売上高DI、経常利益DIは、大きく落ち込んだ。経常利益の水準DI、業況水準DI、業況判断DIでも軒並み数値が悪化。
各主要項目の次期見通しは、増加しているものの、数値は低い。業種別では、製造業の各主要 項目で著しく減少している。
【調査要領】
※文章中のDIとは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。
玉川大学経営学部准教授 長谷川英伸
全業種の売上高 DI は、前年同期比で△4(前回調査時、以下省略)→△34 の 30 ポイント減 少、次期見通しは△47→△24 の 23 ポイント増加となっている。各業種の DI は下記の図表1の通りである。前年同期比では、建設業の 0→△54 の 54 ポイント減少、製造業の△31→ △68 の 37 ポイント減少、情報・流通・商業の 15→△30 の 45 ポイント減少、サービス業の 11→△8 の 19 ポイント減少となっている。次期見通しでは、建設業の 10→△31 の 41 ポイント減少、製造業の△55→△49 の 6 ポイント増加、情報・流通・商業の△40→△22 の 18 ポイント増加、サービス業の△52→△6 の46 ポイント増加となっている。
製造業の前年同期比の売上高 DI が△68 となっており、他業種よりも数値が低く、次期見通しでは△49 と増加しているが、数値は低いままである。建設業の前年同期比の売上高 DI が△54 と大きく落ち込み、次期見通しでは△31 と増加しているものの回復傾向とはいえない。情報・流通・商業の前年同期比の売上高 DI が△30、次期見通しでは△22 と推移している。サービスの前年同期比の売上高 DI が△8、次期見通しでは△6 と若干だが回復 している。サービス業以外の業種では、前年同期比の売上高 DIの落ち込みが大きい。
次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益 DI は、前年同期比で△6→△39 の 33 ポ イント減少、次期見通しは△48→△28 の 20 ポイント増加となっている。各業種の DI は下 記の図表2の通りである。建設業は、前年同期比が 0→△23 の 23 ポイント減少で、次期見通しでは、△10→△8 の2ポイント増加となっている。製造業は、前年同期比が△20→△ 68 の 48 ポイント減少で、次期見通しでは、△48→△46 の 2 ポイント増加となっている。情報・流通・商業は、前年同期比が 20→△53 の 73 ポイント減少で、次期見通しでは、△ 42→△33 の 9 ポイント増加となっている。サービス業は、前年同期比が△3→△15 の 12 ポイント減少で、次期見通しでは、△56→△15 の 41 ポイント増加となっている。
前年同期比では、製造業は△68 で、次期見通しが△46 と数値は増加している。情報・流通・商業では、前年同期比が△53で、次期見通しは△33 と増加している。建設業では、前 年同期比が△23 で、次期見通しは△8 と増加している。サービス業では、前年同期比が△ 15 で、次期見通しは△15 となっており、横ばいである。
経常利益 DI は、全業種において、製造業、情報・流通・商業が前年同期比で大きく落ち込んでおり、次期見通しでは数値が増加しているが、伸び悩んでいる。
投稿日 : 2021年1月15日 最終更新日時 : 2022年1月15日 カテゴリー : KDレポート
売上高DI、経常利益DIは、大きく落ち込んだ。経常利益の水準DI、業況水準DI、業況判断DIでも軒並み数値が悪化。
各主要項目の次期見通しは、増加しているものの、数値は低い。業種別では、製造業の各主要 項目で著しく減少している。
【調査要領】
※文章中のDIとは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。
玉川大学経営学部准教授 長谷川英伸
全業種の売上高 DI は、前年同期比で△4(前回調査時、以下省略)→△34 の 30 ポイント減 少、次期見通しは△47→△24 の 23 ポイント増加となっている。各業種の DI は下記の図表 1 の通りである。前年同期比では、建設業の 0→△54 の 54 ポイント減少、製造業の△31→ △68 の 37 ポイント減少、情報・流通・商業の 15→△30 の 45 ポイント減少、サービス業の 11→△8 の 19 ポイント減少となっている。次期見通しでは、建設業の 10→△31 の 41 ポイント減少、製造業の△55→△49 の 6 ポイント増加、情報・流通・商業の△40→△22 の 18 ポイント増加、サービス業の△52→△6 の 46 ポイント増加となっている。
製造業の前年同期比の売上高 DI が△68 となっており、他業種よりも数値が低く、次期見通しでは△49 と増加しているが、数値は低いままである。建設業の前年同期比の売上高 DI が△54 と大きく落ち込み、次期見通しでは△31 と増加しているものの回復傾向とはい えない。情報・流通・商業の前年同期比の売上高 DI が△30、次期見通しでは△22 と推移している。サービスの前年同期比の売上高 DI が△8、次期見通しでは△6 と若干だが回復 している。サービス業以外の業種では、前年同期比の売上高 DI の落ち込みが大きい。
次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益 DI は、前年同期比で△6→△39 の 33 ポ イント減少、次期見通しは△48→△28 の 20 ポイント増加となっている。各業種の DI は下 記の図表 2 の通りである。建設業は、前年同期比が 0→△23 の 23 ポイント減少で、次期見通しでは、△10→△8 の 2 ポイント増加となっている。製造業は、前年同期比が△20→△ 68 の 48 ポイント減少で、次期見通しでは、△48→△46 の 2 ポイント増加となっている。情報・流通・商業は、前年同期比が 20→△53 の 73 ポイント減少で、次期見通しでは、△ 42→△33 の 9 ポイント増加となっている。サービス業は、前年同期比が△3→△15 の 12 ポイント減少で、次期見通しでは、△56→△15 の 41 ポイント増加となっている。
