいるとみられる。さらに、人材確保や社員教育も上位にあがっており、従業員不足の課題を克服するための取り組みに力を入れているといえる。

 

5. 特別質問

5-1. メインの取引金融機関

メインの取引金融機関としては「信用金庫」が39社(31.5%)と最も多く、次いで「都市銀行」の38社(30.7%)、「地方銀行」の32社(25.8%)、「政府系金融機関」の6社(4.8%)、「信用組合」の2社(1.6%)となっている。信用金庫と都市銀行はほぼ同数で、地方銀行も大差がなく、この3つのいずれかを主な取引金融機関としている。

5-2.  「経営者保証ガイドライン」等、個人保証制度の見直しについて

経営者保証ガイドライン等の個人保証制度の見直しについての認知度についてみていく。「よく知っている」と回答した企業は12社(9.7%)で、「ある程度知っている」は71社(57.3%)、「知らない」は38社(30.6%)となっており、「ある程度知っている」企業も含め、この制度見直しについて知っている割合は約7割であった。また、「経営者保証ガイドライン」、個人保証制度の見直しについて取引先金融機関に具体的に何らかの行動をしたかどうかの設問に対して、「行動した」と回答した企業はわずか16社(12.9%)であった。この制度見直しについて知ってはいるものの、ほとんどの企業が行動に移せていない現状である。

さらに、「行動した」企業の結果をみてみると、「経営者保証を条件なしではずすことができた」と回答したのが6社(37.5%)、「停止条件付き保証契約や金利引き上げなど条件付きではずすことができた」が2社(12.5%)、「経営者保証をはずすことはできなかった」が5社(31.3%)、その他が3社(18.7%)であった。「行動した」企業の半数が経営者保証をはずすことができており、金融機関に対して何らかのアプローチすることが重要であると考えられる。

前述の設問で経営者保証をはずせた理由(複数回答)としては、「財務状況を正確に把握し、金融機関に適切に情報開示している」が1番多く、8社(100%)であった。次いで、「経理・資産等を法人・個人とで明確に区分・分離している」の7社(87.5%)、「自己資本比率等財務状況が安定している」の4社(50.0%)、「経営指針に基づく計画的な経営実践が評価された」の3社(37.5%)、「会社に保有資産がある」の2社(25.0%)であった。一方、経営者保証をはずせなかった企業で、その理由を聞くことができた企業は5社中4社で、ほとんどがその理由を聞くことができている。

第1号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)

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