第5号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2016年7〜9月期)

前年同期比の売上高、経常利益DI は二桁となっており、次期の見通しでは、数値が共に増加している。経常利益水準DI でも二桁を維持している。しかし、業況水準、業況判断のDIは伸び悩んでいる。業種別では、サービス業の各DIの数値が他業種より平均して高くなっている。経営上の問題・重点としては、共通して人材に関する事項の割合が高い。

 

  • 売上高DI、経常利益DI ともに2 ケタの数値を維持している。次期見通しにおいても売上高DI、経常利益DI の数値は増加している。業種別では、前年同期比、次期見通しでサービス業が突出して高い数値となっている。今期の業況水準DI が9、業況判断DIが前期比11、前年同期比12、次期見通し24である。

  • 設備投資の実施企業は約3割、次期に設備投資を計画している企業は約2割強である。設備投資の内訳では「事務所・店舗」「機器設備」「工場」、という順で割合が高い。

  • 資金繰の状況では、大きな窮屈感はみられない。

  • 経営上の問題は、「従業員不足」「同業者相互の価格競争の激化」「人件費の増加」の順に割合が高い。これらの課題をクリアするために「新規受注(顧客)の確保」「人材確保」「付加価値の増大」への取組に経営上の重点が置かれている。

  • 前回のKD レポートの結果よりも売上高DI、経常利益DI が減少傾向にある。サービス業では、各DIでさほどの落ち込みはみられなかったが、他業種の落ち込みが大きくなっている。また、人材不足の影響により、人件費が増加しており、会員企業の経営体質を弱くしている。会員企業は人材教育等をより強化し、製品・サービスの高付加価値化を目指す必要がある。

 

【調査要領】

(1)調査時 2016 年9月15日〜10月7日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAX によるアンケート
(4)回答企業数 783 社より135 社の回答を得た(回答率17.2%)
(建設業14社、製造業44社、商業18社、サービス業56 社、不明3社)
(5)平均社員数  (1)正規社員24.5 人 (2)パート・アルバイト45人

※文章中のDI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
〜概況報告〜

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

 

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準・業況判断

1-1. 売上高

全業種の売上高DI は、前年同期比で21、次期見通しは25となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。前年同期比では、建設業の8、製造業の0、情報・流通・商業の18、サービス業の44となっており、サービス業が他業種より値が突出している。次期見通しでは、建設業の17、製造業の15、情報・流通・商業の24、サービス業の32となっており、サービス業以外は次期見通しの値が増加している。製造業の前年同期比の売上高DIは0となっているが、次期見通しでは15と増加している。一方、サービス業の前年同期比と次期見通しの売上高DIは高い数値を示しており、業種間格差が拡大している。建設業では、前年同期比の売上高DIが8、情報・流通・商業では、18となっているが、次期見通しの売上高DI が各17、24となっており、需要が見込まれる。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益DIは、前年同期比で15、次期見通しは319 となっている。各業種のDIは下記の図表2の通りである。売上高DIとは異なり、経常利益DIはマイナス水準の業種が存在している。情報・流通・商業に関しては、前年同期比が△29と他業種よりも数値がかなり低い。また、建設業においては、前年同期比で8を示しているが、次期見通しは△9と落ち込んでいる。製造業では、前年同期比が7であり、次期見通しは21と増加している。サービス業の前年同期比が35で、次期見通しは26と数値が減少しているが、他業種と比較しても高い数値を示している。経常利益DIの動向をみた場合、業種間の違いが明確となっている。

 

図表2 経常利益DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

1-3. 経常利益の水準・業況水準・業況判断

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは26、建設業→33、製造業→10、情報・流通・商業→△6、サービス業→47である。情報・流通・商業以外は数値がプラス水準となっている。特にサービス業は47と高いDIを表している。
次に業況水準についてみていく。全業種のDIは9、建設業→7、製造業→14、情報・流通・商業→△28、サービス業→20である。情報・流通・商業は、経常利益DIが低い数値を示している影響もあり、業況水準は伸び悩んでいる。一方、建設業はプラス水準ではあるものの、製造業、サービス業の数値には及ばない。
業況判断では、全業種の前期比は11、前年同期比は12、次期見通しは24となっている。業種別の次期見通しでは、建設業→22、製造業→23、情報・流通・商業→0、サービス業→30である。情報・流通・商業以外の業種は数値が二桁となっており、今後業況が改善される可能性もある。

 

2. 経常利益が増加した理由、減少した理由

経常利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の64.5%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の13.2%、「外注費の減少」の5.4%であった。一方、経常利益が減少した理由で1 番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の54.3%であった。次いで多かったのが、「人件費の増加」の15.2%、「売上単価・客単価の低下」「原材料費・商品仕入額の増加」の10.9%であった。
今回の結果では経常利益が増加した理由として、「売上数量・客数の増加」の割合が過半数を超えた。また、経常利益の減少理由として、「人件費の増加」の割合が2番目に高い割合を示しており、人手不足を解消するために、人件費を上げることで経営を圧迫させている可能性が考えられる。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期に設備投資を実施したと回答したのは全体の32.8%であった。次期に設備投資を計画していると回答したのは28.8%であり、次期に設備投資を計画している割合は3割を下回っている。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、「事務所・店舗」「その他」が23.5%、「機器設備」が21.6%、「工場」が17.7%で上位を占めていた。次期の設備投資計画では、「事務所・店舗」が27.9%と一番高い割合を示しており、次いで「その他」が25.6%、「工場」「情報システム」が16.3%であった。
現在の資金繰の状況をみていく。資金繰の状況に関しては、余裕あり→16.3%、やや余裕→19.3%、順調→33.3%、やや窮屈→19.3%、窮屈→11.8%と余裕ありとやや余裕と回答した企業の割合がやや窮屈、窮屈と回答した企業の割合を若干超えている。

