第35回かながわ経営カンファレンス(以下かなカン)は、2023年11月16日に湘南支部主催で開催されました。会場となるホテル サンライフガーデンは景観美しい相模川のほとりにある美しいホテルです。
2020年からコロナ禍の影響を受け3年連続でオンライン、リアルでのハイブリッド開催でしたが、今回はリアルのみでの参加受付となり、会場には315名の参加者が集まりました。
毎年恒例となった、かなカンでの物販はダイバーシティ委員会をはじめ、全部で7社が出店する「かなカンマルシェ」としてお目見え。ドッグフード、かなカンオリジナルバック、レザー製品、洋菓子の詰め合わせ、お茶、書籍など湘南地域・神奈川県内の名産品が販売され、多くの参加者が購入していました。
かなカンマルシェの様子は今年も会員企業のFMカオン(県央支部)の番組「ホッ!とタイム」の中で生中継を行いました。神奈川同友会のラジオ番組「かながわPOWER 社長とランチタイム」のパーソナリティ 堤 由里恵氏が熱気あふれる会場の様子をレポートし、小林 誠かなカン実行委員長にインタビューしました。
また、女性部が中心となり、お茶で参加者をおもてなしする、かなカン初の「おもてなし」も開催。美味しい抹茶とお菓子がふるまわれ、日本の伝統の味を楽しんでいました。
第一分科会では、福田産業株式会社、福田隆将社長にご報告いただきました。
福田社長は2014年に経営指針作成部会を受講、その翌年に二代目として福田産業の代表取締役に就任されました。事業承継当時、福田社長は社員やご家族の板挟みになり、社内の人間関係は険悪だったと言いました。関係性を改善するために指針発表を続けますが、それでもなかなかよくならない会社の雰囲気に、もがき続け模索する中で福田社長に大きな気付きを与えてくれたのは「労使見解」でした。
労使見解には「社員を最も信頼できるパートナーと考え」と記載があります。信頼とは無条件に相手を信じること。経営者の揺るぎない姿勢とは、裏切られる勇気をもって社員を信頼することだと、福田社長は気づかされます。ではどうすれば揺るぎない姿勢を確立できるでしょうか。
福田社長のお話の中で印象的に何度も繰り返し使われていた言葉は「内省」でした。揺るぎない姿勢とは、すなわち自己を確立すること。深く自分を省みて、メタ認知を高めること自己理解が深まりで自己確立が進むといいます。
ふと考えてみると同友会で取組の多くに自己の内省を促す効果があることに気づかされました。例えば例会報告。これは今まで自分がおこなってきたこと経営実践を大勢の前で報告する。報告までのプロセスで自分がやってきたこと、そこで気づいたこと、感じたことを振り返り、言語化することで自分をメタ認知することできるようになります。
またグループ討論、経営指針作成部会では、自分とは違う意見を持つ人の話を聞くことで、その違いから自分というものの輪郭を感じることができ、また、他者からの問いかけによって内省が促され、自分というものを改めて考えることができるようになります。
相手を無条件に信じるためには、揺るぎない姿勢を確立する。そのプロセスには深い内省が必要である。
福田さんのお話は、まさに同友会の言う「学び方を学ぶ」にふさわしいご報告でした。
<文責 小田原鉱石㈱ 代表取締役 高橋 淳>
堀江氏は結婚を機にタイジ株式会社の後任者として入社しかし、入社当初は創業社長との経営方針の違いで確執が存在していました、長年の企業文化の進化において、危機感の無いまた変化を嫌う体質が一つの課題となりました、そんな危機感を持った堀江氏から代表取締役としてまた前職の金融機関の経験と洞察をもとに報告を行いました。
タイジ株式会社、入社まもなく中小企業家同友会に入会し、第12回経営指針作成部会に参加することで危機感の無いまた変化を嫌う旧態依然とした年功序列型会社組織からの脱却を目指して、頑張ったら報われる会社(組織)作りの重要性を社員と共に泊りがけで作り上げ変革の一翼を担いタイジ株式会社の新たな展開と成っていきます、理念を共有できる人材の発掘、自社製品を開発する人材を採用し未来へと繋げ、日本のおもてなし(ホスピタリティー)を100の世界や地域に届ける目標を立てています。
またグループ討論テーマでは「自社での人材戦略をどのように考えますか?」をテーマに行いました、参加者は自社の状況に即して人材戦略について討論しました。
以下は討論ポイントの一部となります。
カンファレンスのまとめとして、社長が変革を恐れずに前に進み、夢を語り社員と共に夢を共有するパートナーと捉える事の大切さを改めて気づいた【第3分科会】のカンファレンスと成りました。
<文責 ㈱アップ総合企画 代表取締役 田中 勇人>
報告者は10年前の2013年10月に実施された、障がい者問題全国交流会in横浜のゲスト参加をきっかけに、同友会の入会を決められた県南支部所属であり、ダイバーシティ委員会の山本委員長でした。
