滝田氏は、その風貌からは想像できないが『フーテンの寅さん』で有名な東京下町の葛飾・柴又生まれ。農業系の大学で地域経済を学び、卒業後は大手IT会社に就職するも僅か2年で退社、一転して農家に弟子入りし野菜づくりに勤しんだ。その後、IT業界に戻り、千葉の富津に単身移住、フリーランスとして移住者支援事業を担った。
このころ出会ったのが、サイボウズ社が提供している kintone(キントーン)である。kintoneとは、プログラミングの知識がなくてもノーコードで、業務のシステム化や効率化を実現するアプリがつくれるクラウドサービスである。
滝田氏は、そのツールを引っ提げてあらゆる人脈を活かし、法人化した自社の売上を伸ばし続けている。10年後には売上を5億円にしたいと語る彼の悩みは「これからの展開について何処に向かうべきか」ということだが、現在35歳の彼には伸びしろしかない。
小瀬氏は、お父様が1982年に起業した精密板金加工会社の2代目社長である。大学では、その会社をいずれ継ぐであろうことを見越し、精密加工機械工学科を専攻した。卒業後は大手IT会社に一旦入社、人気のあったSEの職を担う。
4年間働いたのち、お父様の経営する社員5名の町工場・武蔵工業に入社したものの、鳴り物入りで入社した御曹司に誰一人として仕事を教えてくれる人はいなかった。そこで工場板金1級を自ら取得し技術や理論を学んだが、周りは良い顔をしなかったという。
3年後、専務取締役に就任した彼は、債務超過となっていた会社の立て直しに着手、リーマンショックも相まって社員を入れ換えた。また、ホームページを作成して営業力強化を図り、補助金で設備を増設などした結果、代表取締役就任6年目の現在は、社員24名、売上は7倍近くになっていた。取引銀行からの紹介で、事業承継先を探していた同業者の M&A をおこなうなど、同社のさらなる飛躍が期待される。そうした彼の課題は「仕事を任せられる右腕を発掘し組織をより強固にすること」だという。
ご報告いただいたお二人が、それぞれの課題をクリアーにするには、いうまでもなく同友会をフル活用していくことが肝要と考えるが、今日の社会課題ともいえる DX 化や事業承継問題などに取り組んでいることは、これぞ中小企業が歩む道のように思える。これからもこの二社の動向から目が離せない。
(文責:スプレッド㈱ 田利 純)