 

4. 現在の経営上の問題点・重点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3 つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員不足」の18.9%で、次いで「同業者相互の価格競争の激化」の13.8%、「人件費の増加」の10.4%となっている。人手不足が経営上の重大な問題となりつつあり、その影響で人件費の増加をもたらしている。
経営上の重点も各企業上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」→20.2%、「人材確保」→15.9%、「付加価値の増大」→15.3%となっている。以上のように、経営上の問題点と重点は人材に関する項目が上位を占める形となった。

 

5. 特別質問の結果について(無回答は除く)

今回の特別質問では、後継者に関する項目について行った。まずは、後継者が決まっている(すでに承継した、も含む)、または後継者が決まっていない事柄に関した結果からみていく。各項目では、「決まっている」→34.1%(44)、「決まっていない」→65.9%(85)という結果であった。約3割の企業は後継者が決まっていることになる。

次に後継者を決定した理由に関する項目の結果をみていく。各項目では、「役員・従業員の理解を得やすい」→48.7%(19)、「取引先からの理解を得やすい」→15.4%(6)、「事業を成長させることができる」→15.4%(6)、「金融機関からの理解を得やすい」→5.0%(2)、「現経営者との相性が良い」→10.3%(4)、「他に適当な人材がいない」→2.6%(1)、「その他」→2.6%(1)、という結果であった。後継者を決定する際には、役員や従業員への配慮が必要となることがわかる。後継者に対しては、事業を成長させるよりも既存の組織体制に受け入れやすい人物が選ばれる傾向にある。

一方、後継者が決まらない理由は、「適任者がいない」→65.6%(40)、「適任者が応じない」→6.5%(4)、「その他」→27.9%(17)となった。後継者に任命したい人物が社内にいないケースが考えられる。仮に適任者が社内にいれば、後継者になることを断るケースは少ないといえる。後継者が見つからなかった場合には、「可能なら譲渡・売却したい」→59.6%(28)、「廃業する」→19.1%(9)、「その他」→21.3%(10)となった。後継者が見つからなければ、廃業するケースは比較的割合が低く、自社の事業を他者に譲ることに対しては、現経営者の抵抗感があまり見受けられない。

最後に事業承継について誰かに相談しているか(した、も含む)に関する結果では、「相談している(した)」→24.8%(29)、「相談していない」→75.2%(88)となっている。後継者が決まっていない割合が約6 割強となっている現状があるにも関わらず、事業承継について第三者に相談していない現状が明らかになった。

神奈川県中小企業家同友会会員企業は、後継者に関して約6 割強が決まっていない結果となった。後継者を決めた理由については、役員・従業員が反対しない人材を選ぶ傾向があることが明らかとなった。また、後継者が見つからなかった場合、自社の事業を他者に引き継ぐことに対して抵抗感は強く表れていない。

 

 

第5号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)


第4号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2016年1〜3月期)

売上高、経常利益ともに高い水準である。また、経常利益水準DI は60となっており、黒字企業の割合が高い。一方、製造業の各DIの数値が他業種よりも低い水準となっており、業種間格差が広がっている。経営上の問題としては、建設業を中心として人手不足が改善されていない。

  • 売上高DI、経常利益DI ともに2 ケタの数値を維持している。次期見通しにおいても売上高DI、経常利益DI の数値は高い。業種別では、前年同期比では建設業、次期見通しでは、サービス業が突出して高い数値となっている。今期の業況水準DI が37、次期見通しの業況水準DI が25となっている。
  • 設備投資の実施企業は約3 割、次期に設備投資を計画している企業は約4 割である。設備投資の内訳では「機器設備」「事務所・店舗」「情報システム関連」、という順で割合が高い。また、「工場」の割合が増加している。
  • 資金繰の状況では、窮屈感はみられない。
  • 経営上の問題は、「従業員不足」「同業者相互の価格競争の激化」「熟練技術者の確保難」の順に割合が高い。これらの課題をクリアするために「新規受注の確保」「付加価値の増大」「人材確保」への取組に経営上の力点が置かれている。
  • 全体として景況は、回復傾向にある。建設業、サービス業では業績が改善傾向にある一方、商業、製造業では、特に製造業の業績が伸び悩んでいる。消費税増税が今後見込まれるなか、日本経済の先行きはいまだ不透明である。会員企業は激変する経済情勢に適応できる組織づくりが求められる。

 

【調査要領】

(1)調査時 2016 月3月10日〜31日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAX によるアンケート
(4)回答企業数 782 社より113 社の回答を得た(回答率14.5%)
(建設業12社、製造業34社、商業25社、サービス業36 社、不明6社)
(5)平均社員数 1.正規社員26.1人 2.パート・アルバイト32.9人

※文章中のDI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
〜概況報告〜

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準

1-1. 売上高

全業種の売上高DIは、前期比で29、前年同期比で40、次期見通しは47 となっている。各業種のDI は下記の図表1 の通りである。前期比では、建設業の27、製造業の25、商業の27、サービス業の42となっており、サービス業の値が特に高水準である。前年同期では、建設業の64、製造業の16、商業の33、サービス業の54となっており、建設業の値が突出している。次期見通しでは、建設業の36、製造業の22、商業の52、サービス業の63となっており、商業、サービス業の値が50を超えている。
サービス業の売上高DIが他の業種よりも比較的高くなっているものの、製造業の売上高DI が伸び悩んでおり、業種間格差が顕著に表れている。建設業では、前年同期比の売上高DI が64 となっており、東京オリンピック関連を中心とした需要がいまだ健在であることがわかる。商業では、次期見通しの売上高DI が52 となっており、一般消費の需要回復が考えられる。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益DI は、前期比で32、前年同期比で34、次期見通しは23 となっている。各業種のDI は下記の図表2 の通りである。売上高DI 同様、全業種でプラス水準である。サービス業に関しては、前期比が43、前年同期比が47、次期見通しが56 で他の業種と比べても高い水準となっている。さらに建設業においては、前年同期比で50 となっており、売上高DI と比例して増加している。商業では、次期通しが48 であり、売上高DI と連動している。一方、製造業の前期比、前年同期比、次期見通しは他の業種よりも低い数値となっている。売上高DI と同様に経常利益DI でも製造業の値が低く、業種間の格差が存在する。

