横浜中央支部6月例会は、『その課題、同友会で解決できませんか?』と題し、「コラボレーション」をテーマに開催しました。
外部環境が目まぐるしく変わり続ける昨今、自社の経営資源のみでそれらに対応するには限界がある、というのが実際のところではないでしょうか?まして経営資源が乏しい中小企業・小規模事業者となれば尚のことです。
そのような環境下で私たちが今、優先的に考えるべきことの一つがコラボレーションなのではないかと思います。
そこで今回は、先進的にコラボレーションを実践しているお二人の経営者に貴重な事例を報告していただきました。
株式会社サクセスフルエイジングサポート・代表取締役で保健師の金原嘉子氏は、看護師として大学病院の集中治療室で勤務、行政機関では地域住民の健康支援という業務経験を経て2017年4月にフリーランスとして起業。
2020年1月に株式会社サクセスフルエイジングサポートを設立します。
「人々の『健幸』と『自分らしい生き方』の実現に貢献する」という理念のもと、健康相談、メンタルヘルス対策、育児・介護・治療との両立支援などなど、幅広い業務を展開しています。
その中の主力業務の1つ、「スマートダイエットR事業」は特に思い入れの強い事業で、行政機関に勤めていた当時、予算もついていない中、半ば強引に事業化してしまったほどだそうです。
実際に同事業を受けダイエットに成功した人たちからは
「人生が変わりました」「これで娘の結婚式に着物を着て堂々と参列できます」「家に引きこもりがちだったけど気持ちが前向きになり外出する意欲が出てきました」
「私はもうやせられないんだとあきらめていました」などなど、人生が変わった喜びに満ちた感想を多数いただいているそうです。
一方で、行政機関に勤めていた当時と独立起業した現在では同じように行くことばかりではなく、中でも顕著だったのが「集客」だったそうです。
同じ企画であっても行政主催であれば容易に集客できたはずが、一個人の事業ではそうもいきません。そんなジレンマを抱えていた頃、同友会を知り、入会をします。
同友会には2021年に入会したものの、子育て中のためZOOMでの参加が多く、懇親会にも参加にしくいのが実情で、「会を活かせていない」という思いが常にあったそうです。
そんな中でも、幹事からの誘いで例会づくりに参加してみる、入会の翌年には幹事になるなど、自分なりのスタイルで会の活用方法を見出していきます。
そのような地道な積み重ねが功を奏し、ある時、榎本副代表から、金原さんと同友会の元会員である卯月由美氏を紹介されます。
それがきっかけとなり、同じ横浜中央支部の幹事で、事務所の近くで店舗を経営する「くらしの器と自然食品 匣」の重田氏とのコラボ案が浮上します。
「くらしの器と自然食品 匣」では店舗の一角を提供するサービスを行っており、それを活用していた卯月氏が金原氏に情報を提供してくださいました。
従来から、事務所や店舗を持たない自社に、お客様が立ち寄れないという弱みを感じていた金原氏は、ここにチャンスを見出します。
それがあることで、接触する機会を生み出せなかった「個人との接点」が生まれ、弱みであった「お客様が立ち寄れる場所」ができます。
これを機に、金原氏は同店の店頭で「無料健康相談会」を、2階のレンタルスペースで「スマートダイエットR教室」を展開します。
一方、重田氏も単にスペースを貸し出すだけでなく、「もっとこうしてみては?」と改善案を提供したり、店舗の前でポスターを見る人に声を掛けたり、という協力を惜しみません。
店舗で声を掛けられ申し込みをした人の中には、1ヶ月で3kg減、1ヶ月半で血圧、コレステロール、中性脂肪の値が改善された人もいるそうです。
このように、まだまだ始まったばかりではありますが、相互の努力によって良い方向に動き出しているコラボレーションの今後について金原氏は
「参加者が例え1人でも、参加したいという人、必要としてくれる人がいる限りコツコツ続ける」「今だからこそできるチャレンジ!」「自社の理念の原点であるスマートダイエットRを必要としている人に届ける」「気持ちがめげることは多々あるが、同友会で学びながらスマートではなくても 試行錯誤を繰り返していく」と宣言し、報告を終えました。
弥侑feel代表・門倉侑美氏は、20代で結婚・出産・離婚という経験を経て、不思議なご縁に引き寄せられるように、神奈川同友会・前代表理事・水口勉氏が新設した株式会社テラサポートに入社し、幹部社員として従事します。
約1年後、水口氏の薦めで同友会にに入会。同時に、青年部の幹事会に入りますが、要領を得られない門倉氏は、そのまま幽霊会員になってしまいます。
それから過ぎること2年、青年部幹事の石渡壮氏が門倉氏を例会づくりに誘います。それを機に門倉氏の同友会活動が改めてスタートします。
