中小企業経営者が関心のあるテーマは「売上拡大」「人材育成」など多岐にわたりますが、最近とみにクローズアップされているのが少子高齢化の進展にともなう「事業承継」です。
昨年1月に(株)カズ・マリンプロダクツ 岩根会長が「事業承継とM&Aを一度にやってしまいました」と題し発表していただきましたが、その中で事業承継においては、家族とのコミュニケーションの大切さと従業員や取引先との環境整備といった取り組みが必要なことを強調されていました。例会には、現社長の岩根一樹氏も参加されていましたが「本日の父の話は、事業を譲り渡す立場からのものです。事業を譲り受ける側がどのように考え思っていたかは、また別の見え方があります。」とコメントされました。
そこで、今回は岩根一樹氏から事業承継を受けた側からそのホンネと実際の取り組みを紹介していただきました。血を分けた親子ですら、いろいろなズレや行き違いがあったこと、従業員からの信頼の獲得や経営者としての経験不足による不安や葛藤があったことをお話ししていただきました。
岩根社長はその解決策として、①イギリスへの語学留学による海外経験②中小企業診断士資格取得による科学的な経営手法の獲得③総勘定元帳分析によるお金の流れをすべて把握④全従業員との個別面接の実施による従業員とのホンネコミュニケーションの実施など創業型経営者では考えられないような取り組みを行いました。
ご本人もおっしゃっていましたが、創業型経営者による波瀾万丈の劇的なストーリー性のある経営とは無縁で有り、外堀を埋め、内堀を埋めていくように地道に着実に一つずつ積み重ねて経営に取り組まれています。社長の賞味期限は15年と規定し、社長就任からまだ3年ほどしかたっておりませんが、次の事業承継が自分のミッションであることを明言されていました。
創業型経営者の経験とリーダーシップによる経営スタイルから縮小する市場での生き残りにかける2代目の経営スタイルへの転換をはかられております。どうやって経営をするのか(HOW)ではなく、なぜ経営をするのか(WHY)の原点を突き詰めていくことが不可欠であることを教えていただきました。
また、今回は時間の都合からM&Aについてはお話しいただけませんでしたが、次回はぜひM&Aによる岩根社長の野望についてお話しいただけることを期待しています。
(文責 ねもと社会保険労務士・行政書士事務所 根本隆)