横浜・川崎・横須賀・小田原・厚木・湘南など神奈川県各地で社長が共に経営の勉強を行い、社員とともに発展する会社を創ります
神奈川県中小企業家同友会
10:00〜18:00(月〜金)

神奈川同友会景況調査報告(KD レポート) (2020 年 1~3 月期)

売上高 DI、経常利益 DI は、水面下となった。
経常利益の水準 DI、業況 水準 DI、業況判断 DI をみると軒並み、大きく減少している。
各主要項 目の次期見通しは、著しく悪化している。
業種別では、製造業の各主要 項目で減少しており、情報・流通・商業、サービス業の売上高、経常利益 DI の次期見通しの数値は、大きく落ち込んでいる。

  • 前年同期比では、売上高 DI、経常利益 DI が減少している。次期見通しにおいては、売上高 DI、経常利益 DI 共に大きく減少している。業種別では、建設業は他業種よりも数値が高い。次期見通しでは、全業種で顕著に数値が落ち込んでいる。今期の業況 水準 DI が△24、業況判断 DI が前期比の△12、前年同期比の△14、次期見通しの△57である。
  • 今期、次期の設備投資の実施企業は3割強となっている。今期の設備投資の内訳では「設備機器」、「情報機器」、「採用」という順で割合が高い。
  • 資金繰の状況では、14→△18 と悪化している
  • 経営上の問題は、「人件費の増加」・「従業員の不足」、「民間需要の停滞」の順に割合が高い。一方、経営上の力点として、「新規受注(顧客)の確保」、「付加価値の増大」、「既存客のフォロー」が重要視されている。
  • 前回のKDレポートの結果と比較して、全業種の主要項目で数値が減少している。新型コロナウイルスの影響が景況結果に表れている。特に次期見通しにおいては、主要項目の数値が著しく減少しており、今後の景気悪化によって、会員企業の経営基盤を大きく揺るがすことになるだろう。

【調査要領】

  1. 調査時 2020月3月15日~4月15日
  2. 対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
  3. 調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)と FAX、Google フォームによるアンケート
  4. 回答企業数 814社より155社の回答を得た(回答率 19.0%)
    (建設業10社、製造業54社、情報・流通・商業20社、サービス業68社、不明3社)
  5. 平均社員数 1.正規社員21.1人 2.パート・アルバイト10.5 人

※文章中の DI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
~概況報告~

玉川大学経営学部准教授 長谷川英伸

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準・業況判断

1-1. 売上高

全業種の売上高 DI は、前年同期比で 14(前回調査時、以下省略)→△4 の 18 ポイント減少、次期見通しは 20→△47 の 67 ポイント減少となっている。
各業種の DI は下記の図表 1 の通りである。前年同期比では、建設業の 20→0 の 20 ポイント減少、製造業の△12→△31 の 19 ポイント減少、情報・流通・商業の 17→15 の 2 ポイント減少、サービス業の 33→11 の 22 ポイント減少となっている。
次期見通しでは、建設業の 50→10 の 40 ポイント減少、 製造業の△10→△55 の 45 ポイント減少、情報・流通・商業の△5→△40 の 35 ポイント減少、サービス業の 29→△52 の 81 ポイント減少となっている。

建設業の前年同期比の売上高 DI が0 となっているが、次期見通しでは 10 と持ち直している。
製造業の前年同期比の売上高 DI が△31 と落ち込み、次期見通しでは△55 とさらに 悪化している。
情報・流通・商業の前年同期比の売上高 DI が15、次期見通しでは△40 と 大きく減少している。
サービスの前年同期比の売上高 DI が11、次期見通しでは△52 とか なり落ち込んでいる。全業種で建設業以外の次期見通しでは、大きな減少幅が見受けられる。

