第34回かながわ経営カンファレンス(以下かなカン)は、たま田園支部主催で開催されました。会場となるホテル精養軒は創業74年と、テーマにふさわしい同友会会員企業です。コロナ禍ですっかり定着したハイブリッド方式で、リアル参加者は255名、オンライン参加者は36名、合計291名が集まりました。会場に入ってすぐの受付では、あちこちで「久しぶり、元気でした?!」との声が。全県行事ならでは、そして久しぶりのリアルでの再会を楽しんでいました。
受付横では、今回もダイバシティ委員会による“かなカンお土産セット”の特別販売がありました。前回より1社増えて4社(「スマイルガーデン」、「ショコラボ」、「まちふく」、「はな工房」)のこだわりの逸品の詰合せです。それともう1店、「めいあい衣笠」の皮製品の販売もありました。
恒例となった「FMカオン84.2MHz」のコラボによる現地レポートも3回目となりました。県央地域にひろがるコミュニティFM局ですが、スマホやパソコンを使うと全国から聞くことができます。放送直後に、視聴者さんから「おもしろかったよ」などのメッセージが3件ありました。
川崎市長の福田紀彦氏より、来賓挨拶を頂きました。「脱炭素社会に向けてどう取り組むのか、民間企業の力は大きいと思います。川崎市は川崎信用金庫、横浜銀行と一緒になってESG経営に取り組んでいる企業に、積極的に融資していきます。ぜひ持続可能な経営を今日から始めるという事を心から期待しております」。
特別報告のテーマは、「未来を拓く!『人を活かす経営』~伝統産業を生き抜く、情勢認識と経営戦略~」。中小企業家同友会全国協議会顧問・三重県中小企業家同友会相談役知事でもある宮崎由至氏が、私達中小企業家を勇気づける内容を楽しく話してくださいました。
「まず、同友会は『弱みを見せた方が勝つ』、という面白い会。発信しないと受信はしない。『私はこんな事で困っているのですが、みなさんの会社ではどうですか?』と発信すると、いろんな事を教えてくれます。
ブランディングは、価格決定権を持つ企業になるために必要です。買ってくれるお客さんを絞る、自社に合わないお客さんを切る事なのです。けっして売り上げが欲しいために安売りをしてはいけません。
経営指針は、社内だけでなく、お客様にも開示していますか? 弊社は、商品のラベルに記入しました。そうする事で、社員もいい加減な事が出来なくなり、社員も会社も変わりました。CS(顧客満足)なくしてES(社員満足)無し。お客様が自社製品を喜んで使って下さるのを見て、社員は満足するのです。CS、ES、CSRはそれぞれ別の物では無く、全部一緒に進めていく必要があります。
私も5年前に社長を息子に譲り、会長となりました。事業継承とは、単なる社長交代とは違います。理念、組織、資金、歴史の4つを承継するために、息子としっかり話し合いました。
最後に我々には定年がなく、いつまでも社会と繋がりを持つことができ、目に見える形で社会に貢献できます。定年退職してしまった友達からは、うらやましがられています。人生は晩年が良い、あの頃は辛かったけどそろそろ贅沢してもいいのかな、と共に思える友達は同友会にしかいません。幸せな事です。」
本多、田中両代表理事より、受付で配られたカラーの小冊子2030年ビジョンの説明がありました。今回は支部、委員会、部会、各々で作成してもらったので、1年以上かかりました。メインスローガンは、「人間尊重の経営で幸せの見える社会づくり ~学びと実践を根幹に据えて~」。同友会理念でいうと、「国民や地域と共に歩む中小企業」。何のために経営しているのか、何のために生きているのか、に繋がっていくと思います。
懇親会で、2022実行委員長山本満博氏(株式会社イークリード)より、2023実行委員長小林誠氏(湘南支部 小林運輸株式会社)へ、赤い法被が引き継がれました。さあ、2023年かなカンが始まります!
