令和5年度県南支部総会・特別総会は、(株)ユサワフードシステム代表取締役の湯澤剛 氏に報告をしていただきました。
「40億円の借金を16年で完済したのに、なぜM&Aをしたのか。
『借金さえなければ、いい会社を作れる』と思ったのにうまくいかない。今までは借金を返済するために会社を経営していたが、いざ借金を完済したらお金の使い方が分からなかった。」
借金がゼロになったったら、勇気をもって投資することが必要と思いつつもいろいろとうまくいかないことがあった。
事業承継の選択肢としては、以下が挙げられる。
5のIPOは、株主、金融機関等のステークホルダーとの調整が大変で、うまくいかないときは社員が離反するリスクがある。
1の親族内承継は、子供に継がせようと思ったが、妻に「これだけは子供の思うようにしてほしい」と言われた。まだ、大学生・高校生だったこともあり、自分の望む道を歩ませるべきだと気づいた。
2の社員承継は、会社を3分割して3人で運営するように実行した。管理部門をホールディングス化して、3人の候補を育成。しかし、経営者に求められる能力と幹部に求められる能力が違うことに気づいたが、結果的に3人のうち2人が退職してしまった。また、中小企業特有の問題かもしれないが、所有と経営の分離、つまり株式の問題がある限り、社員承継は難しいことに気づいた。
3の後継社長招聘は2人にお願いしてみた。1人目の元ゼネコン幹部はとてもいい人だったが、飲食店の現場が分からず、挫折。2人目の外食上場企業元役員は、紹介料を300万円支払ってお願いしたが、いろいろあって任せられなかった。結局は、自分と同じようにやってくれる人など存在しないと気づいた。
結局、残された道はM&Aだった。具体的には、会社分割型M&Aで元の会社を売却した。40年以上続いた会社だったが、契約のまき直し等難しく、新会社を残すことにした。
同業種に売却するのが一番安くなる。それは実情がよくわかるからだが、結果的に一番安い提示額だった同業者に売却した。
事業承継を行ううえで最も大切なことは、「企業価値の向上」がすべてであるということ。
M&Aで引く手あまたの会社にする=社員や親族が継ぎたい会社にする
社員や親族が継ぎたい会社にする→事業承継のプラスになる
経営者として、いかに企業価値を上げることが大切かについて考えさせられる報告でした。自社をM&Aしたことについて、各方面からバッシングもあったようですが、売却先の風土に合わなかった社員を戻したり、独立したい社員の背中を押したりと、まさに同友会運動の手段としてのM&Aの話を伺うことができました。
(文責:株式会社天・地・人 代表取締役 中筋悠貴)