中小企業経営者が日々、経営に取り組む際のモチベーション、エネルギーの源泉はなんでしょうか?
名誉・金銭欲求もあれば、社会的な使命感、幼少の頃からの夢の実現など様々だと思います。
今回、報告いただいたのは平塚と横浜でレストランを経営され、加えてフードデリバリーやレストランを企画するフードプロデュースを手がけているエスプリ・デキップの相山社長です。ご本人は料理人を目指して専門学校に入られたそうですが、就職されたミシュランの星付レストランでホールサービス接客業の面白さに惹かれ、ついには独立される前まではオーベルジュオーミラドで事業運営全般をまかされる統括支配人までになられました。
オーベルジュオーミラドは芦の湖畔にある西洋のお城のような宿泊施設付の有名なレストランでTVなどでも広く紹介されています。そんな彼が、独立起業されたのはオーナーシェフとの衝突から「こんちくしょう、負けてたまるか!」といったご本人の言葉を借りれば、負のエネルギーによるものでした。
創業期は数々のマーケティング施策があたり行列ができるお店で評判となり、地域の農家とのコラボやシュークリームなどのスイーツにも進出しました。ワンマン、トップダウン型経営の典型でした。しかし、自社の経営や人材育成を怠り、自分がコントロールできない外部組織や環境にエネルギーをとられるあまり急速に経営は悪化します。
シュークリームのお店は8ヶ月で撤退、外部パートナーの不動産賃借料の未払い、負債の返済、退職者続出などで損益分岐点が月商640万までになってしまいました。
こんな状況を救ったのはJR東日本のリゾート列車へのケータリングサービスを受注したことでした。
ここで初めて自身の経営スタイルの過ちに気づきます。家族はもとより社員や取引先を大切にし、今までお世話になった方々への感謝を忘れないポジティブなエネルギーに変えて創業時の経営理念にもとづき経営することに舵をきりました。
社名のエスプリ・デキップは「チームワーク」のフランス語だそうです。創業の時からの理念を忘れていたのです。
現在、理念経営転換期として100年続く企業ビジョンを掲げ、それにもとづく社員研修やコミュニケーションの活性化に努め、ボトムアップ、チームワーク、利他の精神が満ちた会社を目指しています。
コロナはご多分に漏れず相山さんのレストランを直撃しており、その影響は今も完全復活とはいえない厳しい状況が続いています。それでも相山さんは前向きに、ポジティブなエネルギーで経営に邁進されております。
(文責:ねもと社会保険労務士・行政書士事務所 根本隆)