テーマ:「ホテル再生ストーリーで気付く経営の本質」
~倒産会社で起こる多種多様な出来事は全てが経営の本質に関わる事です~

  • 報告者:八坂事務所 代表 八坂 豊氏
  • 開催日:2019年3月20日(水)
  • 会 場:HOTEL PLUMM 横浜
  • 参加者数:60名

八坂事務所 代表 八坂 豊氏

 八坂氏は、レストランのウエイターになるのが夢で、都内のあるホテルに就職されました。ドアマン、ベルボーイ、その後2年間海外に出張し支配人になるなど、2年以上同じ部署にいたことがないほど目まぐるしい職場生活を体験されました。
 そんななか、RCC(整理回収機構)の管財人の弁護士からホテルビジネスを知っている方にしばらく駐在してほしいということで、会社更生法の適用を受けたホテルの再生に携わることになりました。

 八坂氏は、世間では事業再生は法律の力と会計の力だと言われていましたが、実際には中にいる人たちの努力がなければどうにもならないと感じていました。
 再生への過程で最初で最大の難関は、従業員同士の「正義の戦い」でした。

 会社更生法の適用から1年が経過し、リーダー不在の状況で幹部中心の合議制で運営していました。実態は、何も方向性が決まらず、ただ、目の前の仕事をこなすだけの状況で、みんな頑張っていました。そして、次第にグループができていって、それぞれのグループが「あるべき論」を語って、感情的な争いが起こってしまっていたのです。
 経営会議を開いても、「誰が提案したのか」によって意見が分かれる状況で、感情的な戦いの中には、割って入っていくことはでませんでした。

 その状況が変わったきっかけは、「社員の自己開示」を行う社内研修でした。仕事の話は一切しない研修で、一部の人間は途中で出ていこうとしましたが、引き留めて研修に参加してもらいました。
 その研修の打ち上げでの和室の宴会場での出来事です。それぞれの”派閥”内で集まらず、グループの輪を越えて、笑いながら話していたのです。八坂氏は、これを見たときに、うれしいというより、呆然としてしまいました。仕事の中の関係だけの付き合いから、「人間として」どうかという話をしたときに共通点をみつけることができて、共感しあうことが始まったのです。

八坂事務所 代表 八坂 豊氏

 ここまで1年かかりましたが、「ここから、このホテルはどこに向かうのか」という話をできるようになっていったのです。
八坂氏は、ここで、経営理念と行動指針を全社員で作成し、少しずつ、会社がよくなっていきました。赤字になったら即アウトの状況で、地元の方々の応援があったことにも大いに励まされました。

 このような中で、新しい会社を作って、次に段階に行かなければならない状況になり、八坂氏は、社長になりたくなかったが、管財人弁護士の「この泥船に乗らなくても良いですよ」という一言にもかかわらず引き受けました。
その理由は、経営理念の解釈を通じて自分自身がこの会社の存在意義に気付いたからです。

 八坂氏は、「同友会にいたから、経営者になることができた」と述べています。同友会には学べる機会が多く、とくに「八坂が言っているのではなく、経営指針に書いてある」といえる「経営指針」を作成したことが大きな転機になりました。
さらに、「経営理念の解釈」をつくって、社員にみんなに経営理念を伝えることを実践し、毎月理念学習会を開催して語り合うなかで、いろいろな解釈が出て、どんどん経営指針が成長していって、会社の中心になっていきました。

 社長が経営理念を語ることによって、少しずつ社員に意識が浸透していったのです。

 その後、2008年リーマンショックや2009年新型インフルエンザ、そして、2011年東日本大震災が起きました。このときも、窮地を救ったのは、同友会で教わったことの実践です。
 以前からパートさんも含め毎年300人と面談を実施していました。社長とパートさんを含めた社員が1対1で話し合う機会が設けられていたのです。そして、給与のカットの話をしなければならないときにも、みんなが同意してくれました。

八坂事務所 代表 八坂 豊氏

 「家族のように生きています」という理念のもと、応分の負担をすることをみんな理解できていたのです。さらに、取引先へ値引きの交渉に行って、値引きを引き受けてもらいました。その際にも決算数字や経営指針を公表していたことが役立っていたと思います。
再生の日々を振り返ると、経営の本質とは何なのか、過ぎてから気が付きました。それは、同友会の「労使見解」そのものだということです。

 経営者と社員が共感できるためには、認識を一致させることが重要です。社長の思いを社員に説明します。そして、会社の将来、社員の将来像を見えるようにします。これがないと不信感につながってしまうのです。

 そして、社員をパートナーと思うことが重要です。社長と社員は、立場が違うだけで、対等です。ただ、役割が違うだけなのです。不信感がある限り、経営はままなりません。つまり、みんなが持っている力を発揮することができないのです。いかに不信感を払しょくするか、そのためにも経営指針の存在は不可欠といえるでしょう。

(文責:(株)天・地・人 中筋悠貴)