KDレポート

第4号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2016年1~3月期)

売上高、経常利益ともに高い水準である。また、経常利益水準DI は60となっており、黒字企業の割合が高い。一方、製造業の各DIの数値が他業種よりも低い水準となっており、業種間格差が広がっている。経営上の問題としては、建設業を中心として人手不足が改善されていない。

  • 売上高DI、経常利益DI ともに2 ケタの数値を維持している。次期見通しにおいても売上高DI、経常利益DI の数値は高い。業種別では、前年同期比では建設業、次期見通しでは、サービス業が突出して高い数値となっている。今期の業況水準DI が37、次期見通しの業況水準DI が25となっている。
  • 設備投資の実施企業は約3 割、次期に設備投資を計画している企業は約4 割である。設備投資の内訳では「機器設備」「事務所・店舗」「情報システム関連」、という順で割合が高い。また、「工場」の割合が増加している。
  • 資金繰の状況では、窮屈感はみられない。
  • 経営上の問題は、「従業員不足」「同業者相互の価格競争の激化」「熟練技術者の確保難」の順に割合が高い。これらの課題をクリアするために「新規受注の確保」「付加価値の増大」「人材確保」への取組に経営上の力点が置かれている。
  • 全体として景況は、回復傾向にある。建設業、サービス業では業績が改善傾向にある一方、商業、製造業では、特に製造業の業績が伸び悩んでいる。消費税増税が今後見込まれるなか、日本経済の先行きはいまだ不透明である。会員企業は激変する経済情勢に適応できる組織づくりが求められる。

 

【調査要領】

(1)調査時 2016 月3月10日~31日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAX によるアンケート
(4)回答企業数 782 社より113 社の回答を得た(回答率14.5%)
(建設業12社、製造業34社、商業25社、サービス業36 社、不明6社)
(5)平均社員数 1.正規社員26.1人 2.パート・アルバイト32.9人

※文章中のDI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
~概況報告~

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準

1-1. 売上高

全業種の売上高DIは、前期比で29、前年同期比で40、次期見通しは47 となっている。各業種のDI は下記の図表1 の通りである。前期比では、建設業の27、製造業の25、商業の27、サービス業の42となっており、サービス業の値が特に高水準である。前年同期では、建設業の64、製造業の16、商業の33、サービス業の54となっており、建設業の値が突出している。次期見通しでは、建設業の36、製造業の22、商業の52、サービス業の63となっており、商業、サービス業の値が50を超えている。
サービス業の売上高DIが他の業種よりも比較的高くなっているものの、製造業の売上高DI が伸び悩んでおり、業種間格差が顕著に表れている。建設業では、前年同期比の売上高DI が64 となっており、東京オリンピック関連を中心とした需要がいまだ健在であることがわかる。商業では、次期見通しの売上高DI が52 となっており、一般消費の需要回復が考えられる。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益DI は、前期比で32、前年同期比で34、次期見通しは23 となっている。各業種のDI は下記の図表2 の通りである。売上高DI 同様、全業種でプラス水準である。サービス業に関しては、前期比が43、前年同期比が47、次期見通しが56 で他の業種と比べても高い水準となっている。さらに建設業においては、前年同期比で50 となっており、売上高DI と比例して増加している。商業では、次期通しが48 であり、売上高DI と連動している。一方、製造業の前期比、前年同期比、次期見通しは他の業種よりも低い数値となっている。売上高DI と同様に経常利益DI でも製造業の値が低く、業種間の格差が存在する。

 

図表2 経常利益DI値

図表2 経常利益DI値

筆者作成

 

1-3. 経常利益の水準・業況水準

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは60、建設業→75、製造業→68、商業→48、サービス業→56 である。全業種でほぼ過半数以上が黒字を実現していることになる。特に建設業は75 とかなり高いDIを表している。
業況水準については、今期と次期見通しについてみていく。今期の全業種のDIは37、建設業→75、製造業→27、商業→20、サービス業→42である。建設業、サービス業は、売上高DI、経常利益DIが高い数値を表している影響もあり、業況水準も高くなっている。
一方、製造業、商業はプラス水準ではあるものの、建設業、サービス業の数値と比較した場合、伸び悩んでいる。次期見通しの全業種のDIは25、建設業→31、製造業→15、商業→24、サービス業→31である。商業以外の業種は今期の数値よりも落ち込んでいる。商業は今期の数値よりも少し改善されている。

 