(文責:有限会社明和企画 野垣博文)
第1分科会は、税理士法人YMG林会計の代表社員林充之氏が今年10月に全面改訂されVer2となった企業変革支援プログラムの説明を行い、実際に各参加者が企業変革支援プログラムを体験しました。
企業変革支援プログラムとは、経営の総合的自己診断(セルフアセスメント)と戦略策定支援ツール、具体的には、定期的に自己診断を行い、「現在の取り組み・気づき」で自社がどのような状態なのかを確認すると同時に「今後の取り組み」を明確化し、継続的に変革に取り組めるプログラムで、経営環境の変化に振り回される経営から脱却し、変化をとらえてぶれない座標軸をもった経営の追求のための自己変革のツールです。
従来の企業変革支援プログラムは、STEP1とSTEP2の2冊に分かれていました。STEP1は、自社についての自己回答後、同業他社や前年、社員比較を行い、自己変革課題の気づきを与えるものです。
STEP2は、自社の企業プロフィールを作成後、STEP1で気づいた自己変革課題の優先順位を決め、自己分析により課題をまとめ、その妥当性の検討を行うものです。その結果、経営指針の成文化・見直しを行い、経営指針の実践へと繋がります。
けれど、①ここ10年の同友会活動として経営指針が成文化運動から成果を問われる実践運動の具現化や中小企業振興基本条例等政策的課題への取り組みの拡大、共同求人+社員教育の連携や多様な人材の活躍の場の提供事例等の各委員会活動の時代に応じた取り組みのプログラムへの反映の必要性や➁従来のSTEP2が設計どおりに普及されていないとの課題で改訂が必要となりました。
今回の改訂における主な特徴は以下のとおりです。
①プログラムを通じ有効活用するところから、経営指針の実践を支援するものであることを明確に位置付けました。
➁企業変革のために必要と思われる取り組みの具体例を列挙し、経営計画を実際に立案する際に役立つ内容にしました。また、社員と一緒に取り組む場合があることにも配慮しました。
③従来のSTEP1、STEP2を統合し、一つの体系としました。
④新カテゴリーとして「企業の社会的責任」を追加するとともに、核カテゴリーの詳細にも今日的視点で修正と補強を加えました。
なお、企業変革支援プログラムのビジョンは、①同友会の資源を生かす。この10年の成果を反映する。(各委員会の運動の横軸の一冊へ)➁人を生かす経営の総合実践企業を各地域で増やすツールする。(一社でも多く!増強のツールとして!)③気づきを促す工夫や仕掛けを盛り込む自社の強みと課題に気づき、具体的な取り組みに着手するための工夫(強みを知ることが課題着手への原動力となる!)です。
当日、各参加者は、実際に企業変革支援プログラムVer2のエントリー自己診断や優先順位シートを用いて、自社が現在どのような状態なのかの確認を行い、その上で目標とする姿・理想の姿を構想し、現状とのギャップを認識、そのギャップを克服するための自社の課題の優先順位を決めました。
(文責:テンプラス社労士・行政書士事務所 鈴﨑治男)
今年のかなカン・第2分科会は「革新により未来へ繋がる経営へ ~中小企業のイノベーション事例~」で、かなカンのメインテーマ「未来へ繋がる経営が今日から始まる」とリンクしたテーマを掲げ、50人弱が参加した。
前半は、2つのイノベーション事例を中心に、開催地(川崎市)の行政の方にもご参加頂き、パネルディスカッション形式で討議を実施した。
パネラーは「建設・リフォームの会社が居酒屋やテイクアウトのフード事業に挑戦した」㈲湘南理想商事 代表取締役中澤 秀樹氏、「福祉の分野とフレンチ・カフェを組み合わせ、お洒落な古民家を使って提供する」一般社団法人AOH 代表理事 伊藤 紀幸氏、そして、「工場夜景という逆転の発想で萌えスポットに変身させた」川崎市経済労働局 産業政策部部長 若松秀樹氏というイノベーションを地で行った経験のある面々。
座長 ㈱オマージュ 代表取締役 齊藤健司氏の「果たして中小企業がイノベーションを起こせるとおもいますか?」というやや挑戦的な質問からディスカッションはスタートした。しかし、討論が進むうちにこの疑念は晴れ、「中小企業こそイノベーションが起こせる」という方向に話は進み、次のグループ討論への布石が打たれるという進行に。座長の見事なファシリテーションに「やられた!」と思った瞬間だった。
