前年同期比では、経常利益 DI 以外の項目で減少した。次期見通しでは回復している項目もあるが、数値が伸び悩んでいる。
業種別をみると、製造業の売上高 DI、経常利益 DI の数値が低い。
一方、全業種における今期に設備投資を実施したと回答したのは 44.2%、次期に設備投資を計画していると回答したのは 51.7%であった。
【調査要領】
※文章中の DI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。
玉川大学経営学部准教授 長谷川英伸
全業種の売上高 DI は、前年同期比で 26(前回調査時、以下省略)→12 の 14 ポイント減少、次期見通しは 23→21 の 2 ポイント減少となっている。
各業種の DI は下記の図表 1 の通りである。前年同期比では、建設業の 8→18 の 10 ポイント増加、製造業の 17→△2 の 19 ポイント減少、情報・流通・商業の 24→35 の 11 ポイント増加、サービス業の 33→14 の 19ポイント減少となっている。
次期見通しでは、建設業の 42→40 の 2 ポイント減少、製造業の 29→0 の 29 ポイント減少、情報・流通・商業の 13→39 の 26 ポイント増加、サービス業の 17→29 の 12 ポイント増加となっている。
建設業の前年同期比の売上高 DI が 18 と回復し、次期見通しでも 40 とさらに大きくなっている。
製造業の前年同期比の売上高 DI が△2 で、次期見通しでは 0 と若干増加している。
情報・流通・商業の前年同期比の売上高 DI が 35 で、次期見通しでも 39 と数値を伸ばしている。
サービスの前年同期比の売上高 DI が 14 で、次期見通しでも 29 と増加している。全業種のなかで、製造業は他業種よりも数値が低く、次期見通しでも数値が伸び悩んでいる。
次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益 DI は、前年同期比で 5→8 の 3 ポイント増加、次期見通しは 20→14 の 6 ポイント減少となっている。
各業種の DI は下記の図表 2
の通りである。建設業は、前年同期比が 25→△18 の 43 ポイント減少で、次期見通しでは、58→10 の 48 ポイント減少となっている。
製造業は、前年同期比が 0→△2 の 2 ポイント減少で、次期見通しでは、19→0 の 19 ポイント減少となっている。
情報・流通・商業は、前年同期比が 29→25 の 4 ポイント減少で、次期見通しでは、13→33 の 20 ポイント増加となっている。
サービス業は、前年同期比が△3→15 の 18 ポイント増加で、次期見通しでは、16→18 の 2 ポイント増加となっている。
前年同期比では、建設業は△18 で、次期見通しが 10 となっているものの、数値が落ち込んでいる。
製造業では、前年同期比が△2 で、次期見通しは 0 と数値が若干増加している。
情報・流通・商業では、前年同期比が 25 で、次期見通しは 33 と増加している。
サービス業では、前年同期比が 15 で、次期見通しは 18 となっており、若干増加している。
経常利益DIは、前年同期比において建設業、製造業の数値がマイナス水準となっており、特に建設業の数値が低い。
経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準 DI でみていく。
全業種の DI は 40→32 の 8 ポイント減少、建設業は 20→40 の 20 ポイント増加、製造業は 46→35 の 9 ポイント減少、情報・流通・商業は 47→53 の 6 ポイント増加、サービス業は 36→17 の 19 ポイント減少している。
全業種のなかで、情報・流通・商業の数値が一番大きく、サービス業の数値は大きく減少している。
次に業況水準についてみていく。全業種の DI は 12→3 の 9 ポイント減少、建設業は 38→0 の 38 ポイント減少、製造業は 15→△7 の 22 ポイント減少、情報・流通・商業は 18→21 の 3 ポイント増加、サービス業は 2→5 の3ポイント増加している。製造業の数値はマイナス水準に落ち込み、建設業は下げ幅が大きい。情報・流通・商業は他業種よりも数値は高いが、伸び悩んでいる。
業況判断では、全業種の前期比は 28→3 の 25 ポイント減少、前年同期比は 27→5 の 22ポイント減少、次期見通しは 32→15 の 17 ポイント減少となっている。
建設業の前期比は33→0 の 33 ポイント減少、前年同期比は 33→9 の 24 ポイント減少、次期見通しは 67→18の 49 ポイント減少となっている。
製造業の前期比は 37→△13 の 50 ポイント減少、前年同期比は 31→△18 の 49 ポイント減少、次期見通しは 26→△9 の 35 ポイント減少となっている。