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益 DI は、前年同期比で 11→△6 の 17 ポイント減少、次期見通しは 16→△48 の 64 ポイント減少となっている。
各業種の DI は下記 の図表 2 の通りである。建設業は、前年同期比が 30→0 の 30 ポイント減少で、次期見通し では、40→△10 の 50 ポイント減少となっている。
製造業は、前年同期比が△8→△20 の 12 ポイント減少で、次期見通しでは、△11→△48 の 37 ポイント減少となっている。
情報・ 流通・商業は、前年同期比が 24→20 の 4 ポイント減少で、次期見通しでは、10→△42 の 52 ポイント減少となっている。
サービス業は、前年同期比が 14→△3 の 17 ポイント減少で、次期見通しでは、29→△56 の 85 ポイント減少となっている。

前年同期比では、建設業は 0 で、次期見通しが△10 と水面下となっている。製造業では、 前年同期比が△20 で、次期見通しは△48 と落ち込んでいる。情報・流通・商業では、前年 同期比が 20 で、次期見通しは△42 とかなり減少している。サービス業では、前年同期比が △3 で、次期見通しは△56 となっており、減少幅が大きい。
経常利益 DI は、全業種において、次期見通しの数値が水面下に大きく落ち込んでいる。

1-3. 経常利益の水準・業況水準・業況判断

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準 DI でみていく。
全業種の DI は 49→16 の 33 ポイント減少、建設業は 56→63 の 7 ポイント増加、 製造業は△2→0 の 2 ポイント増加、情報・流通・商業は 61→32 の 29 ポイント減少、サー ビス業は 44→15 の 29 ポイント減少している。
全業種のなかで、建設業の数値と製造業の 数値との差がかなりあることがわかる。その他の業種では、減少幅が大きい。

次に業況水準についてみていく。全業種の DI は 19→△24 の 43 ポイント減少、建設業 3 は 30→30 と横ばい、製造業は△35→△31 の 4 ポイント増加、情報・流通・商業は 14→△ 30 の 44 ポイント減少、サービス業は 15→△27 の 42 ポイント減少している。情報・流通・ 商業、サービス業の数値が顕著に落ち込んでいる。

業況判断では、全業種の前期比は 18→△12 の 30 ポイント減少、前年同期比は 20→△14 の 34 ポイント減少、次期見通しは 15→△57 の 72 ポイント減少となっている。
建設業の前期比は 30→50 の 20 ポイント増加、前年同期比は 30→40 の 10 ポイント増加、次期見通し は 50→10 の 40 ポイント減少となっている。
製造業の前期比は△19→△26 の 7 ポイント減少、前年同期比は△31→△35 の 4 ポイント減少、次期見通しは△33→△65 の 32 ポイント 減少となっている。
情報・流通・商業の前期比は 4→△25 の 29 ポイント減少、前年同期比 は 9→0 の 9 ポイント減少、次期見通しは 0→△55 の 55 ポイント減少となっている。
サー ビス業の前期比は 9→△6 の 15 ポイント減少、前年同期比は 21→△10 の 31 ポイント減少、 次期見通しは 16→△62 の 78 ポイント減少となっている。
建設業は、他業種よりも数値が 落ち込んではいないが、次期見通しでは、大きく落ち込んでいる。

2. 経常利益が増加した理由、減少した理由

経常利益が増加した理由として 1 番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の 52.5%であった。
次いで「売上単価・客単価の上昇」の 14.8%、「人件費の低下」の 9.8%であった。
一方、経常利益が減少した理由で1 番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の 53.8%であった。
次いで「その他」の 16.3%、「人件費の増加」の 13.2%であった。
経常利益が減少した理由として、「その他」の割合が高かったが、自由記述欄をみると新 型コロナウイルスによる影響と回答していた割合がほとんどだ゙った。

