神奈川同友会景況調査報告(KD レポート) (2017 年7~9 月期)

前年同期比の売上高、経常利益、経常利益水準、業況水準、業況判断の DI 間で差異が見受けられる。次期の見通しでは増加傾向である。一方、業種別では、サービス業の各 DI が他業種より高くなっている。経営上の問題・重点としては、人材に関わる項目の割合が高い。

 

  • 売上高DI、経常利益DI ともにプラス水準を維持している。次期見通しにおいては、売上高DI、経常利益DI の数値は増加している。業種別では、前年同期比、次期見通しでサービス業が高い数値となっている。今期の業況水準DI が10、業況判断DIが前期比19、前年同期比23、次期見通し27である。

  • 設備投資の実施企業は約2割強、次期に設備投資を計画している企業は約2割強である。今期の設備投資の内訳では「事務所・店舗」・「機器設備」、「情報システム」という順で割合が高い。

  • 資金繰の状況では、やや窮屈感がみられる。

  • 経営上の問題は、「従業員不足」、「人件費の増加」、「同業者相互の価格競争の激化」の順に割合が高い。これらの課題をクリアするために「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」「人材確保」への取組が重要視されている。

  • 前回のKD レポートの結果よりも売上高DI、経常利益DI 等で減少傾向にある。建設業の前年同期比における売上高DI、経常利益DI の数値は他業種と比較してかなり低かった。また、人材不足がいまだに問題点として示されており、経営状況を逼迫させている。会員企業は人材確保の取組に関して多様な方策を模索する必要がある。

 

【調査要領】

(1)調査時 2017年9月10日~10月10日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAX によるアンケート
(4)回答企業数 781 社より156 社の回答を得た(回答率20%)
(建設業14 社、製造業35社、情報・流通・商業31社、サービス業74社、不明2社)
(5)平均社員数  (1)正規社員21.9人 (2)パート・アルバイト13.6人

※文章中のDI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
~概況報告~

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

 

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準・業況判断

1-1. 売上高

全業種の売上高DI は、前年同期比で16、次期見通しは22 となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。前年同期比では、建設業の△21、製造業の14、情報・流通・商業の10、サービス業の30となっており、建設業が他業種より数値が低い形となった。次期見通しでは、建設業の0、製造業の30、情報・流通・商業の12、サービス業の27 となっている。
建設業に関しては、次期見通しにおいて増加している。製造業の前年同期比の売上高DIが14 で次期見通しでは30 と増加している。情報・流通・商業の前年同期比と次期見通しの売上高DI を比較すると、若干増加している。サービスでは、前年同期比の売上高DI が30、次期見通しの売上高DI が27 と若干減少している。売上高DI は、全業種の次期見通で数値が増加傾向にある。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益DIは、前年同期比で9、次期見通しは20となっている。各業種のDI は下記の図表2 の通りである。建設業は、前年同期比が△15で次期見通しでは、9 となっている。製造業は、前年同期比が6 で次期見通しでは、31 となっている。情報・流通・商業は、前年同期比が7で次期見通しでは、5となっている。サービス業は、前年同期比が19で次期見通しでは、23となっている。
前年同期比では、建設業のみがマイナス水準となっており、売上高DI と連動した形となったが、次期見通しは9と増加している。一方、製造業では、前年同期比が6 で、次期見通しは31と大きく増加している。情報・流通・商業とサービス業は前年同期比と次期見通しの数値が伸び悩んでいる。経常利益DIは、前年同期比において業種によってマイナス水準を示しているものの、次期見通しでは、情報・流通・商業以外増加傾向である。

 

図表2 経常利益DI値

図表2 経常利益DI値

筆者作成

1-3. 経常利益の水準・業況水準・業況判断

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは36、建設業→15、製造業→13、情報・流通・商業→45、サービス業→54である。全業種の数値はプラス水準を維持しており、特に情報・流通・商業、サービス業は比較的高いDI を示している。

