横浜・川崎・横須賀・小田原・厚木・湘南など神奈川県各地で社長が共に経営の勉強を行い、社員とともに発展する会社を創ります
神奈川県中小企業家同友会
10:00〜18:00(月〜金)

神奈川同友会景況調査報告(KD レポート) (2025年1~3月期)

主要な指標は増減の差が存在し、全体的な傾向としては数値が伸び悩んでいる。サービス業は停滞傾向にある。設備投資の割合は、増加している。経営課題は、従業員の不足、人件費の上昇、仕入単価の上昇となっている。

  • 前年同期比では、売上高DIは減少、経常利益DIは増加。次期見通しにおいては、売上高DI、経常利益DIともに減少。サービス業においては、前年同期比の売上高DI、経常利益DIが落ち込んでいる。今期の業況水準DIが0、業況判断DIが前期比の9、前年同期比の21、次期見通しの23である。
  • 今期、次期の設備投資の実施企業は前回調査時より割合が増加。今期の設備投資の内訳では「採用」、「設備機器」、「情報機器」という順で割合が高い。
  • 資金繰の状況では、△6→△3になっている。
  • 経営上の問題は、「従業員の不足」、「人件費の増加」、「仕入単価の上昇」の順に割合が高い。一方、経営上の力点として、「付加価値の増大」、「新規受注(顧客)の確保」、「人材確保」が上位となっている。
  • 今回のKDレポートの特徴としては、設備投資の割合が増加していることである。特別質問では、原材料価格の上昇率が高くなっている。

【調査要領】

  1. 調査時 2025月1月15日~4月25日
  2. 対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
  3. 調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAX によるアンケート
  4. 回答企業数    926社より147社の回答を得た(回答率15.8%)
    (建設業14社、製造業41社、情報・流通・商業23社、サービス業69社)
  5. 平均社員数 ①正規社員19.5人 ②パート・アルバイト6.6人

※文章中のDIとは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

神奈川県中小企業家同友会の景況調査 〜概況報告〜

日本大学商学部准教授 長谷川英伸

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準・業況判断

1-1. 売上高

全業種の売上高DIは、前年同期比で28(前回調査時、以下省略)→23の5ポイント減少、次期見通しは25→21の4ポイント減少となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。前年同期比では、建設業の16→21の5ポイント増加、製造業の21→10の11ポイント減少、情報・流通・商業の6→39の33ポイント増加、サービス業の41→26の15ポイント減少となっている。次期見通しでは、建設業の5→7の2ポイント増加、製造業の27→18の9ポイント減少、情報・流通・商業の△6→17の23ポイント増加、サービス業の37→28の9ポイント減少となっている。同時期に調査した中同協のDORでは、前年同期比の売上高DIは13、次期見通しでは12となっている。また、埼玉同友会の結果は、前年同期比の売上高DIは27、次期見通しでは23である。

全業種における前年同期比の売上高DIは23、次期見通しでは21となっているので、数値は回復していない。建設業の前年同期比の売上高DIが21、次期見通しでは7となっており、数値は減少している。製造業の前年同期比の売上高DIは10、次期見通しでは18となっているので、数値が増加している。情報・流通・商業の前年同期比の売上高DIが39、次期見通しでは17となっており、数値は落ち込んでいる。サービスの前年同期比の売上高DIが26、次期見通しでは28と数値が回復している。

図表 1   売上高DI 値

KDレポート
1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益DIは、前年同期比で13→16の3ポイント増加、次期見通しは17→13の4ポイント減少している。各業種のDIは下記の図表2の通りである。建設業は、前年同期比が5→0の5ポイント減少、次期見通しでは、16→△14の30ポイント減少している。製造業は、前年同期比が9→7の2ポイント減少、次期見通しでは、17→10の7ポイント減少となっている。情報・流通・商業は、前年同期比が△6→26の32ポイント増加、次期見通しでは、6→9の3ポイント増加となっている。サービス業は、前年同期比が22→20の2ポイント減少、次期見通しでは、20→22の2ポイント増加となっている。同時期に調査した中同協のDORでは、前年同期比の経常利益DIは3、次期見通しでは、0となっている。また、埼玉同友会の結果は、前年同期比の経常利益DIは14、次期見通しでは13である。