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。
今期に設 備投資を実施したと回答したのは全体の 39.2%→35.7%、次期に設備投資を計画していると 回答したのは 38.3%→37.9%であった。
今期に設備投資を実施した割合が前回の調査結果よ りも 4%も減少し、次期見通しの実施計画でも減少した結果となっている。
今期の設備投資 を実施したと回答した企業で投資した項目別(上位 3 位)にみてみると「、設備機器」が24.7%、 「情報機器」が16.5%、「採用」が14.1%となっている。次期の設備投資計画では、「採用」 が20.2%、「事務所・店舗」、「広告」が14.9%、「情報システム」、「情報機器」、「設備機器」 が12.8%という結果である。

資金繰の状況について、現在の資金繰の状況をみていく。資金繰の状況に関しては、余 裕ありが15.0%→11.0%、やや余裕が16.3%→15.5%、順調が30.7%→29.0%、やや窮屈が27.5%→12.9%、窮屈が10.5%→12.9%となっている。
余裕ありとやや余裕と回答した企業 割合からやや窮屈、窮屈と回答した企業割合を引いた資金繰 DI は、14→△18 の 32 ポイント減少している。資金繰に関しては、悪化している。

4. 現在の経営上の問題点・重点

現在の経営上の問題点をみていく。
これは各企業上位 3 つまでを選び回答したものである。
1番高い割合を示したのが、「従業員の不足」、「人件費の増加」の 12.4%で、次いで「民 間需要の停滞」の 11.0%、「その他」の 9.9%となっている。人材の問題点が上位を占めてい るが、「その他」の項目の割合が高くなっている。
その内容としては、大多数を占めていた のが新型コロナウイルスによる影響であった。

経営上の重点では各企業上位 3 つまでを選んで回答したものである。
まず、現在実施中 の力点では、多い順に、「新規受注(顧客)の確保」の 19.1%、「付加価値の増大」の 16.7%、 「既存客のフォロー」の 12.1%となっている。
新型コロナウイルスによる景気悪化が懸念されているなかでも、いかに経営基盤強化を推し進めていくことができるかがカギとなる。

5. 特別質問の結果について(無回答は除く)

今回の特別質問では、新型コロナウイルスの影響に関する項目について行った。結果を みていくと、まず、新型コロナウイルス感染症の影響に関する項目では、「マイナスの影響 が出ている」は 37.4%、「プラスの影響が出ている」は 1.3%、「今後のマイナスの影響が懸 念される」は 49.7%、「影響はない」は 6.5%、「どちらともいえない」は 5.2%であった。 新型コロナウイルスの影響は、約 8 割強がマイナスの影響が発生しているもしくはするだ ろうと回答している。
上記の項目で「マイナスの影響が出ている」、「今後のマイナスの影響が懸念される」と 回答した方に対して、その影響は何なのかという項目では、「売上・販売・客数等の減少」 は 37.8%、「原材料・部材等の不足」は 10.7%、「生産・配達等に支障」は 4.6%、「資金不 足」は 3.4%、「キャンセル等の集中」は 16.0%、「商談等の遅延」は 4.1%、「自社・拠点等 の休業」は 11.2%、「社員・スタッフの休業」は 3.7%、「その他」は 2.6%であった。新型 コロナの影響としては、「売上・販売・客数等の減少」の割合が最も高かったことがわかる。

中小企業への支援策に関する項目では、「利用した」は 5.9%、「検討中」は 43.4%、「利用を検討しなかった」は 35.5%、「今後利用の予定」は 15.1%であった。
「利用した」の割 合が少なく、会員企業は支援策を十分に活用できていないことがわかる。
新型コロナウイルスへの具体的な対応に関する項目では、「具体的な対応を考えている」が 70.1%、「予定はない」が 29.9%であった。
具体的な対応に関しては、テレワークの導入、 従業員の健康管理の強化等の回答が多かった。
以上のように、景況調査結果は、新型コロナウイルスの影響が見受けられた。
今回は 1 ~3 月期の調査であったが、次期見通しの主要な項目の DI は、著しく悪化している。
2020 年は新型コロナウイルスへの景気悪化、それに伴う会員企業の経営対策の強化が急務となるだろう。