 

図表2 経常利益DI値

図表2 経常利益DI値

筆者作成

 

1-3. 経常利益の水準・業況水準

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは60、建設業→75、製造業→68、商業→48、サービス業→56 である。全業種でほぼ過半数以上が黒字を実現していることになる。特に建設業は75 とかなり高いDIを表している。
業況水準については、今期と次期見通しについてみていく。今期の全業種のDIは37、建設業→75、製造業→27、商業→20、サービス業→42である。建設業、サービス業は、売上高DI、経常利益DIが高い数値を表している影響もあり、業況水準も高くなっている。
一方、製造業、商業はプラス水準ではあるものの、建設業、サービス業の数値と比較した場合、伸び悩んでいる。次期見通しの全業種のDIは25、建設業→31、製造業→15、商業→24、サービス業→31である。商業以外の業種は今期の数値よりも落ち込んでいる。商業は今期の数値よりも少し改善されている。

 

2. 売上・利益が増加した理由、減少した理由

売上・利益が増加した理由として1 番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の55.1%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の15.0%、「得意先の業況変化」の12.0%であった。一方、売上・収益が減少した理由で1 番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の44.1%であった。次いで多かったのが、「売上単価・客単価の低下」「人件費の増加」の14.7%、「得意先の業況変化」の11.8%であった。
今回の結果では、売上・利益が増加した理由として、「売上数量・客数の増加」の割合が顕著に表れた。また、売上・収益の減少理由として、「人件費の増加」の割合が低くはなく、建設業を中心に人件費の高騰が続いている可能性がある。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期、設備投資を実施したと回答したのは全体の29.2%にとどまった。さらに、次期に設備投資を計画していると回答したのは40.7%であり、次期に設備投資を計画している割合が大きく増加した。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、多い順に、「機器設備」が50.0%、「事務所・店舗」が22.5%、「情報システム」「工場」が10.0%であった。次期の設備投資計画でも、「機器設備」が41.5%と高い割合を示しており、次いで「事務所・店舗」が18.9%、「情報システム」が15.0%であった。資金繰の状況について、今期の借入金の増減と現在の資金繰の状況をみていく。今期の借入金に関して、増加13.3%、横ばい22.1%、減少36.4%、無借金27.4%で借入金が減少している会員企業の割合が高いことがわかる。一方、資金繰の状況に関しては、余裕あり20.4%、やや余裕13.3%、順調38.8%、やや窮屈19.5%、窮屈6.2%と余裕ありとやや余裕と回答した企業の割合がやや窮屈、窮屈と回答した企業の割合を超えており、資金繰の悪化はみられない。

 

4. 現在の経営上の問題点・力点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3 つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員不足」の15.7%で、次いで「同業者相互の価格競争の激化」の11.6%、「熟練技術者の確保難」の8.6%となっている。建設業を中心に人手不足が考えられ、その影響で技術者の確保が困難になりつつある。
経営上の力点については、現在実施している項目と、今後新たに実施したい項目それぞれで上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」18.6%、「付加価値の増大」14.9%、「人材確保」13.9%となっている。今後新たに実施したい項目で1番多かったのは、「付加価値の増大」16.3%、次いで「新規受注の確保」13.1%、「人材確保」12.7%となっている。以上のように、景気の変動に関係なく、常に上位を占める項目への回答が目立った。

 

5. 特別質問の結果について

今回の特別質問では、2016 年度の賃上げに関する項目について行った。まずは、賃上げの予定に関する項目の結果からみていく。各項目では、「賃上げ実施を決定」→20.4%(23)、「賃上げ実施を予定」→46.0%(52)、「賃上げ是非を検討」→17.7%(20)、「賃金の圧縮を考えている」→2.7%(3)、「未定」→12.4%(14)、「無回答」→0.8%(1)という結果であった。
2016 年度の賃上げは約6割強が決定、もしくは予定となっている。次に賃上げの方法に関する項目の結果をみていく。各項目では、「定昇&ベースアップ」→22.7%(17)、「定昇のみ」→22.7%(17)、「定昇&賞与」→32.0%(24)、「ベースアップのみ」→16.0%(12)、「賞与のみ」→1.3%(1)、「その他」→5.3%(4、「無回答」0%(0)という結果であった。

賃上げの方法としては、「定昇&賞与」が一番高い割合となった。次に賃上げの水準に関する項目の結果をみていく。各項目では、「1%未満」→16%(12)、「1%以上2%未満」→30.7%(23)、「2%以上3%未満」→34.7%(26)、「3%以上4%未満」→10.7%(8)、「4%以上」→5.3%(4)、「無回答」→2.6%(2)という結果であった。約半数の回答割合が2%以上の賃上げ水準となっている。次に賃上げの決定方法に関する項目の結果をみていく(複数回答可)。各項目では、「社員の意見を聴収する」→15.1%(14)、「幹部間で協議する」→48.4%(45)、「社員から選出された代表と協議する」→0%(0)、「労働組合と協議する」→2.2%(2)、「ほぼ経営者の独断で決める」→31.2%(29)、「その他」→3.1%(3)という結果であった。賃上げの決定方法としては、「幹部間で協議する」「ほぼ経営者の独断で決める」の割合が高かった。

