今回、報告いただいたのは鎌倉で訪問医療マッサージ・鍼灸による在宅機能訓練、通所介護やケアプラン作成まで幅広い介護事業をおこなっている(株)アシスタンスの林秀卓(ひでたか)社長です。
一般的に介護事業は行政の規制のもと、サービス価格も介護保険で一律に決められているなどの理由で収益性の向上や他社との差別化が難しいビジネスとされています。
しかし、林社長は2004年創業以降、リーマンショック、東日本大震災といった大きな困難に遭遇してもコロナで若干減少したものの右肩上がりの売上を実現されています。例会ではその秘密を余すことなく語っていただきました。
介護事業所はケアマネージャー、看護師、理学療法士、鍼灸師など資格を持った様々な職種の人材で構成されていますが、業界特有のヒエラルキー意識が壁となって社員が一丸となって行動することが難しく、組織運営が大変難しかったとのこと。
ご自身の独りよがりな事業運営も相まって社員の離職も多く定着性の低い会社でした。これを解決すべく大学の後輩の社労士の助けを借りて「ESクレド経営」の構築に取り組みました。社員一人一人からこの会社での成功体験やお客様からの声や喜びの体験を提出してもらいESクレド委員会メンバー全員で分析・議論を通してキーワードを抽出し会社が目指す8つの行動および人材像をまとめ、社員の行動規範としました。
それまで、バラバラだった会社に一体感が生まれESクレド委員会を母体とした未來推進室が様々な企画を立案し推進していきました。林社長は一切、口を出さず社員にすべてまかせました。これにより、組織の変革に成功し社員の定着性向上だけでなく退職した社員も復職するような会社になりました。
右肩上がりの売上を実現した理由は大きく3つありました。
一つは事業の多角化。介護用具の貸与・販売だけでなく介護業界の人材を育成する資格取得講座や人材紹介分野まで広がっております。しかも、闇雲に多角化しているのではなくマーケティング分析をとおして自分たちの強みを活かし、差別化できる領域や方法を十分検討しておこないました。
二つ目は、地域の医師会や学会、福祉団体の研修や会合に頻繁に通うことにより人脈を拡げるとともに確実にビジネスに結びつけました。柳生家の家訓に「小才は、どんなすばらしい縁やチャンスに巡り会ってもそれに気づかない、中才は、そうしたチャンスに気づいても十分に活かすことができない、大才はどんなに小さな縁やチャンスでもそれを見逃さず、最大限に活かせる人」にあるように林社長は、まさに大才であり「社長の人脈は,社員の人脈」を合い言葉に最大限にビジネスに活用しています。
最後は、これらの施策を社長が一人で考え、社員に押しつけるのではなく未來推進室を中心に社員全員が考え,実行して「ESクレド経営」を実践していることです。社員一人一人が自らやるべきことを理解し自律的に行動できる組織ほど企業価値を向上させるものはありません。ESクレドはこのような事業拡大だけでなく、社員の評価制度での活用や福利厚生分野にも及んでいます。
社員の共感は社員の価値観と会社が目指す価値観が重なり合ったところからしか生まれません。
この重なった部分を如何に大きくすることができるかがESクレド経営の本質だと思いました。
(文責:ねもと社会保険労務士・行政書士事務所 根本 隆)