パネラーの伊藤氏と中澤氏の新規事業スタートの動機(自ら進んで手を挙げた/請われてスタートする事になった)の対比も興味深かったが、お二人とも事業を進める高い“熱量”がイノベーションを成功させる前提となっていることも学ぶ一日となった。
後半は、4~5人程度の異業種グループに、「このチームで、どんな新規事業が出来ますか?」という問いかけを行い、各グループにて討論を行った。40分程度の短い時間の中でも各チーム活発な討論が行われたようで、例えば「IoTを使った障がい者向けサービス」、「外国人と帰国子女をネットで結んだ地域おこし」、「不登校の若者でも活躍できる“メタバースの学校”」、「高齢者でも健康な毎日を過ごせるサービス」等々、様々な新規事業のアイデアが発表され、まさしく【未来に繋がる経営】を垣間見た分科会となった。
(文責:Natural Art有限会社 佐々木良司)
この分科会は、社員で構成されるグループが2つある中で行われました。
社員教育とは、社員を教育するだけでなく、経営者としても社員が成長できる環境づくりをし、社員と経営者のお互いの立場から会社や社会との関わりをみつけていくことです。一番大事な事は「幸せになるため」であると学び、お二人の経営者から、社員に対する想いを伺いました。
同友会入会は、2012年6月。経営指針作成部会48部会を経て、2017年に法人化し、ダイバーシティ雇用に力を注いでおられます。個が輝くことを目標にし、障がい者雇用を積極的に推進しています。
現在は完全なテレワークですが、社員にどうなって欲しいのか、社員は何を感じているかなどを考え、月に一回コミュニケーションをとる時間を設けています。そこで、会社のやりたいことと、社員のやりたいこととのすり合わせをすることで、経営者である自身のスキルも上がっているのが実感出来ると語ります。
一方で、それが社員のモチベーションにも繋がっているそうです。
まず「社長は会社にいない方が良い」から始まり、その上で、①幸動指針②工場見学③オープン経営④その他を揚げ、話が進められました。
①で、「行動」ではなく「幸動」としているのは、自分にとって何が幸せであるかを常に考えて行動することを指針として欲しいとの想いからです。具体的には、4つのCをあげています。チェンジ(確信)、クリエイト(創造)、チャレンジ(失敗)、キャッチ(行動)の4つです。
②の工場見学では、「社員さんが自ら動く」と言う効果が生まれ、③のオープン経営では、すべての会計の仕組みを全社員に理解してもらうことで、社員のやる気に繋がると語ります。
会社と社会の中で生じるすべての事を社員に自責化させることで、社員自らが学んでいける仕組み作りができあがっています。社長の思考を持った社員の育成に経営者が努力することこそが、経営者の使命なのだと話してくれました。
その後に行われたグループ討論のテーマは、「どういう会社だったらあなたの幸せを実現できますか?」「その理想の会社を作るためにあなたは何をしますか?」というものでした。
社員が喜んで働いてくれることで経営者自身が幸せになれ、また、社員が安心して働ける仕組み作りをしていくことで、社員自身が存在している意味を感じられる環境になります。
ところで、この分科会には社員のみのグループが2つありました。そこでは、自分の夢を実現させながら会社の夢を実現させていくことで、どちら夢も叶えるための取り組みをしていくことが大事であるとの声が上がりました。このことからも、経営者からは社員の主体性を大事にしていくことが大切だということがわかります。
最後に、座長である小田原鉱石株式会社 代表取締役 高橋淳氏から、経営者が会社に対する想いを話し、社員の気持ちを聞き出し、話しやすい場をつくることで、働きやすい職場を作ることができるのだというまとめがありました。幸せでいられる環境を日々作り続けることの大事さに触れる一日となりました。
(文責:村上電業株式会社 村上明香)
第4分科会では「理想と現実、ディベートで徹底深掘り!」と題し、賛否が分かれるであろう経営に関するいくつかのテーマについて、賛成派と反対派それぞれの立場に立つディベーターが自身の立場からディベートを行うという企画が開催されました。
