主要な指標は減少している。サービス業の経常利益 DI 数値は他業種よりも低い。今期における設備投資の割合は、減少している。
経営課題は、前回調査時と同様に従業員の不足、人件費の上昇、仕入単価の上昇となっている。
【調査要領】
※文章中のDIとは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。
日本大学商学部准教授 長谷川英伸
全業種の売上高 DI は、前年同期比で 23(前回調査時、以下省略)→18 の 5 ポイント減少、次期見通しは 21→24 の 3 ポイント増加となっている。各業種の DI は下記の図表 1 の通りである。前年同期比では、建設業の 21→24 の 3 ポイント増加、製造業の 10→13 の 3 ポイント増加、情報・流通・商業の 39→35 の 4 ポイント減少、サービス業の 26→15 の 11 ポイント減少となっている。次期見通しでは、建設業の 7→35 の 28 ポイント増加、製造業の 18→21 の 3 ポイント増加、情報・流通・商業の 17→25 の 8 ポイント増加、サービス業の 28→23 の 5 ポイント減少となっている。同時期に調査した中同協の DOR では、前年同期比の売上高 DI は 9、次期見通しでは 8 となっている。また、埼玉同友会の結果は、前年同期比の売上高 DI は 17、次期見通しでは 15 である。
全業種における前年同期比の売上高 DI は 18、次期見通しでは 24 となっているので、数値は回復している。建設業の前年同期比の売上高 DI が 24、次期見通しでは 35 となっており、数値は増加している。製造業の前年同期比の売上高 DI は 13、次期見通しでは 21 となっているので、数値は回復している。情報・流通・商業の前年同期比の売上高 DI が 35、次期見通しでは 25 となっており、数値は減少している。サービスの前年同期比の売上高 DIが 15、次期見通しでは 23 と数値が回復している。
図表 1 売上高DI 値

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益 DI は、前年同期比で 16→9の 7 ポイント減少、次期見通しは 13→16の 3ポイント増加している。各業種の DI は下記の図表2の通りである。建設業は、前年同期比が 0→18の 18ポイント増加、次期見通しでは、△14→25の 39 ポイント増加している。製造業は、前年同期比が 7→13 の 6 ポイント増加、次期見通しでは、10→15 の 5ポイント増加となっている。情報・流通・商業は、前年同期比が 26→35の 9 ポイント増加、次期見通しでは、9→21の 12ポイント増加となっている。サービス業は、前年同期比が 20→△1 の 21ポイント減少、次期見通しでは、22→14の 8ポイント減少となっている。同時期に調査した中同協の DOR では、前年同期比の経常利益 DI は 1、次期見通しでは、4 となっている。また、埼玉同友会の結果は、前年同期比の経常利益 DIは 11、次期見通しでは 12 である。
全業種における前年同期比の経常利益 DI は 9、次期見通しでは 16 となっているので、数値が増加している。建設業では、前年同期比が 18、次期見通しでは 25 と数値が回復傾向にある。製造業は前年同期比が 13、次期見通しは 15 と数値は増加している。情報・流通・商業では、前年同期比が 35、次期見通しは 21と数値は減少傾向にある。サービス業では、前年同期比が△1、次期見通しは 14と回復している。

黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益の水準 DI に関しては、全業種の DI は 30→24 の 6ポイント減少、建設業は 46→24 の 22ポイント減少、製造業は 20→33 の 13ポイント増加、情報・流通・商業は 43→30 の 13ポイント減少、サービス業は 29→18 の 11ポイント減少している。全業種のなかで、建設業は大きく数値を落としている。同時期に調査した中同協の DOR では、採算水準 DI は 30、埼玉同友会は 42である。
次に業況水準についてみていく。全業種の DI は 0→5 の 5ポイント増加、建設業は 7→ 18 の 11ポイント増加、製造業は△20→△10 の 10ポイント増加、情報・流通・商業は 17→20 の 3ポイント増加、サービス業は 4→6 の 2 ポイント増加となっている。全業種で増加しているものの、製造業の数値は水面下となっている。同時期に調査した中同協の DOR では、業況水準 DI は 1、埼玉同友会は 11である。
業況判断では、全業種の前期比は 9→15 の 6 ポイント増加、前年同期比は 21→15 の 6ポイント減少、次期見通しは 23→22 の 1ポイント減少している。同時期に調査した中同協の DOR では、前期比の業況判断 DI は 1、前年同期比の業況判断 DI は 2、次期見通しの業況判断 DI は 3 である。また、埼玉同友会は前期比の業況判断 DI は 15、前年同期比の業況判断 DI は 16、次期見通しの業況判断 DI は 22 である。
建設業の前期比は 36→18 の 18 ポイント減少、前年同期比は 7→12 の 5ポイント増加、次期見通しは 7→24 の 17ポイント増加となっている。製造業の前期比は△13→15 の 28ポイント増加、前年同期比は 15→18 の 3ポイント増加、次期見通しは 25→23 の 2 ポイント減少となっている。情報・流通・商業の前期比は 13→15 の 2 ポイント増加、前年同期比は 9→20 の 11 ポイント増加、次期見通しは 13→20 の 7 ポイント増加となっている。サービス業の前期比は 14→15 の 1ポイント増加、前年同期比は 30→14 の 16ポイント減少、次期見通しは29→21 の8ポイント減少となっている。サービス業は、各数値が伸び悩んでいる。