一方、賃上げが困難な場合の理由についての結果をみていく(複数回答可)。各項目では、「売上・受注の不振」→42.9%(21)、「原材料高騰」→2.0%(1)、「消費税率引き上げ」→10.2%(5)、「エネルギーコスト上昇」→2.0%(1)、「賃上げ分を販売価格に転嫁できない」→8.2%(4)、「賃上げよりも雇用維持を優先」→10.2%(5)、「同業他社との価格競争激化」→6.1%(3)、「取引先企業からの値下げ要請」→0%(0)、「設備投資を増強」→6.1%(3)、「その他」→12.3%(6)という結果であった。賃上げが困難な理由で一番多かったのが、「売上・受注の不振」で続いて「消費税率引き上げ」「賃上げよりも雇用維持を優先」の割合が高かった(その他は省く)。
神奈川県中小企業家同友会会員企業は、賃上げに関して積極的であることが明らかとなった。また、賃上げの方法に関しては、少なくとも定昇を行い、2%以上の水準で賃上げを実施する、もしくは予定があることがわかった。賃上げを決めるプロセスでは、経営者の独断よりも会社の幹部と協議する会員企業の割合が多かった。

 

第4号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)


第3号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2015年7〜9月期)

業況水準、売上高、経常利益ともプラス水準である。しかし、業種間の格差が顕著に表れている。特に製造業と商業の各DI の数値が他業種よりも低くなっている。また、依然として全業種ともに人手不足の状態から脱却できていない。今後、さらなる人材確保や人材教育といった取り組みを強化していく必要がある。

 

  • 売上高DI、経常利益DI ともにほぼ2 ケタ水準を維持している。次期見通しにおいても売上高DI、経常利益DI で高い数値となっている。前年同期比では消費税増税後の需要の停滞時期との比較となったが、プラス水準を維持している。業況水準DIに関しても34となっている。ただ、製造業、商業では、他の業種と比較すると低い数値となっているので、円安等の経済情勢が影響しているものとみられる。
  • 設備投資の実施企業は全体の2 割強で、建設業、製造業では4 割弱となっており、他の業種よりも設備投資に前向きである。設備投資の内訳では「機器設備」「事務所・店舗」「情報システム関連」という順で割合が高い。
  • 資金繰の状況では、窮屈感は強く表れていない。
  • 経営上の問題は、「従業員不足」「同業者相互の価格競争の激化」「人件費の増加」の順に割合が高い。これらの課題をクリアするために「新規受注の確保」「付加価値の増大」「人材確保」を重視する傾向にある。
  • 全体として景況は、足踏み状態にある。建設業では依然受注量の増大がみられるが、製造業と商業では、停滞傾向にある。大企業の景気回復といった傾向は見受けられるものの、日本経済の先行きは不透明である。会員企業は経済情勢に対応した経営行動が求められる。

 

【調査要領】

(1)調査時 2015 月9月10日〜10月10 日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAX によるアンケート
(4)回答企業数 754 社より126 社の回答を得た(回答率16.7%)
(建設業12社、製造業37社、商業40社、サービス業37社)
(5)平均社員数(1)正規社員24.2 人 (2)パート・アルバイト9.7人

※文章中のDI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
〜概況報告〜

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

 

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準

1-1. 売上高

全業種の売上高のDI は、前期比で20、前年同期比で22、次期見通しは28 となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。神奈川県中小企業家同友会の会員企業の業績は全業種プラス水準を示している。しかし、前期比の業種別では、建設業の50、製造業の13、商業の10、サービス業の28 となっており、業種間の格差が存在する。また、前年同期比の場合では、建設業の64、製造業の22、商業の13、サービス業の20の数値を示しており、業種間の格差がみられる。特に建設業のDI は他業種よりも高い数値となっている。建設業は2020 年に開催予定である東京オリンピックの会場設営等の需要増加の影響によって、業績を伸ばしている可能性がある。製造業と商業が比較的低い数値となっている背景には、製造業では円安による原材料費の高騰、大企業の設備投資の伸び悩みが影響しており、商業では製造業と同じく、円安による輸入品の高騰が影響していると考えられる。一方、サービス業では前期比、前年同期比のDI が20 を超えており、海外からの旅行者による需要増加等で観光業や飲食業を中心に業績を伸ばしている可能性がある。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益のDI は、前期比で19、前年同期比で18、次期見通しは17 となっている。各業種のDI は下記の図表2 の通りである。売上高DI 同様、全業種でプラス水準である。建設業とサービス業に関しては、前期比がともに20を超えており、他の業種と比べて比較的高い水準を示している。さらに建設業においては、前期比で55、前年同期比で60となっており、売上高の推移と比例しても高い数値である。一方、製造業と商業の前期比、前年同期比は一桁の数値となっている。製造業と商業では、売上高のDI も比較的低く、業績が伸び悩んでいることがわかる。サービス業においては、売上高DI の数値と連動して高くなっている。既述しているとおり、経常利益のDI でも業種間の格差がみられ、今後の動向に注視していく必要がある。

 

図表2 経常利益DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

1-3. 経常利益の水準・業況水準

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは34、建設業→75、製造業→22、商業→25、サービス業→43 である。全業種で黒字傾向にあることがわかる。特に建設業は75とかなり高いDIを表している。業況水準については、今期と次期見通しについてみていく。今期の全業種のDIは10、建設業→50、製造業→△11、商業→0、サービス業→27である。建設業は、売上高DI、経常利益DIと同様に業況水準もかなり高い数値を示している。一方、製造業がマイナス水準に落ち込んでおり、景気の停滞がみられる。業況水準の結果をみると、業種別の景気動向に大きな差異が表れており、特に建設業を取り巻く経営環境が良いことがわかる。次期見通しの全業種のDI は30、建設業→42、製造業→30、商業→15、サービス業→41 である。4製造業は次期見通しになった場合、大きく数値を回復している。その他の業種では商業が比較的低い数値となっている。