この「ディベート」という形式は、かなカンはもちろん、各支部や委員会などの例会を通じてもおそらく初の試みでしたが、①それぞれの立場から客観的な根拠に基づく理由付け(立論)、②相手の立論に対する反論、③反論に対する再反論(反駁)という3つのパートに分かれることを明示することで、「今なにをやっているのか」がわかるようにする工夫がなされていました。
ディベートのテーマは、(1)事業の存続や発展のためには、社員を増やし続けるべきであるか否か、(2)労使対等は詭弁であるか否か、(3)社員のモチベーションアップは結局お金であるか否か、という非常に悩ましいテーマでした。いずれも、どちらの考え方もあり得る、という絶妙なテーマ設定であり、各チームとも相応の説得力のある立論を行いつつ、相手の立論に対する反論を行う、という難しい作業に苦労しながらも同時に楽しんでいる姿が印象的でした。時には言いたいことが多すぎて時間を超過しそうな場面もありましたが、そこはファシリテーターの豊田一也氏(株式会社エアークラフト・横浜みなと支部)と金子厚子氏(株式会社フェアネス・コーポレーション・たま田園支部)の適格な差配により秩序あるディベートが行われていました。
その後のグループ討論では、ディベートを聞いた上で各テーマについてグループ内で賛否を討論してもらいましたが、やはり各グループともに「どちらも間違っているわけではない」「実際に自分たちで議論してみると理由付けは難しい」など、熱い議論が飛び交っていました。
今回のディベートという形式は初の試みであり、室長の長田誠氏(湘南支部)やファシリテーターのお二人をはじめとする第4分科会担当者はすべてが手探りであり、多くの苦労があったと推察されます。改善の余地はもちろんあるのでしょうが、まずは新しい方式にチャレンジした志に敬意を表するとともに、このような形式の分科会・例会もアリなのだ、という認識を皆さんに持ってもらえたのであれば、それはもう一つの成功だったと言えるのではないかと思わされた分科会でした。
(文責:LM総合法律事務所 網野雅広)
第5分科会では「もう人手不足とは言わせない!~ボーターレス雇用による目指せ100年経営~」をテーマに、3人の方から報告をしていただきました。
株式会社Woo-By.Style 野村 美由紀氏
Woo-By.Styleでは難病、アスペルガー、高齢など、それぞれが抱える事情があっても働けるよう、内勤 / リモート / プロジェクトの3つの働き方を選べるようにしています。4例の社員の働き方を取り上げ、同じ社内でも異なる働き方ができる実例を報告していただきました。
そのカギとなるのは「創造と思いやりを持ったコミュニケーション」。社員は他の社員ができない分を負担と思わず、お互いを思いやって仕事をすることは当たり前と考えているという言葉が印象的でした。
有限会社川田製作所 川田 俊介氏
社員17名中高齢者4名、外国人4名という川田製作所。最高齢81歳がリモートワークを行っているという報告に、会場はどよめきました。シニアバンクを積極的に活用しているそうです。
日本人社員で習得に3年かかる技術を、ある外国人女性社員は3か月で習得してしまったと言います。また、日本人は残業を嫌がる傾向がありますが、外国人は快諾してくれるので大変助かっているとのこと。
年齢や言葉の壁を作っていたのは、経営者側かもしれないと考えさせられる報告でした。
株式会社フェアスタート 永岡 鉄平氏
児童養護施設の子どもたちや若者への就労支援を行っている永岡氏からはイマドキの若者が好む働き方について報告がありました。
会社に社員を合わせようとせず、一人ひとりの個性に合わせる。たとえば、「3回言ってわからなければ教えないという昔の考え方はNG」「後姿を見て学べはNG」「このコミュニティにいても大丈夫だという安心感を与える」といった具体的な方法を紹介していただきました。
高卒、新卒世代は「経営者の人間性を見ている」という言葉もあり、経営者としての自分軸の大切さをあらためて考える報告でした。
(文責:株式会社アールジャパン 荒岩 理津子)