エレックス工業株式会社内藤岳史社長

現状維持を目指すということは衰退に向かうのと等しい。
10年前は想像もできなかったことを実現し、
常に上を目指し続けることが面白い―

技術は未来を開く

エレックス工業株式会社では、コンピュータ応用を中心とする電子機器・通信機器の開発及び製造を行っています。創業は1976年。電機メーカーで電話交換機の設計士をしていた父が、当時新技術として注目されていたマイクロ・コンピューティング技術に目をつけたのがきっかけです。「この技術を使えば世の中に役立つものがたくさん作れるに違いない」という父の予想通り、今では電波天文観測、情報通信、防災インフラ等の高速伝送処理技術の分野において弊社の技術が活用されています。

私が2代目として会社を継いだのは2015年の春です。それ以前は電機メーカーで技術者として働いていました。昔、父親が家の敷地をつぶして工場を建てたので、小さい頃の私の遊び場は工場でした。日常の中で電機製品に触れることが多かったので当たり前のように電機メーカーに就職しましたが、父親の会社を継いで経営者になるとは全く思っていなかったんです。

何で経営者なんかになりたいの?

私はずっと不思議に思っていました。「どうして起業なんてするんだろう?」と。経営者だった父は平日は工場、土日は付き合いのゴルフに出かけ、殆ど家にいません。たまに見かけるのは疲れて寝ている姿ばかり。子どもながらに「経営者ってよく分からないけど大変そうだなあ。あんなもん絶対にならん」と思っていたんです。

ところが技術者として働いて5年が経った時、父親から声がかかりました。「後継者に考えているからエレックス工業に入社せよ」と。社会人として長く働くと子どもの頃の純粋な気持ちは忘れてしまうのでしょうか。「まあいっか」と深く考えずに入社したんですね(笑)最初は技術者として働き、営業になって会社全体を学び、ついに会社を継ぐことが決まりました。

経営者になって半年くらいは「あれ?以前と何も変わらないぞ」と思っていました。優秀な技術者が集まっており、働くシステムも殆ど出来上がっているので、自分が特別何かしなくても上手く回っている印象でした。しかし、それは勘違いだったと気づくことになります。

問題は、全てが先代の社長である父親の頭の中にあったということです。理念や経営指針も無く、トラブルが起きたら社長に相談という流れで会社が回っていました。少人数であれば問題無いのですが、現在のエレックス工業株式会社には37名の社員がいます。今後も拡大を続ける予定なので、ある程度社内の仕組みは整える必要があり、自分が会社の方向性を決めて舵を取っていかなければいけません。私の一存で会社が動くのは怖い部分もありますが、やりがいを強く感じるところです。読みが当たると嬉しいですし、今では経営者として仕事に責任を持って取り組むことができています。

内藤 岳史社長@エレックス工業株式会社

社員の遊びから生まれた”PRISM”

私も技術者出身なので、ものづくりの楽しさはよく知っています。社員のみんなとアレコレ言いながら試行錯誤して良いものつくる過程は地味ですけど面白い。そんな面白さが、先日仕事に繋がりました。”PRISM”※1という超小型IoTセンサーモジュールの開発です。

“PRISM”の基盤サイズは9mm×5.2mmと小指の爪より小さいことが強みです。実はこれ、お客様から依頼されてつくったものではなく、社員間のお遊びで始まったんです。用途を何も考えずに「今の技術だとどこまで小さくできるのかな?」という純粋な探究心がきっかけでした。実際やってみると思いのほか小さくできたので、展示会に出品してみることに。すると思わぬ反響で2000人くらいの方が興味を持ってくださったんです。「これまだ買えないの?」という声に応えるために慌てて量産しました(笑)

このエピソードからも分かるように、エレックス工業株式会社は”オタク集団”です(笑)社員にオタクというと怒られますけど、みんな大学でずーっと電気や物理を勉強してきた理系ばっかりです。私たちが勝負する業界は常に目まぐるしく進化を続けています。現状維持は衰退という厳しさがあり、お客様から依頼された案件に期待以上の成果で応えるだけでは足りません。技術向上のために社内で試行錯誤することが必要なので、好きなことをとことん突き詰めたいオタクの人にはピッタリだと思いますね。

内藤 岳史社長@エレックス工業株式会社

経営者としての役割とは

私は経営者として「社員が生活に困ることなく、やりがいを持ち、和気あいあいと働き続ける職場」づくりを目指していますが、そこを目指すだけでは上手くいかないとも思ってます。社会で評価される実力をつけて、世の中に認められる結果を出さなければ望む環境がつくれないからです。

結果を出すためには「進化しよう」という意識を一人ひとりの社員がしっかりと持つことが求められます。もともとのポテンシャルよりも向上心を持ち続ける方がずっと大事。私たちは”新しいこと”をやっているので周囲にゼロから教えてくれる人はいません。情報を自力で集めて実験。専門誌をチェックするのは基本。ニュースで面白そうな開発が報道されていれば実際に足を運んでみたり、展示会で質問してみたり。時には社内の遊びから思わぬ発見が生まれることもあるので、好奇心や探究心が生まれるくらいの余白を残すというバランスも必要です。

私の役割は、社員みんなが働きやすい職場づくりと、社会に広く認められる技術を生み出すことの二軸です。経営者は結果を出さないと存在価値がありません。やらなきゃいけないことだけをやっていたら衰退。常にトライし続けていきたいと思います。

内藤 岳史社長@エレックス工業株式会社

お話を伺って・・・

「経営者になりたいと思ったことは一度も無かった」と仰る内藤様。俗に言う”意識が高い若者”の「起業したいが何をすべきか分からない」という悩みに対しては、「じゃあ起業はやめた方が良い」とバッサリ。「何かやりたくてしょうがないものがあれば起業は良いと思いますが、ただ『経営者になりたくて』という願望だけでは社員が可哀想です」と、経営の厳しさも知っているからこその言葉をいただきました。では、「自分の好きなものはどうやって見つけるのか?」内藤様はすぐに見つけられたのかと思いきや、「全然ですよ。昔は長髪のバンドマン。音楽で食べていこうと思ったけど挫折しましたから」と笑って話してくださいました。コレというものを見つけるためには挑戦と失敗を繰り返すことが必要だと改めて思ったインタビューでした。


超小型IoTセンサーモジュールPRISM※1
IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)システム構築に、PRISMを利用することが出来ます。例えば、製品にPRISMを組み込むことで、その製品に関するセンサーデータを取得し、 そのデータをインターネット上のクラウドサービスに蓄積し、さらに解析・可視化を行うことで、 サービスとしての提供や、製品のフィードバックとして利用することが考えられます。PRISMは、「センサーのデータを集めてBLEで出力する役割」を担うことになります。(ホームページより抜粋)
http://www.elecs.co.jp/ElecsIndustry/prism/


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