次に業況水準についてみていく。全業種のDIは10、建設業→21、製造業→0、情報・流通・商業→0、サービス業→19である。建設業とサービス業の数値は他業種よりも高い数値となっている。製造業と情報・流通・商業は他項目のDI の数値が伸び悩んでいることで、今回のような数値に留まっている可能性がある。
業況判断では、全業種の前期比は19、前年同期比は23、次期見通しは27となっている。建設業の前期比は8、前年同期比は23、次期見通しは31となっている。製造業の前期比は27、前年同期比は29、次期見通しは37となっている。情報・流通・商業の前期比は10、前年同期比は23、次期見通しは7となっている。サービス業の前期比は24、前年同期比は24、次期見通しは30となっている。情報・流通・商業以外では、次期見通しの数値が高くなっている。

 

2. 経常利益が増加した理由、減少した理由

経常利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の64.8%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の18.5%であった。一方、経常利益が減少した理由で1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の50.0%であった。次いで多かったのが、「売上単価・客単価の低下」の10.5%であった。
経常利益が増加した理由として、「売上数量・客数の増加」の割合が約6割となっている。一方、経常利益の減少理由として、「売上数量・客数の減少」の割合が5 割となっている。経常利益を左右する要因としては、売上高の増減が大きく影響していることがわかる。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期に設備投資を実施したと回答したのは全体の25.2%、次期に設備投資を計画していると回答したのは25.7%であった。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、「事務所・店舗」が27.3%、「機器設備」が27.3%、「情報システム」が20.5%で上位を占めていた。次期の設備投資計画では、「情報システム」、「その他」が22.5%と一番高い割合を示しており、次いで「事務所・店舗」が20.0%、「機器設備」が17.5%であった。「情報システム」への投資割合が比較的高くなっている。
資金繰の状況について、現在の資金繰の状況をみていく。資金繰の状況に関しては、余裕あり→9.2%、やや余裕→ 20.3%、順調→34.0%、やや窮屈→25.5%、窮屈→11.1%となっている。余裕ありとやや余裕と回答した企業割合からやや窮屈、窮屈と回答した企業割合を引いた資金繰DIは、△7であった。

 

4. 現在の経営上の問題点・重点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員不足」の19.4%で、次いで「人件費の増加」の14.2%、「同業者相互の価格競争の激化」の13.6%、となっている。従業員不足の深刻さとそれに対応するために必要な経費増加が経営状況を悪化させている。
経営上の重点では各企業上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」→19.9%、「付加価値の増大」→17.9%「人材確保」→13.6%、となっている。今回の景況調査でも新規受注や付加価値、人材確保については、高い割合を示している。

 

5. 特別質問の結果について(無回答は除く)

今回の特別質問では、採用と人材に関する項目について行った。結果をみていくと、まず、「直近の主な採用方法について」では、「公共機関を利用(ハローワークなど)」が37.9%、「それ以外(民間など)」が37.3%、「採用していない」が24.8%となっている。次に「主に公共機関を利用の方へ⇒補助金を利用していますか」では、「している」が27.8%、「していない」が68.5%、「知らない」が3.7%となっている。次に「直近1年間の採用コストはどのくらいですか」では、「100 万以上」が17.7%、「50 万円~100 万」が13.8%、「10 万~50 万」が20.8%、「10 万以下」が25.4%、「0」が22.3%となっている。最後に、「過去3 年間の離職者の離職理由は何ですか(複数回答可)」では、「定年」が11.4%、「病気」が9.1%、「介護」が3.0%、「その他」が76.5%となっている。

特別質問の回答結果をまとめていく。採用方法について、公共機関を利用する割合が3割強、それ以外の割合も3割強を占めていることがわかった。一方、採用していない割合が約2割あり、独自の採用方法(自社HP等)を活用しているケースも少なくない。また、公共機関を利用する際には、補助金を利用しているかについて、していない割合が約7割もあった。採用コストに関しては、10 万以下の一番割合が高かったが、0 と回答した割合も比較的に高く、人材確保に投入するコストがあまり高くないことがわかる。次に、離職者の理由については、その他が圧倒的に多くなっており、さまざまな理由によって離職するケースが見受けられる。

人材を採用するためには、自社以外の組織等を活用し、採用に関わるコストに関しては、できるだけ補助金等を活用していく必要がある。

第7号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)

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