 

2. 売上・利益が増加した理由、減少した理由

売上・利益が増加した理由として1 番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の47.6%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の16.7%、「得意先の業況変化」の12.7%であった(「その他」の18.3%は除く)。一方、売上・収益が減少した理由でも1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」「売上単価・客単価の低下」の23.0%であった。次いで多かったのが、「得意先の業況変化」の12.7%、「人件費の増加」の11.9%であった。今回の結果では、売上・収益の減少理由として、「人件費の増加」の割合が増加しており、人手不足の解消のために人件費を増加させている傾向がみられる。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期、設備投資を実施したと回答したのは全体の28.6%にとどまった。さらに、次期に設備投資を計画していると回答したのは31.0%であり、次期に設備投資を計画している割合が若干増加傾向にある。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、多い順に、「機器設備」が69.4%、「事務所・店舗」が19.4%、「情報システム」が11.1%であった。次期の設備投資計画でも、「機器設備」が59.0%と高い割合を示しており、次いで「事務所・店舗」が20.5%、「情報システム」「その他」がともに15.4%であった。設備投資を行う際には、自社の製品・サービスの質を高めることにつながる機器設備が対象となる傾向が強い。資金繰の状況について、今期の借入金の増減と現在の資金繰の状況をみていく。今期の借入金に関して、増加→11.9%、横ばい→30.2%、減少→25.4%、無借金→31.7%で借入金が減少している会員企業の割合が高いことがわかる。一方、資金繰の状況に関しては、余裕あり→17.5%、やや余裕→15.1%、順調→34.9%、やや窮屈→22.2%、窮屈→7.9%と余裕ありとやや余裕と回答した企業が3 割を超えており、窮屈感はみられない。自社の業績を伸ばすための設備投資等で資金が必要な場合には、円滑に資金調達が可能な会員企業が比較的多いことがわかる。

 

4. 現在の経営上の問題点・力点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員不足」の33.3%で、次いで「同業者相互の価格競争の激化」の27.0%、「人件費の増加」の23.0%となっている。大企業を中心に新卒採用(大学生)の規模を拡大しており、中小企業の採用活動が順調とは言い難い。そのような背景から、人を採用するために就職説明会等の開催の増加や、給与の増加も検討せざる得なくなっていることがあげられる。経営上の力点については、現在実施している項目と、今後新たに実施したい項目それぞれで上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」→53.2%、「付加価値の増大」→42.9%、「社員教育」→29.4%となっている。今後新たに実施したい項目で1番多かったのは、「新規受注の確保」の40.0%であった。次いで、「付加価値の増大」→38.9%、「人材確保」→26.2%となっている。現在実施中の項目の上位と今後新たに実施したい項目の上位がほぼ同じであったが、「社員教育」「人材確保」といった項目の割合が高くなっており、人を採用し、育てていく重要性が改めて認識された。また、自由記述(特別質問の項目)で回答されていたなかで、経営上の問題点・力点に関連した内容に触れてみると、「事業継承者を育てるのが1 番大変だと思う。他店は跡継ぎがなく、店をたたむ自営業が多い」といった声や、「現状の繁忙はオリンピックまでは続くと思われる。その後建設業界は一挙に冷え込むと考えておくことが大切で、それまでに企業の転換を考える必要があると思われる」といった声があった。上記のように、常に景気動向に注視しながら、販路開拓を実現できる組織体制を構築していく必要性がある。自社の製品・サービスの強みを改めて見つめ直し、既存の取引先だけではなく、多岐にわたる取引先を開拓していく姿勢が重要となる。

 

5. 特別質問の結果について

今回の特別質問では、会員企業の経営状況を具体的に把握するために、「直近の決算状況」「経営理念について」「経営方針について」「経営計画について」「前年度と比較した正規雇用の増減」の項目を設けた。まず、「直近の決算状況」では、黒字→63.5%、横ばい→19.0%、赤字→14.3%、無回答→3.2%となった。黒字の割合が約6 割となっており、会員企業は黒字傾向にあることがわかる。次に、「経営理念について」では、明文化されている→62.7%、明文化されていない→22.2%、作成中→10.3%、無回答→4.8%となった。経営理念の明文化に取り組んでいる会員企業が多いことがわかる。「経営方針について」では、明文化されている→62.7%、明文化されていない→23.0%、作成中→11.1%、無回答→3.2%となった。経営方針の明文化に取り組んでいる会員企業が多いことがわかる。「経営計画について」では、明文化されている→54.0%、明文化されていない→31.0%、作成中→11.8%、無回答→3.2%となった。経営計画の明文化に取り組んでいる会員企業が過半数となっているが、明文化されていない会員企業も少なからず存在していることがわかる。「前年度と比較した正規雇用の増減」では、増加した→37.3%、横ばい→46.0%、減少した→13.5%、無回答3.2%となった。横ばいが多くなっているが、増加した割合も約4 割近くあった。上記のような結果を基に、経営理念、経営方針、経営計画と売上高(前年同期比)、経常利益(前年同期比)、直近の決算(黒字)の関係性を明らかにするためにクロス分析1を行った。経営理念、経営方針、経営計画を明文化している会員企業の方が、売上高の増加、経常利益の増加、直近の決算の黒字の割合が全体的に高い。特に直近の決算の黒字の場合では、約7 割以上が経営理念等を明文化している会員企業となっている。一方、成文化しない会員企業でも、各項目で増加の割合が低くはなく、神奈川県中小企業家同友会の会員企業は全体的に経営状態が良いといえる。

 

図表3

第3号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)


第2号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2015年1〜3月期)

業況水準、売上高、経常利益とも高い数値を表している。業種によっては高低差があるものの、全業種ともに景況は回復傾向にある。しかし、全業種ともに人手不足感が強くなっており、人材確保や人材教育といった取り組みを強化していく必要もある。