全業種における前年同期比の経常利益DIは16、次期見通しでは13となっているので、数値が減少している。建設業では、前年同期比が0、次期見通しでは△14と数値が水面下に落ち込んでいる。製造業は前年同期比が7、次期見通しは10と数値は増加している。情報・流通・商業では、前年同期比が26、次期見通しは9と数値は伸び悩んでいる。サービス業では、前年同期比が20、次期見通しは22と回復している。

図表 2   経常利益DI 値

KDレポート
1-3. 経常利益の水準・業況水準・業況判断

黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益の水準DIに関しては、全業種のDIは32→30の2ポイント減少、建設業は47→46の1ポイント減少、製造業は12→20の8ポイント増加、情報・流通・商業は28→43の15ポイント増加、サービス業は42→29の13ポイント減少している。全業種のなかで、特にサービス業は大きく減少している。同時期に調査した中同協のDORでは、採算水準DIは32、埼玉同友会は37である。

次に業況水準についてみていく。全業種のDIは6→0の6ポイント減少、建設業は32→7の25ポイント減少、製造業は△17→△20の3ポイント減少、情報・流通・商業は11→17の6ポイント増加、サービス業は12→4の8ポイント減少となっている。製造業の数値が最も低くなっている。同時期に調査した中同協のDORでは、業況水準DIは△3、埼玉同友会は6である。業況判断では、全業種の前期比は31→9の22ポイント減少、前年同期比は18→21の3ポイント増加、次期見通しは29→23の6ポイント減少している。同時期に調査した中同協のDORでは、前期比の業況判断DIは△6、前年同期比の業況判断DIは3、次期見通しの業況判断DIは3である。また、埼玉同友会は前期比の業況判断DIは17、前年同期比の業況判断DIは21、次期見通しの業況判断DIは20である

建設業の前期比は42→36の6ポイント減少、前年同期比は26→7の19ポイント減少、次期見通しは47→7の40ポイント減少となっている。製造業の前期比は26→△13の39ポイント減少、前年同期比は19→15の4ポイント減少、次期見通しは33→25の8ポイント減少となっている。情報・流通・商業の前期比は17→13の4ポイント減少、前年同期比は △11→9の20ポイント増加、次期見通しは11→13の2ポイント増加となっている。サービス業の前期比は34→14の20ポイント減少、前年同期比は24→30の6ポイント増加、次期見通しは26→29の3ポイント増加となっている。製造業は、前期比の数値が大きく減少している。

2. 経常利益が増加した理由、減少した理由

経常利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の46.9%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の27.2%、「人件費の低下」、「その他」の7.4%であった。一方、経常利益が減少した理由で1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の36.0%であった。次いで「原材料費・商品仕入額の増加」の18.7%、「人件費の増加」の14.7%、であった。

経常利益が増加した理由としては、「売上数量・客数の増加」、「売上単価・客単価の上昇」が多くを占めている。経常利益が減少した理由では、「原材料費・商品仕入額の増加」、「人件費の増加」の割合が大きい。

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期に設備投資を実施したと回答したのは全体の39.9%→43.5%、次期に設備投資を計画していると回答したのは39.9%→41.5%であった。今期の設備投資を実施した割合は、前回の調査結果と比較すると割合が増加し、次期に設備投資を計画している割合も4割を超えている。今

期の設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別(上位3位)にみてみると、「採用」の24.3%、「設備機器」の15.3%、「情報機器」の14.4%、となっている。次期の設備投資計画では、「設備機器」の24.2%、「採用」の22.0%、「広告」、「その他」の11.0%という結果になった。今期、次期ともに、「設備機器」、「採用」の割合が上位を占めている。