入会後、2014年4月に受講された、経営指針作成部会第45部会受講の経験からの気づきと実践が、経営されるロジナス社の成長に紐づいており、今報告ではそこを切り口に思考が発展して行きました。
先ずは【経営者の責任】からから紐解き、自社で実践をされている3つの実践について、報告がありました。
3つの実践からの抽出されたポイントは、テーマに添う形で【労使間の信頼関係の確立】と紐づけ、ピーター・F・ドラッカー氏は【真摯さ】と結論付けられた信頼関係の確立を達成するには、経営指針に落とし込むことによって実現出来るものとし、経営指針は社員との信頼関係を確立するためのツールと説かれました。
エンゲージメント(主体的に取り組む心理状態)、2009年から始めたツアードゥ事業へ込めた思い、障がい者雇用からの【もにす認定】と、事業活動からの自身の気づきに、思考の進化や変化を感じさせながら、自身が勉強されている選択理論心理学にある、組織運営のベースは【良好な人間関係にある】をポイントとして、致命的な7つの習慣と、身につけたい7つの習慣から深堀して、良い会社の証とは?と、思考を深め、キーポイントとなる【成長(社長も社員も)】に思考が導かれました。
イライラする事もあったが、成長によって解消され進化を遂げて行ったリアリティ溢れる自社の取り組みの報告から、座長である私も、まだまだイライラする事があり、成長が足りない事を思い知らされ、社長も社員も互いの成長によって様々な問題や課題を解決し、進化を遂げねばとメラメラ燃え、燃え過ぎて燃えカスにならないよう、社員との信頼関係を築く経営指針をしっかりと作り、熱く実践していこうとの結論に至りました。
グループ討論では、テーマを【社員との信頼関係を築くために、何をしますか?】とし、参加者31名を5つのグループに分けて討論頂きました。
キーポイントとなる経営指針についての是非や継続の必要性の議論から、共感からの合意点が多くあった一方で、経理公開については、どこまでやるのかについて多くの議論がなされました。
また、~経営者にカリスマは要らない~のサブテーマに対しまして、山本委員長はカリスマ性がある!との意見も聞かれたグループ討論でした。
<文責 ㈱栄和産業 代表取締役 伊藤正貴>
第6分科会は、「地域にトルネードを起こす」というコンセプトで、スターホーム(株)代表取締役の星武司氏に報告をしていただきました。
スターホームは、1969年10月創業、資本金2,600万円、売上高17億円で、社員数42名およびアルバイト170名を擁する会社です。
星社長は、入社2年目に父である先代の社長から、突然「明日から社長は任せた」と言われて社長に就任されました。右も左も分からないままスタートした社長業は、顧客満足を追求し、社員満足をないがしろにしていました。
当初は、社員や業者を叱責し、吊るし上げるようなことをしながら顧客満足を追求することによって、売上増加につながり、順調なスタートを切ったかと思われました。しかし、そのような経営が長続きするわけもなく、社員は疲弊し、極めつけは2008年6月に植物性塗料の自然発火で社屋が全焼してしまうという結果につながってしまいました。
残ったのは権利書と実印だけ…という状況で、冷静にこれからのことを考えた結果、「すべての人が幸せになる会社」をもう一度作り直そう!と決意されます。
そこで取り組んだことの大きな柱が、下記の2つです。
1. の社風づくりは以下の取り組みです。
(1)経営理念の浸透について、経営計画検討会を実施して、社員と共に計画を立てる
(2)基本行動を徹底するために、活力朝礼を毎日実施する
(3)全社員と半期に一度の面談を行って、会社と社員の目標の擦り合わせを行う。
(4)職場環境の整備を行い、働きやすい環境づくりを進めていく。
2.人の強みを活かした新規事業開拓は以下の取り組みです。
(1)障がい者グループホーム
(2)アウトドアレジャー事業
(3)HRD事業(人材発掘&マッチング)
新規事業開拓の立ち上げは、社員からの発案であったり、スターホームを通じて“夢”を実現したいという社員の要望を、社長が一緒に考えて事業化しています。
つまり、新規事業を立ち上げること自体が目的ではなく、社員一人一人が能力を発揮できる場づくりをする、その場こそが新規事業になるという考え方です。
もちろん、様々な取り組みを行うなかで困難や失敗がありましたが、それらを一つずつ乗り越えてきた結果、本業の建築業をベースに障害者グループホームの運営、民泊、キャンプ場、キャンプサイト等の多角化経営に取り組むことができ、業績は上がり続けているのです。
報告者に学ぶべきことは、やはり社風づくりがあってこそで、これがすべての土台になることではないでしょうか。自社においても社風づくりをはじめ、経営指針を浸透させていくことによって、本業を発展させることはもちろん、そこから始められる新事業や新商品を開発することを進めていくことができます。また、困難や失敗もつきものですが、まずはやってみるということと、そこから何を学んで、どう展開させていくかというところが経営者の腕の見せどころであると気付かされました。