 

  • 売上高DI、経常利益DIともに2ケタ水準を維持している。次期見通しにおいても売上高DI、経常利益DIで20を超える数値となっている。前年同期比では消費税増税前の駆け込み需要があった時期であるのにもかかわらず、高い数値を表している。業況水準DIに関しても37となっている。ただ、サービス業では、他の業種と比較すると低い数値となっているので、消費税増税後の影響をいまだに受けている可能性はある。
  • 設備投資の実施企業は全体の2割強であり、商業では3割強となっており、他の業種よりも設備投資に前向きである。設備投資の内訳では「機器設備」、「事務所・店舗」、「情報システム関連」という順で割合が高い。
  • 資金繰の状況では、若干窮屈感がみられる程度である。
  • 経営上の問題は、「従業員不足」、「同業者相互の価格競争の激化」、「人件費の増加」の順に割合が高く、これらの課題を解決する方策として「新規受注の確保」、「付加価値の増大」、「人材確保」が重視されている。
  • 全体として景況は、回復傾向にある。建設業では受注量の増大がみられる。また、消費税増税後の影響が大きかった商業でも各DIが増加傾向にある。しかし、経済情勢の見通しは不透明なところもあり、会員企業は継続的な経営体質の強化が求められる。

 

【調査要領】

(1)調査時 2015月3月12〜31日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAXによるアンケート
(4)回答企業数 733社より109社の回答を得た(回答率14.9%)
(建設業8社、製造業38社、商業24社、サービス業38社)
※不明1社含まず
(5)平均社員数 1.正規社員27.5人 2.パート・アルバイト60.7人
※文章中のDIとは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
〜概況報告〜

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

 

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準

1-1. 売上高

全業種の売上高のDIは、前期比で25、前年同期比で36、次期見通しは27となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。全業種をとおして、プラス水準となっており、神奈川県中小企業家同友会の会員企業の経営体質が良いことがわかる。特徴的なのが、商業の前年同期比DIが52となっていることである。前年同期比の場合、消費税増税前の駆け込み需要の時期と比較しているため、ある程度の低い数値が示されると予測されていたが、商業は消費税増税後の影響を受けていないのか、それとも回復傾向にあるのかのどちらかであると考えられる。また、建設業において次期見通しのDIが63で、突出して値が高い。建設業は、東京を中心とするオリンピック関連による施設の整備等で需要が見込まれていると考えられる。一方、サービス業では前期比のDIが13となっており、他の業種と比較して低い数値となっている。これは、飲食業を中心に人手不足感が強く出ているため、思うように売上が伸びないことが要因と考えられる。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益のDIは、前期比で16、前年同期比で27、次期見通しは25となっている。各業種のDIは下記の図表2の通りである。売上高DI同様、全業種でプラス水準である。建設業と商業に関しては、前期比がともに20を超えており、他の業種と比べて比較的高い水準を示している。さらに建設業においては、次期見通しの数値が50となっており、売上高の見通しと比例して高くなっている。一方、製造業の前期比のDIが11と、他の業種に比べて低く、売上高DIが高いにも関わらず、利益をあげることができていない。製造業は、原油高や円安による原材料費の高騰の影響によって、価格に転嫁できていない可能性がある。サービス業においては、売上高DIともに他の業種よりも低く推移しており、今後の動向を注視していく必要がある。

 

図表2 経常利益DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-3. 経常利益の水準・業況水準

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは45、建設業→75、製造業→45、商業→50、サービス業→34である。全体をとおして高い数値を示している。なかでも建設業は75と突出したDIを表している。

業況水準については、今期と次期見通しについてみていく。今期の全業種のDIは37、建設業→75、製造業→42、商業→46、サービス業→16である。建設業は、売上高DI、経常利益DIと同様に業況水準もかなり高い数値を示している。神奈川県中小企業家同友会の会員企業において、建設業を取り巻く経営環境が良いことがわかる。次期見通しの全業種のDIは20、建設業→63、製造業→16、商業→21、サービス業→16である。ここでも建設業が高い数値を示している。

 

2. 売上・利益が増加した理由、減少した理由

売上・利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の54.1%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の11.9%、「得意先の業況変化」の11.0%であった。一方、売上・収益が減少した理由でも1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の16.5%であった。次いで多かったのが、「原材料費・商品仕入額の増加」、「得意先の業況変化」で、ともに10.1%であった。増加した理由も減少した理由もほぼ同じであることがわかる。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期、設備投資を実施したと回答したのは全体の27.5%にとどまった。さらに、次期に設備投資を計画していると回答したのは37.6%であり、次期に設備投資を計画している割合が増加傾向にある。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、多い順に、「機器設備」が43.3%、「事務所・店舗」が26.7%、「その他」が23.3%であった。次期の設備投資計画でも、「機器設備」が43.9%と高い割合を示しており、次いで「事務所・店舗」が19.5%、「情報システム」、「その他」がともに14.6%であった。経営に不可欠な機器設備への設備投資を行うことによって、自社の存立基盤を強化しているといえる。

資金繰の状況について、今期の借入金の増減と現在の資金繰の状況をみていく。今期の借入金に関して、増加→8.3%、横ばい→33.0%、減少→27.5%、無借金→30.3%で、借入金が増加している企業の割合が少ないことがわかる。一方、資金繰の状況に関しては、余裕あり→20.2%、やや余裕→11.9%、順調→29.4%、やや窮屈→31.2%、窮屈→5.5%と、余裕ありとやや余裕と回答した企業が約3割を占めており、さほど窮屈感はみられない。しかし、日本経済の見通しは必ずしも良い方向に進んでいるとは言い切れず、資金繰の状況も今後注目していく必要がある。

 