情報・流通・商業の前期比は 18→40 の 22 ポイント増加、前年同期比は 35→35 の横ばい、次期見通しは 29→35 の 6 ポイント増加となっている。
サービス業の前期比は 22→7 の 15 ポイント減少、前年同期比は 19→14 の 5 ポイント減少、次期見通しは 29→28の 1 ポイント減少となっている。
情報・流通・商業は、他業種よりも数値が高く、製造業が低く、業種間格差が拡大している。
経常利益が増加した理由として 1 番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の 52.6%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の 28.1%、「人件費の低下」の 10.5%であった。
一方、経常利益が減少した理由で 1 番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の 30.8%であった。次いで「人件費の増加」の 23.1%、「原材料費・商品仕入額の増加」の 15.4%であった。
経常利益が増加した理由として、「人件費の低下」の割合が上位となっている一方、経常利益の減少理由として、「人件費の増加」も上位にあがっている。
設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。
今期に設備投資を実施したと回答したのは全体の 24.8%→44.2%、次期に設備投資を計画していると
回答したのは 26.1%→51.7%であった。設備投資を実施した割合が約 4 割で、次期見通しの実施計画がある割合は 5 割を超えている。
設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、「広告」が 17.7%、「設備機器」、「採用」が 17.6%、「情報システム」が 13.2%、で上位を占めていた。次期の設備投資計画では、「採用」が 21.5%、「設備機器」、「広告」が 17.7%、「情報システム」が 12.7%が上位となった。
資金繰の状況について、現在の資金繰の状況をみていく。
資金繰の状況に関しては、余裕ありが 15.5%→10.7%、やや余裕が 12.4%→28.1%、順調が 33.5%→27.3%、やや窮屈が28.6%→24.8%、窮屈が 9.9%→9.1%となっている。
余裕ありとやや余裕と回答した企業割合からやや窮屈、窮屈と回答した企業割合を引いた資金繰 DI は、△11→5 の 16 ポイント増加している。
現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位 3 つまでを選び回答したものである。
1 番高い割合を示したのが、「従業員不足」の 21.1%で、次いで「人件費の増加」の 19.4%、「同業者相互の価格競争の激化」の 11.9%となっている。従業員不足は、事業運営に大きな支障をもたらし、人材確保のための費用(賃上げ、求人広告等)が経営を圧迫させている。
経営上の重点では各企業上位 3 つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「付加価値の増大」は 18.5%、「新規受注(顧客)の確保」は 17.1%、「人材確保」は 14.1%となっている。付加価値や新規開拓は、経営基盤を強化するために、必要な項目であり、それらを実現させていくための人材確保はさらに重要となる。
今回の特別質問では、事業承継に関する項目について行った。結果をみていくと、まず、事業承継の有無等の項目では、「検討中」は 36.7%、「承継中」は 10.0%、「既に承継した」は 17.5%、「考えていない」は 33.3%、「M&A」は 2.5%、「廃業予定」は 0.0%であった。
既に行った項目についての項目では、「親族内で承継」は 33.3%、「親族外で承継」は19.4%、「M&A」は 3.2%、その他は「44.1%」であった。
予定している項目についての項目では、「親族内で承継」は 18.1%、「親族外で承継」は33.3%、「M&A」は 10.5%、廃業は 2.9%、「その他」は 35.2%であった。
自社における事業承継の課題についての項目では、「後継者育成」は 58.6%、「後継者不足」は 17.2%、「税金」は 13.8%、「株式・事業用資金」は 0.0%、「金融関係」は 6.9%、「その他」は 3.4%であった。
以上の結果をまとめてみる。事業承継の有無等では、事業承継を検討中、承継中、既に承継した、の割合を足すと、約 6 割存在している一方、考えていない割合が約 3 割存在している。
既に承継した相手に関しては、親族内が約 3 割になっており、親族外は約2割、M&A は約 1 割となっている。既に承継した相手に関しては、親族外が約2割だが、予定になると親族外の割合が約 3 割となっている。
自社における事業承継の課題については、後継者育成の一番割合(58.6%)が高く、後継者不足の割合(17.2%)と大きな差が生じている。