<文責 ㈱天・地・人 代表取締役 中筋悠貴>
全体会・特別報告では、平塚市長の落合克宏氏と藤沢市長の鈴木恒夫氏が来賓としてご挨拶されました。
落合市長は「皆様のおかげで、平塚市は少子高齢化社会にあっても転入者が増えています。市内ではマンションの建設やアウトレットモールの開業など、経済活性化の取り組みが進んでいます。今後も平塚経済の発展にご協力ください。」と述べました。
鈴木市長は「働きやすい環境を整えるとともに、災害や感染症への備えを強化し、地域経済の活性化を応援していきます。」と力強く語ってくださいました。
特別報告のテーマは、「逆風を追い風に変えるアイデア。そして経営革新 疾風勁草〜地域とともに存続を目指す銚子電鉄の挑戦〜」。千葉県中小企業家同友会の会員でもある銚子電気鉄道株式会社(以下、銚子電鉄)代表取締役社長 竹本勝紀氏にご登壇いただきました。
預金残高50万円、負債2億円の銚子電鉄をどのように単年黒字へ導いたのかという経緯を笑いあり、涙ありのストーリー動画とともに明るく冗談を交えながら、話してくださいました。
銚子電鉄は、千葉県の銚子駅と外川駅を繋ぐ、総距離6.4kmの鉄道路線。1923年の開業以来、地元の方からは銚電と呼ばれ、親しまれてきました。沿線はのどかなキャベツ畑が広がっており、地域住民の通勤手段や観光目的としても利用されている鉄道です。
銚子電鉄と言えば電車の運行よりも有名なのが「ぬれ煎餅」です。このぬれ煎餅が誕生したきっかけは、平成10年に親会社だった工務店が800億円という負債を抱えて倒産したことによるものです。「鉄道会社は装置産業」と竹本氏が語るように、車両や線路のメンテナンスには我々の想像以上に費用がかかります。線路を1mを保守するのに10万円が相場だそうです。
地域に根付いた電車のため、乗降客数を増やすことはできないならばどうするか、それがぬれ煎餅の製造、販売というアイデアにつながります。その後、ぬれ煎餅が多くのメディアに取り上げられたこともあり、売上が鉄道事業を上回る収益をあげたことは有名なお話しですね。
コロナ禍においても銚子電鉄は厳しい経営に迫られましたが、他企業とのコラボレーションや自虐ネタが効いた食品の開発で、「帝国データバンクの企業情報に鉄道ではなく『食品製造・販売』と掲載された」と笑顔で語ります。
「経営がまずい」という意味で企画したお菓子「まずい棒」の発売、車内をイルミーネーションで飾ったイルミネーション電車、車内をおばけ屋敷に演出した「電車お化け屋敷」、「岩下の新生姜」で有名な岩下食品とのコラボ車両の企画・運行など数々の突飛なアイディアを企画・実行し、2023年は単年黒字になるまで業績を戻してきました。
「これまで経営危機を何度もクリアできてきた1つ目の要因は、会社全体で諦めなかったことです。諦めないこととは行動すること、そして突破口を見つけること。銚子電鉄では、”乗って楽しいエンタメ鉄道”を目指し、楽しい電車の運行を企画、運営して取り組んできました。
2022年には税を考える超社会(銚子ゃかい)派ドラマ『G(税)メン2022』を自社のYoutubeチャンネルから配信し、銚子電鉄の更なる知名度向上に取り組んでいます。こうした活動が実を結んできています。
次に大切なのはリスクテイカーとしての覚悟です。経営危機に瀕した時、社員が自宅を担保に入れてくれたことで公庫から1,500万円の融資を獲得することができました。社員には感謝と尊敬しかありません。経営はリスクが伴うものです。だからこそ、会社一丸となってリスクテイカーとしての覚悟を持つこともとても重要だと思います。
世の中は強いものでもなく、賢いものでもなく、変化できるものが生き残れる。今後も変化を恐れずに、銚子電鉄はこれから挑戦を続けていきたいと思います。」
まさにその理念を体現されて成果を出されている有言実行の特別報告でした。
特別報告後、田中代表理事より、閉会の挨拶がありました。
「経営は、明確な答えが用意されているものではありません。特別報告にあった銚子電鉄さんの突破口も最初から思いつくような答えではなかったはずです。答えを作っていくことが経営では大切。そして、今ある先代の人々が作ってきた社会をより良い社会にしていくことが経営者の責務です。これからも一緒にがんばりましょう。」
全体会の最後に、第35回かなカン実行委員長小林 誠氏(小林運輸株式会社)より、2024年の第36回かなカン実行委員長 齊藤 健司氏(株式会社オマージュ)へ、実行委員長の赤い法被が引継ぎが行われました。
2024年は開港の街 横浜でかなカンが開催されます!次回のかなカンもご期待ください!
<文責:Power Of Word 平嶋 大輔>