4. 現在の経営上の問題点・力点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員不足」の28.4%で、次いで「同業者相互の価格競争の激化」の27.5%、「人件費の増加」の23.9%となっている。全業種で従業員不足の懸念が高まっており、特に建設業においては、技術職の採用が困難となってきている。

経営上の力点については、現在実施している項目と、今後新たに実施したい項目それぞれで上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」→52.3%、「付加価値の増大」→40.4%、「人材確保」→31.2%となっている。今後新たに実施したい項目で1番多かったのは、「付加価値の増大」の46.8%であった。次いで、「新規受注の確保」→37.6%、「人材確保」→25.7%となっている。現在実施中の項目の上位と今後新たに実施したい項目の上位がほぼ同じであった。この結果は、新規の受注を確保していかなければ、既存の受注だけでは自社の成長発展が実現できないからであるといえる。それと同時に、自社の製品・サービスの付加価値の増大も重要な経営行動となり、経営基盤の強化には欠かせないものである。現在の経営上の問題点の回答割合でも高かった、「従業員不足」という経営上の課題が見受けられるので、「人材確保」という努力は今後も引き続き行わなければならない。

 

5. 神奈川県内の景況
[各景況調査のDIの名称及び意味合いは若干違いがあることを留意していただきたい。]

今回の神奈川県中小企業家同友会のDIは全面的に高い数値を表しているのだが、会員企業の経営状態が良いのか、神奈川県内の中小企業の経営状態が良いのかという判断が困難である。そこで、神奈川県内で行われている他の景況調査に着目し、今回の景況調査結果と比較検討をしてみる。(公財)神奈川産業振興センターが行っている「平成27年1-3月期中小企業景気動向調査結果」によれば、全業種では業況DIは△27.5、売上高DIは△21.9、採算DIは△29.6となっている。また、横浜信用金庫が行っている「景況レポートNO.95」によれば、全業種では業況判断DIは0.0、売上額DIは7.3、収益DIは△2.5となっている。さらに、川崎信用金庫が行っている「中小企業動向調査」によれば、全業種では業況DIは0.4、売上額DIは0.6、収益DIは△4.7となっている。

 

上記の各景況調査の結果をみると、神奈川県中小企業家同友会の景況調査のDIが高い数値を示していることがわかる。各景況調査の回答数等の違いはあるにせよ、神奈川県中小企業家同友会の会員企業の経営状態は神奈川県内でも比較的良いといえる。会員企業は激変する経営環境に適応できる経営体質を持ち合わせていることが証明された。

各景況調査のDIの名称及び意味合いは若干違いがあることを留意していただきたい。

第2号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)


第1号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2014年7〜9月期)

  • 売上高、経常利益ともプラス水準である。ただ、業種によってはマイナス水準になっているところもあり、業種間格差がみられる。今後、円安や消費税増税といった経済情勢に注意しながら、会員企業は経営体質の強化を図らなければならない。
  • 売上高DI、経常利益DIとも前期比、前年同期比ともに2ケタ水準になっており、安定した経営体質を維持しているといえる。次期見通しでもプラス水準を保っており、会員企業の日頃の経営努力の積み重ねによるものとみられる。しかしながら、次期見通しで唯一マイナス水準となった商業では、消費税増税による一般消費者の需要停滞がさらに悪化すると見込まれる。また、サービス業は次期見通しのDIが高く、需要の増加が見込まれる。
  • 設備投資の実施企業は全体の2割強であり、建設業・商業でやや設備投資に前向きな姿勢がみられる。設備投資の内訳では「機器設備」、「情報システム関連」、「事務所・店舗」を中心に設備投資の割合が高い。
  • 資金繰の状況では、窮屈感がみられ今後の動向に注目する必要がある。
  • 経営上の問題は、「同業者相互の価格競争の激化」、「従業員不足」の割合が高く、これに対応するため、「新規受注の確保」、「付加価値の増大」、「人材確保」に力点が置かれている。
  • 全体として景況は、良い傾向にある。建設業を中心に需要増大がみられる一方、内需依存度の高い商業は厳しい状況が続く。業種間の格差はみられるものの、全体的に会員企業の経営体質は良いといえる。引き続き会員企業の経営体質を強化していく取り組みが必要である。

 

【調査要領】

(1)調査時 2014月9月11〜30日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAXによるアンケート
(4)回答企業数 716社より124社の回答を得た(回答率17.3%)
(建設業12社、製造業38社、商業29社、サービス業43社)
※不明2社含まず
(5)平均社員数 1.正規社員20.3人 2.パート・アルバイト8.5人
※文章中のDIとは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
〜概況報告〜

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

景況調査の結果

1.売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準

1-1. 売上高

全業種の売上高のDIは、前期比で13、前年同期比で23、次期見通しは13となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。全業種をとおして、数値が高く、経営状態が良いことがわかる。特徴的なのが、建設業の前年同期比DIが42となっていることである。この背景には、消費増税前の駆け込み需要によって、住居用のマンション等の建設が進み、その余波がいまだに続いている可能性が高い。一方、商業に限っては次期見通しのDIが△4で、この図表1のなかで唯一のマイナス水準である。この要因としては、消費税増税後の一般消費者の需要低迷が長期にわたって続くことが考えられる。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益のDIは、前期比で11、前年同期比で10、次期見通しは8となっている。各業種のDIは下記の図表2の通りである。売上高DI同様、全業種をみてもほぼプラス水準である。建設業に関しては、前期比、前年同期比ともに33と他の業種と比べて高い水準を示しており、売上高と連動している。ただ、次期見通しに限り、建設業は0と低く、円安による材料費の高騰等によって、利益が減少傾向にあると考えられる。商業では、前年同期比のDIが△12となっており、売上高がプラス水準であったとしても、消費税増税後の増税分を価格に転嫁できていない現状が示唆される。次期見通しについても0であり、今後需要停滞の厳しさが増していくことが見込まれる。