2. 売上・利益が増加した理由、減少した理由

売上・利益が増加した理由として1 番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の55.1%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の15.0%、「得意先の業況変化」の12.0%であった。一方、売上・収益が減少した理由で1 番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の44.1%であった。次いで多かったのが、「売上単価・客単価の低下」「人件費の増加」の14.7%、「得意先の業況変化」の11.8%であった。
今回の結果では、売上・利益が増加した理由として、「売上数量・客数の増加」の割合が顕著に表れた。また、売上・収益の減少理由として、「人件費の増加」の割合が低くはなく、建設業を中心に人件費の高騰が続いている可能性がある。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期、設備投資を実施したと回答したのは全体の29.2%にとどまった。さらに、次期に設備投資を計画していると回答したのは40.7%であり、次期に設備投資を計画している割合が大きく増加した。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、多い順に、「機器設備」が50.0%、「事務所・店舗」が22.5%、「情報システム」「工場」が10.0%であった。次期の設備投資計画でも、「機器設備」が41.5%と高い割合を示しており、次いで「事務所・店舗」が18.9%、「情報システム」が15.0%であった。資金繰の状況について、今期の借入金の増減と現在の資金繰の状況をみていく。今期の借入金に関して、増加13.3%、横ばい22.1%、減少36.4%、無借金27.4%で借入金が減少している会員企業の割合が高いことがわかる。一方、資金繰の状況に関しては、余裕あり20.4%、やや余裕13.3%、順調38.8%、やや窮屈19.5%、窮屈6.2%と余裕ありとやや余裕と回答した企業の割合がやや窮屈、窮屈と回答した企業の割合を超えており、資金繰の悪化はみられない。

 

4. 現在の経営上の問題点・力点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3 つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員不足」の15.7%で、次いで「同業者相互の価格競争の激化」の11.6%、「熟練技術者の確保難」の8.6%となっている。建設業を中心に人手不足が考えられ、その影響で技術者の確保が困難になりつつある。
経営上の力点については、現在実施している項目と、今後新たに実施したい項目それぞれで上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」18.6%、「付加価値の増大」14.9%、「人材確保」13.9%となっている。今後新たに実施したい項目で1番多かったのは、「付加価値の増大」16.3%、次いで「新規受注の確保」13.1%、「人材確保」12.7%となっている。以上のように、景気の変動に関係なく、常に上位を占める項目への回答が目立った。

 

5. 特別質問の結果について

今回の特別質問では、2016 年度の賃上げに関する項目について行った。まずは、賃上げの予定に関する項目の結果からみていく。各項目では、「賃上げ実施を決定」→20.4%(23)、「賃上げ実施を予定」→46.0%(52)、「賃上げ是非を検討」→17.7%(20)、「賃金の圧縮を考えている」→2.7%(3)、「未定」→12.4%(14)、「無回答」→0.8%(1)という結果であった。
2016 年度の賃上げは約6割強が決定、もしくは予定となっている。次に賃上げの方法に関する項目の結果をみていく。各項目では、「定昇&ベースアップ」→22.7%(17)、「定昇のみ」→22.7%(17)、「定昇&賞与」→32.0%(24)、「ベースアップのみ」→16.0%(12)、「賞与のみ」→1.3%(1)、「その他」→5.3%(4、「無回答」0%(0)という結果であった。

賃上げの方法としては、「定昇&賞与」が一番高い割合となった。次に賃上げの水準に関する項目の結果をみていく。各項目では、「1%未満」→16%(12)、「1%以上2%未満」→30.7%(23)、「2%以上3%未満」→34.7%(26)、「3%以上4%未満」→10.7%(8)、「4%以上」→5.3%(4)、「無回答」→2.6%(2)という結果であった。約半数の回答割合が2%以上の賃上げ水準となっている。次に賃上げの決定方法に関する項目の結果をみていく(複数回答可)。各項目では、「社員の意見を聴収する」→15.1%(14)、「幹部間で協議する」→48.4%(45)、「社員から選出された代表と協議する」→0%(0)、「労働組合と協議する」→2.2%(2)、「ほぼ経営者の独断で決める」→31.2%(29)、「その他」→3.1%(3)という結果であった。賃上げの決定方法としては、「幹部間で協議する」「ほぼ経営者の独断で決める」の割合が高かった。

一方、賃上げが困難な場合の理由についての結果をみていく(複数回答可)。各項目では、「売上・受注の不振」→42.9%(21)、「原材料高騰」→2.0%(1)、「消費税率引き上げ」→10.2%(5)、「エネルギーコスト上昇」→2.0%(1)、「賃上げ分を販売価格に転嫁できない」→8.2%(4)、「賃上げよりも雇用維持を優先」→10.2%(5)、「同業他社との価格競争激化」→6.1%(3)、「取引先企業からの値下げ要請」→0%(0)、「設備投資を増強」→6.1%(3)、「その他」→12.3%(6)という結果であった。賃上げが困難な理由で一番多かったのが、「売上・受注の不振」で続いて「消費税率引き上げ」「賃上げよりも雇用維持を優先」の割合が高かった(その他は省く)。
神奈川県中小企業家同友会会員企業は、賃上げに関して積極的であることが明らかとなった。また、賃上げの方法に関しては、少なくとも定昇を行い、2%以上の水準で賃上げを実施する、もしくは予定があることがわかった。賃上げを決めるプロセスでは、経営者の独断よりも会社の幹部と協議する会員企業の割合が多かった。

 

第4号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)