とは言え、充実していた会社の業務とは裏腹に、同友会の活動は相変わらず要領を得られず、社員教育委員会の幹部研修などは「苦」でしかありませんでした。
しかし、その中での他社の幹部との交流や講師の話の中などから、今後の自分を考え直すようになりました。
以後、青年部を中心に、同友会へも積極的に参加するようになり、青年部の一大行事、『関東甲信越フォーラム in 神奈川』では会計として従事しました。
仕事も同友会活動も充実してたある時、大きな転機が訪れます。経営者であり大恩人である水口氏の祖業である株式会社ミズグチに移籍することになります。
移籍自体も大きな出来事ではありましたが、それ以上に大きな転機となったのは、門倉氏が見た「未来」でした。それまで、門倉氏は常に想いを水口氏と共にしており、その未来も同じくでした。
しかし、移籍後、自分が描く未来への想いが強くなり、新たな道を模索しつつ、その心中を率直に水口氏に伝えた結果、「独立」という道を選択することになりました。
そして、門倉氏が独立を選んだ理由がそれとは別にもう一つ、ありました。愛しくてたまらない妹の子どもの急逝です。それは、天使のような笑顔を写真に収めた翌日の出来事でした。 その幼い命が奪られる矛盾に与えらえれた苦悩もまた、独立への大きなきっかけとなったそうです。
かくして誕生した弥侑feel。弥侑feelの「弥」は弥勒菩薩から、「侑」は自身の名前でもあり、勧める・助けるという意味から、そして「感じる」という意味の「feel」を「ミルフィーユ」の音感になぞらえて名付けたそうです。
弥侑feelの理念は「想いを重ね人生を豊かにする」、主な業務はテラサポート入社以来、蓄積した知識やノウハウをフル活用した終活コンサルティングと、妹の子どもを亡くしたことを機に取得したグリーフケアアドバイス。
実務経験や取得した資格を活かした業務である一方、顧客視点でそれらの業務を見た時、自身の知識やノウハウだけでは提供できないことが多々あることに気づきます。
「もっとサポート力を強化しなければ」と思い、相談相手に選んだのが同友会。一人は恩師、水口氏。お墓関連について業務提携という形で協力を得ます。
もう一人は青年部で共に活動をしてきた横浜綜合行政書士事務所の藤森氏。法律関連について、水口氏と同じく業務提携というコラボレーションが生まれます。
また、藤森氏とのコラボを機に、藤森氏の妻・智子氏とのご縁も生まれます。智子氏は株式会社 青山プラスチック塗装の取締役であり、同社で手が回らなくなっている事務処理業務を委託されます。
これを機に、そもそも現在も寺院に常駐し、事務処理等を行っている門倉氏にとって、新たな事業展開の芽が生じました。
報告の最後に、今後について「個人それぞれが主体者として自主性をもち、共に生きていける環境づくり」「敬意をもって尊重し合い、平等に自然体でいられる仲間づくり」「相互に強み弱みを補い合い、頼り頼られる存在になるための組織づくり」を軸に事業を展開していく、という宣言をして報告を終えました。
コラボレーションを行う際に重要なポイントの1つは、経営資源です。主には自社に不足している経営資源を補足・補強しあえる関係を構築できることがコラボレーションを成功させる大きな要因と言えそうです。
一方で、それさえ条件が整えばコラボレーションが上手くいくかと言えば、必ずしもそうではなく、それ以上に大切かもしれないポイントを学びました。
金原氏のコラボのパートナーである重田氏は「コラボは相手によって既存客を失うリスクさえある」「金原さんの人柄や取り組みの姿勢に共感できるのでコラボが成立している」と言います。
同じく、門倉氏のコラボのパートナーである藤森氏は「門倉さんと青年部という共通の体験があったからコラボできた」と言います。
つまり、お互いの感性や価値観、あるいは世界観、目指している方向性に共感できることこそがコラボレーションを成立させるために必要不可欠な要素であると言えそうです。
私自身、日々の同友会活動の中で、様々な経営者とご一緒させていただいていますが、それら全てが「共感のアンテナ」を磨く良い機会なのかもしれません。
また、感性や価値観、あるいは世界観が凝縮されて表現されているのが経営理念や10年ビジョンとも言えます。
今後、コラボレーションを検討する際の判断材料の一つとして、自社と先方のそれらの相性を探るのも良いかもしれません。
最後に、今回の例会での象徴的な成果として、報告者お二人のコラボレーションの企画が例会当日に誕生したことを報告しつつ、続報を楽しみにいたします。
また、今回はお二人から素晴らしい事例をご報告いただきましたが、限られた時間でのお二人からの報告であったため、「どちらの話ももう少し聴きたい」ということも否めません。 次の機会には、各々の単独のご報告を楽しみにしています。
(文責:合資会社笑う門 代表社員 山田浩和氏)