 

図表2 経常利益DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-3. 経常利益の水準・業況水準

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは25、建設業→5、製造業→24、商業→41、サービス業→12である。全体をとおしてプラス水準である。なかでも商業は41と突出したDIを表している。

業況水準については、今期と次期見通しについてみていく。今期の全業種のDIは4、建設業→5、製造業→0、商業→△7、サービス業→2である。商業は経常利益の水準では突出して高いDIを表していたにも関わらず業況水準ではマイナスの数値となっており、売上高DIと経常利益DIに連動していることがわかる。次期見通しの全業種のDIは12、建設業→5、製造業→11、商業→17、サービス業→0である。ここでは商業がプラス水準に持ち直している。

 

2. 売上・利益が増加した理由、減少した理由

売上・利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の49.2%であった。次いで「得意先の業況変化」の16.9%、「売上単価・客単価の上昇」の8.1%であった。一方、売上・収益が減少した理由でも1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の19.4%であった。次いで多かったのが、「得意先の業況変化」の13.7%、「原材料費・商品仕入額の低下」の12.1%と、増加した理由も減少した理由もほぼ同じことであることがわかる。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期、設備投資を実施したと回答したのは全体の26.6%にとどまった。さらに、次期に設備投資を計画していると回答したのは27.4%であり、若干上昇しているが設備投資の傾向は芳しくない。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、多い順に、「機器設備」が36.4%、「事務所・店舗」が33.3%、「情報システム」が21.2%であった。次期の設備投資計画でも、「機器設備」が55.9%と高い割合を示しており、次いで「事務所・店舗」が26.5%、「情報システム」が8.8%であった。事業運営に特に重要な項目があがっていると考えられる。

資金繰の状況について、今期の借入金の増減と現在の資金繰の状況をみていく。今期の借入金に関して、増加→16.9%、横ばい→30.6%、減少→26.6%、無借金→24.3%で、借入金が増加している企業の割合が比較的少ないことがわかる。一方、資金繰の状況に関しては、余裕あり→13.7%、やや余裕→13.7%、順調→31.5%、やや窮屈→31.5%、窮屈→8.0%とやや窮屈もしくは窮屈と回答した企業が約4割もあった。また、資金繰に余裕があっても、必ずしも設備に投資しているとはいえず、景気の先行きが不透明な現状では余裕のある資金を蓄える傾向にあるといえる。

 

4. 現在の経営上の問題点・力点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「同業者相互の価格競争の激化」の32.3%で、次いで「従業員不足」の29.0%、「仕入単価の上昇」の26.6%、「人件費の増加」の25.0%となっている。従業員が不足しているうえに、人件費の増加も問題となっており、人手不足感による経営体質の悪化が懸念される。

経営上の力点については、現在実施している項目と、今後新たに実施したい項目それぞれで上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」→57.3%、「付加価値の増大」→44.4%、「社員教育」→32.3%、「人材確保」→30.6%となっている。今後新たに実施したい項目でも1番多かったのは「新規受注の確保」の39.5%であった。次いで、「付加価値の増大」→35.5%、「人材確保」→30.6%、「新規事業の展開」→26.6%、「社員教育」→25.8%となっている。現在実施中の項目の上位と今後新たに実施したい項目の上位がほぼ同じであった。この結果は、既存の顧客を大切にしながらも、新規の顧客を開拓するための経営行動に積極的に取り組んでいるとみられる。さらに、人材確保や社員教育も上位にあがっており、従業員不足の課題を克服するための取り組みに力を入れているといえる。

 

5. 特別質問

5-1. メインの取引金融機関

メインの取引金融機関としては「信用金庫」が39社(31.5%)と最も多く、次いで「都市銀行」の38社(30.7%)、「地方銀行」の32社(25.8%)、「政府系金融機関」の6社(4.8%)、「信用組合」の2社(1.6%)となっている。信用金庫と都市銀行はほぼ同数で、地方銀行も大差がなく、この3つのいずれかを主な取引金融機関としている。

5-2.  「経営者保証ガイドライン」等、個人保証制度の見直しについて

経営者保証ガイドライン等の個人保証制度の見直しについての認知度についてみていく。「よく知っている」と回答した企業は12社(9.7%)で、「ある程度知っている」は71社(57.3%)、「知らない」は38社(30.6%)となっており、「ある程度知っている」企業も含め、この制度見直しについて知っている割合は約7割であった。また、「経営者保証ガイドライン」、個人保証制度の見直しについて取引先金融機関に具体的に何らかの行動をしたかどうかの設問に対して、「行動した」と回答した企業はわずか16社(12.9%)であった。この制度見直しについて知ってはいるものの、ほとんどの企業が行動に移せていない現状である。

さらに、「行動した」企業の結果をみてみると、「経営者保証を条件なしではずすことができた」と回答したのが6社(37.5%)、「停止条件付き保証契約や金利引き上げなど条件付きではずすことができた」が2社(12.5%)、「経営者保証をはずすことはできなかった」が5社(31.3%)、その他が3社(18.7%)であった。「行動した」企業の半数が経営者保証をはずすことができており、金融機関に対して何らかのアプローチすることが重要であると考えられる。

前述の設問で経営者保証をはずせた理由(複数回答)としては、「財務状況を正確に把握し、金融機関に適切に情報開示している」が1番多く、8社(100%)であった。次いで、「経理・資産等を法人・個人とで明確に区分・分離している」の7社(87.5%)、「自己資本比率等財務状況が安定している」の4社(50.0%)、「経営指針に基づく計画的な経営実践が評価された」の3社(37.5%)、「会社に保有資産がある」の2社(25.0%)であった。一方、経営者保証をはずせなかった企業で、その理由を聞くことができた企業は5社中4社で、ほとんどがその理由を聞くことができている。

第1号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)