経常利益が増加した理由として 1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の 42.0%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の 33.0%、「人件費の低下」の 14.0%であった。一方、経常利益が減少した理由で 1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の 38.2%であった。次いで「人件費の増加」の 21.8%、「原材料費・商品仕入額の増加」の 18.2%であった。
経常利益が増加した理由としては、「人件費の低下」が上位にあがっている。経常利益が減少した理由では、前回調査時と同様に「原材料費・商品仕入額の増加」、「人件費の増加」の割合が大きい。
事業への投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期 に事業への投資を実施したと回答したのは全体の 43.5%→36.9%、次期に事業への投資を計 画していると回答したのは 41.5%→43.3%であった。今期の事業への投資を実施した割合は、前回の調査結果と比較すると割合が減少し、次期に事業への投資を計画している割合は増 加している。今期の事業への投資を実施したと回答した企業で投資した項目別(上位 3 位)にみてみると、「採用」の 23.9%、「設備機器」の 15.4%、「情報機器」の 13.7%となっている。次期の事業への投資計画では、「採用」の 27.5%、「設備機器」の 16.5%、「事務所・店舗」の 14.3%という結果になった。今期、次期ともに「採用」、「設備機器」の割合が上位を占めている。
資金繰の状況について、現在の資金繰の状況をみていく。余裕ありとやや余裕と回答した企業割合からやや窮屈、窮屈と回答した企業割合を引いた資金繰 DI は、△3→△11 の 8ポイント減少している。同時期に調査した中同協の DOR では、資金繰りDI は 11、埼玉同友会は△8 である。
現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位 3 つまでを選び回答したものであ る。1 番高い割合を示したのが、「従業員の不足」の 17.8%、次いで「人件費の増加」の 14.8%、 「仕入単価の上昇」の 11.8%となっている。今回の結果は、前回調査時と同じ項目となっている。
経営上の重点では各企業上位 3 つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中 の力点では、多い順に、「付加価値の増大」の 18.8%、「新規受注(顧客)の確保」の 16.3%、 「人材確保」の 14.4%となっている。会員企業は「人材確保」に注力していることがわかる。
今回の特別質問では、自社の現況(昨年同時期との比較)に関連する項目が設定されている。結果をみていくと、まず、原材料の価格に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「1~5% 上昇した」は 33.3%→32.9%、「6~10%上昇した」は 29.9%→32.3%、「11%以上、上昇し た」は 15.0%→11.6%、「減少した」は 1.4%→1.9%、「変化なし」は、20.4%→21.3%と なっており、「6~10%上昇した」の割合が増加傾向にある。
次に社員(アルバイト・パートを含む)賃金に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、
「1〜2%上げる・上げる予定」は 27.9%→18.6%、「3〜5%上げる・上げる予定」は 43.5%→ 42.3%、「6%以上、上げる・上げる予定」は 11.6%→19.9%、「変化なし」は 16.3%→18.6%、 「下げた」は 0.7%→0.6%となっており、「6%以上、上げる・上げる予定」の割合が増加している。
次に多様な人材の雇用(採用)に関する項目(複数回答可) (前回調査時と同じ項目)では、「高齢者を採用した」は 15.1%→11.6%、「若年者を採用した」は 26.8%→27.0%、「障害者を採用した」は 6.1%→7.4%、「外国人を採用した」は 10.1%→9.5%、「採用したくても出来なかった」は 11.7%→11.6%、「採用は実施していない」は 24.6%→29.1%、「その他」の 5.6%→3.7%となっており、「若年者を採用した」、「障害者を採用した」の回答割合が増加している。
次に経営者保証(個人保証)に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「外れた」は 27.2%→22.7%、「外れていない」は 46.9%→48.1%、「経営者保証に関するガイドラインを知らない」は 25.9%→29.2%となっており、「外れていない」と回答している割合が増加している。
次に労働環境の整備(労働安全衛生法)に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「取り組んでいる」は 68.0%→61.7%、「取り組んでいない」は 18.4%→26.6%、「労働安全衛生法を知らない」は 13.6%→11.7%となっており、「取り組んでいる」の割合が減少している。次に外部環境について影響があるものに関する項目(複数回答可)では、「金融情勢(円安・ 株高など)」は 33.2%→33.3%、「世界情勢(ウクライナ・イスラエル・中国など)」は 23.1%→ 17.4%、「トランプ関税」は 17.8%→14.4%、「影響はない」は 19.2%→23.9%、「その他」は 6.7%→10.9%となっている。「影響はない」とする回答割合が増加している。
最後に脱炭素・SDGs に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「取り組んでいる」は 45.5%→56.5%、「取り組んでいない」は 55.5%→43.5%となっている。「取り組んでいる」の回答割合が増加している。
以上の景況調査結果を振り返ると、前回調査時と同様に DI は全体的に減少傾向にあり、今期に設備投資した割合も落ち込んでいる。特別質問の回答をみると、前回調査時と同じ回答項目となっており、各項目で数値の変動はみられた。また、会員企業にとって大きな経営課題となっている賃上げと人材確保に対して、いかに対応していくのかが問われている。