第2号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2015年1~3月期)

業況水準、売上高、経常利益とも高い数値を表している。業種によっては高低差があるものの、全業種ともに景況は回復傾向にある。しかし、全業種ともに人手不足感が強くなっており、人材確保や人材教育といった取り組みを強化していく必要もある。

 

  • 売上高DI、経常利益DIともに2ケタ水準を維持している。次期見通しにおいても売上高DI、経常利益DIで20を超える数値となっている。前年同期比では消費税増税前の駆け込み需要があった時期であるのにもかかわらず、高い数値を表している。業況水準DIに関しても37となっている。ただ、サービス業では、他の業種と比較すると低い数値となっているので、消費税増税後の影響をいまだに受けている可能性はある。
  • 設備投資の実施企業は全体の2割強であり、商業では3割強となっており、他の業種よりも設備投資に前向きである。設備投資の内訳では「機器設備」、「事務所・店舗」、「情報システム関連」という順で割合が高い。
  • 資金繰の状況では、若干窮屈感がみられる程度である。
  • 経営上の問題は、「従業員不足」、「同業者相互の価格競争の激化」、「人件費の増加」の順に割合が高く、これらの課題を解決する方策として「新規受注の確保」、「付加価値の増大」、「人材確保」が重視されている。
  • 全体として景況は、回復傾向にある。建設業では受注量の増大がみられる。また、消費税増税後の影響が大きかった商業でも各DIが増加傾向にある。しかし、経済情勢の見通しは不透明なところもあり、会員企業は継続的な経営体質の強化が求められる。

 

【調査要領】

(1)調査時 2015月3月12~31日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAXによるアンケート
(4)回答企業数 733社より109社の回答を得た(回答率14.9%)
(建設業8社、製造業38社、商業24社、サービス業38社)
※不明1社含まず
(5)平均社員数 1.正規社員27.5人 2.パート・アルバイト60.7人
※文章中のDIとは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
~概況報告~

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

 

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準

1-1. 売上高

全業種の売上高のDIは、前期比で25、前年同期比で36、次期見通しは27となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。全業種をとおして、プラス水準となっており、神奈川県中小企業家同友会の会員企業の経営体質が良いことがわかる。特徴的なのが、商業の前年同期比DIが52となっていることである。前年同期比の場合、消費税増税前の駆け込み需要の時期と比較しているため、ある程度の低い数値が示されると予測されていたが、商業は消費税増税後の影響を受けていないのか、それとも回復傾向にあるのかのどちらかであると考えられる。また、建設業において次期見通しのDIが63で、突出して値が高い。建設業は、東京を中心とするオリンピック関連による施設の整備等で需要が見込まれていると考えられる。一方、サービス業では前期比のDIが13となっており、他の業種と比較して低い数値となっている。これは、飲食業を中心に人手不足感が強く出ているため、思うように売上が伸びないことが要因と考えられる。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益のDIは、前期比で16、前年同期比で27、次期見通しは25となっている。各業種のDIは下記の図表2の通りである。売上高DI同様、全業種でプラス水準である。建設業と商業に関しては、前期比がともに20を超えており、他の業種と比べて比較的高い水準を示している。さらに建設業においては、次期見通しの数値が50となっており、売上高の見通しと比例して高くなっている。一方、製造業の前期比のDIが11と、他の業種に比べて低く、売上高DIが高いにも関わらず、利益をあげることができていない。製造業は、原油高や円安による原材料費の高騰の影響によって、価格に転嫁できていない可能性がある。サービス業においては、売上高DIともに他の業種よりも低く推移しており、今後の動向を注視していく必要がある。

 

図表2 経常利益DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-3. 経常利益の水準・業況水準

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは45、建設業→75、製造業→45、商業→50、サービス業→34である。全体をとおして高い数値を示している。なかでも建設業は75と突出したDIを表している。

業況水準については、今期と次期見通しについてみていく。今期の全業種のDIは37、建設業→75、製造業→42、商業→46、サービス業→16である。建設業は、売上高DI、経常利益DIと同様に業況水準もかなり高い数値を示している。神奈川県中小企業家同友会の会員企業において、建設業を取り巻く経営環境が良いことがわかる。次期見通しの全業種のDIは20、建設業→63、製造業→16、商業→21、サービス業→16である。ここでも建設業が高い数値を示している。