資金繰の状況について、現在の資金繰の状況をみていく。資金繰の状況に関しては、余裕ありが20.3%→20.4%、やや余裕が11.5%→17.7%、順調が30.4%→21.1%、やや窮屈が31.8%→28.6%、窮屈が6.1%→12.2%となっている。余裕ありとやや余裕と回答した企業割合からやや窮屈、窮屈と回答した企業割合を引いた資金繰DIは、△6→△3の3ポイント増加している。資金繰は数値が増加している。同時期に調査した中同協のDORでは、資金繰りDIは10、埼玉同友会は△15である。

4. 現在の経営上の問題点・重点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員の不足」の18.7%、次いで「人件費の増加」の17.0%、「仕入単価の上昇」の10.7%となっている。今回の結果は、前回調査時と同じ項目となっている。

経営上の重点では各企業上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「付加価値の増大」の19.4%、「新規受注(顧客)の確保」の18.4%、 「人材確保」の14.6%となっている。付加価値の増大に取り組んでいる会員企業が多いことがわかる。

5. 特別質問の結果について(無回答は除く)

今回の特別質問では、自社の現況(昨年同時期との比較)に関連する項目が設定されている。結果をみていくと、まず、原材料の価格に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「1~5%上昇した」は43.5%→33.3%、「6~10%上昇した」は27.2%→29.9%、「11%以上、上昇した」は8.2%→15.0%、「減少した」は1.4%→1.4%、「変化なし」は、19.7%→20.4%となっており、「11%以上、上昇した」の割合が増加傾向にある。

次に社員(アルバイト・パートを含む)賃金に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「1~2%上げる・上げる予定」は29.9%→27.9%、「3~5%上げる・上げる予定」は42.9%→43.5%、「6%以上、上げる・上げる予定」は15.0%→11.6%、「変化なし」は11.6%→16.3%、「下げた」は0.7%→0.7%となっており、「3~5%上げる・上げる予定」の割合が最も高い。次に多様な人材の雇用(採用)に関する項目(複数回答可)(前回調査時と同じ項目)では、「高齢者を採用した」は15.8%→15.1%、「若年者を採用した」は31.1%→26.8%、「障害者を採用した」は5.1%→6.1%、「外国人を採用した」は9.0%→10.1%、「採用したくても出来なかった」は11.3%→11.7%、「採用は実施していない」は25.4%→24.6%、「その他」の2.3%→5.6%となっており、「障害者を採用した」、「外国人を採用した」の回答割合が増加している。

次に経営者保証(個人保証)に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「外れた」は25.3%→27.2%、「外れていない」は53.4%→46.9%、「経営者保証に関するガイドラインを知らない」は21.2%→25.9%となっており、「外れた」と回答している割合が増加している。

次に労働環境の整備(労働安全衛生法)に関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「取り組んでいる」は72.3%→68.0%、「取り組んでいない」は18.9%→18.4%、「労働安全衛生法を知らない」は8.8%→13.6%となっており、「取り組んでいる」の割合が減少している。

次に外部環境について影響があるものに関する項目(複数回答可)では、「金融情勢(円安・株高など)」は33.2%、「世界情勢(ウクライナ・イスラエル・中国など)」は23.1%、「トランプ関税」は17.8%、「影響はない」は19.2%、「その他」は6.7%となっている。「その他」の自由記述では、銀・銅・アルミ等の価格上昇、コロナ後における産業またはビジネススタイルの変遷、公共投資といった回答があった。

最後に脱炭素・SDGsに関する項目(前回調査時と同じ項目)では、「取り組んでいる」は52.0%→45.5%、「取り組んでいない」は48.0%→55.5%となっている。「取り組んでいない」の回答割合が増加している。

以上の景況調査結果を振り返ると、DIは全体的には減少傾向にあり、業況判断における前期比の数値が大きく落ち込んでいる。特別質問の回答をみると、前回調査時とほぼ同じ回答項目となっており、各項目で増減がみられた。今後の景況を考えるうえで、関税に伴う国際経済の動向を注視する必要があるだろう。