 

2. 売上・利益が増加した理由、減少した理由

売上・利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の54.1%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の11.9%、「得意先の業況変化」の11.0%であった。一方、売上・収益が減少した理由でも1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の16.5%であった。次いで多かったのが、「原材料費・商品仕入額の増加」、「得意先の業況変化」で、ともに10.1%であった。増加した理由も減少した理由もほぼ同じであることがわかる。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期、設備投資を実施したと回答したのは全体の27.5%にとどまった。さらに、次期に設備投資を計画していると回答したのは37.6%であり、次期に設備投資を計画している割合が増加傾向にある。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、多い順に、「機器設備」が43.3%、「事務所・店舗」が26.7%、「その他」が23.3%であった。次期の設備投資計画でも、「機器設備」が43.9%と高い割合を示しており、次いで「事務所・店舗」が19.5%、「情報システム」、「その他」がともに14.6%であった。経営に不可欠な機器設備への設備投資を行うことによって、自社の存立基盤を強化しているといえる。

資金繰の状況について、今期の借入金の増減と現在の資金繰の状況をみていく。今期の借入金に関して、増加→8.3%、横ばい→33.0%、減少→27.5%、無借金→30.3%で、借入金が増加している企業の割合が少ないことがわかる。一方、資金繰の状況に関しては、余裕あり→20.2%、やや余裕→11.9%、順調→29.4%、やや窮屈→31.2%、窮屈→5.5%と、余裕ありとやや余裕と回答した企業が約3割を占めており、さほど窮屈感はみられない。しかし、日本経済の見通しは必ずしも良い方向に進んでいるとは言い切れず、資金繰の状況も今後注目していく必要がある。

 

4. 現在の経営上の問題点・力点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員不足」の28.4%で、次いで「同業者相互の価格競争の激化」の27.5%、「人件費の増加」の23.9%となっている。全業種で従業員不足の懸念が高まっており、特に建設業においては、技術職の採用が困難となってきている。

経営上の力点については、現在実施している項目と、今後新たに実施したい項目それぞれで上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」→52.3%、「付加価値の増大」→40.4%、「人材確保」→31.2%となっている。今後新たに実施したい項目で1番多かったのは、「付加価値の増大」の46.8%であった。次いで、「新規受注の確保」→37.6%、「人材確保」→25.7%となっている。現在実施中の項目の上位と今後新たに実施したい項目の上位がほぼ同じであった。この結果は、新規の受注を確保していかなければ、既存の受注だけでは自社の成長発展が実現できないからであるといえる。それと同時に、自社の製品・サービスの付加価値の増大も重要な経営行動となり、経営基盤の強化には欠かせないものである。現在の経営上の問題点の回答割合でも高かった、「従業員不足」という経営上の課題が見受けられるので、「人材確保」という努力は今後も引き続き行わなければならない。

 

5. 神奈川県内の景況
[各景況調査のDIの名称及び意味合いは若干違いがあることを留意していただきたい。]

今回の神奈川県中小企業家同友会のDIは全面的に高い数値を表しているのだが、会員企業の経営状態が良いのか、神奈川県内の中小企業の経営状態が良いのかという判断が困難である。そこで、神奈川県内で行われている他の景況調査に着目し、今回の景況調査結果と比較検討をしてみる。(公財)神奈川産業振興センターが行っている「平成27年1-3月期中小企業景気動向調査結果」によれば、全業種では業況DIは△27.5、売上高DIは△21.9、採算DIは△29.6となっている。また、横浜信用金庫が行っている「景況レポートNO.95」によれば、全業種では業況判断DIは0.0、売上額DIは7.3、収益DIは△2.5となっている。さらに、川崎信用金庫が行っている「中小企業動向調査」によれば、全業種では業況DIは0.4、売上額DIは0.6、収益DIは△4.7となっている。

 

上記の各景況調査の結果をみると、神奈川県中小企業家同友会の景況調査のDIが高い数値を示していることがわかる。各景況調査の回答数等の違いはあるにせよ、神奈川県中小企業家同友会の会員企業の経営状態は神奈川県内でも比較的良いといえる。会員企業は激変する経営環境に適応できる経営体質を持ち合わせていることが証明された。

各景況調査のDIの名称及び意味合いは若干違いがあることを留意していただきたい。

第2号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)

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