前年同期比では、製造業は△68 で、次期見通しが△46 と数値は増加している。情報・流通・商業では、前年同期比が△53 で、次期見通しは△33 と増加している。建設業では、前 年同期比が△23 で、次期見通しは△8 と増加している。サービス業では、前年同期比が△ 15 で、次期見通しは△15 となっており、横ばいである。
経常利益 DI は、全業種において、製造業、情報・流通・商業が前年同期比で大きく落ち込んでおり、次期見通しでは数値が増加しているが、伸び悩んでいる。
経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準 DI でみていく。全業種の DI は 16→△9 の 25 ポイント減少、建設業は 63→20 の 43 ポイント減少、製造業は 0→△47 の 47 ポイント減少、情報・流通・商業は 32→△24 の 56 ポイント 減少、サービス業は 15→14 の 1 ポイント減少している。全業種のなかで、製造業が最も数値が低くなっている。落ち込み幅では、情報・流通・商業が他業種よりも大きくなっている。
次に業況水準についてみていく。全業種のDIは△24→△31の7ポイント減少、建設業は30→△30の60ポイント減少、製造業は△31→△57 の 26 ポイント減少、情報・流通・商業は△30→△32 の 2 ポイント減少、サービス業は△27→△15の12 ポイント増加している。製造業の数値が顕著に落ち込んでいる。
業況判断では、全業種の前期比は△12→△16の4ポイント減少、前年同期比は△14→△ 37 の 23 ポイント減少、次期見通しは△57→△32 の 25 ポイント増加となっている。建設業の前期比は 50→△22 の 72 ポイント減少、前年同期比は 40→△50 の 90 ポイント減少、次期見通しは 10→△20 の 30 ポイント減少となっている。製造業の前期比は△26→△35 の9ポイント減少、前年同期比は△35→△46 の 11 ポイント減少、次期見通しは△65→△46 の 19 ポイント増加となっている。情報・流通・商業の前期比は△25→△25 と横ばい、前 年同期比は 0→△35 の 35 ポイント減少、次期見通しは△55→△47の8ポイント増加とな っている。サービス業の前期比は△6→△2 の4ポイント増加、前年同期比は△10→△19 の 9 ポイント減少、次期見通しは△62→△17 の 45 ポイント増加となっている。製造業は、他業種よりも数値が落ち込んでいる。全業種の次期見通しでは、増減がみられるが、水面下のままである。
経常利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の 58.1%であった。次いで「人件費の低下」の 12.9%、「売上単価・客単価の上昇」の 9.7%であった。 一方、経常利益が減少した理由で1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の 65.2%で あった。次いで「売上単価・客単価の低下」の 12.4%、「その他」の 11.2%であった。
経常利益が増加した理由として、「人件費の低下」の割合が大きい背景には、新型コロナウイルスの景気悪化への対策として、雇用調整が行われている可能性がある。経常利益が 減少した理由で、「その他」の割合が大きく、自由回答欄をみると、依然新型コロナウイルスによる影響と回答していたケースが多かった。
設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期に設備投資を実施したと回答したのは全体35.7%→41.4%、次期に設備投資を計画していると回答したのは 37.9%→44.1%であった。今期、次期ともに設備投資を実施した割合が前回の調査結果よりも増加している。今期の設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別(上位3位)にみてみると、「採用」が 27.6%、「設備機器」が 17.1%、「その他」が 14.3%となっている。次期の設備投資計画では、「設備機器」が22.4%、「採用」が 17.9%、「事務所・店舗」が13.4%という結果である。今期の設備投資では、「採用」、次期の設備投資は、 「設備機器」が最も多くとなっており、人材確保、テレワーク等のための設備投資が考えられる。
資金繰の状況について、現在の資金繰の状況をみていく。資金繰の状況に関しては、余 裕ありが 11.0%→14.8%、やや余裕が15.5%→19.5%、順調が 29.0%→34.4%、やや窮屈が 12.9%→25.0%、窮屈が 12.9%→6.3%となっている。余裕ありとやや余裕と回答した企業割合からやや窮屈、窮屈と回答した企業割合を引いた資金繰DIは、△18→3 の 21 ポイント増加している。資金繰に関しては、改善されている。
現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位 3 つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「民間需要の停滞」の 16.0%で、次いで「従業員の不足」 の 12.6%、「同業者相互の価格競争の激化」の 10.7%となっている。「民間需要の停滞」の 割合が大きく、新型コロナウイルスによる景気悪化が影響している。
経営上の重点では各企業上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注(顧客)の確保」の 21.1%、「付加価値の増大」の 16.6%、「既存客のフォロー」の 14.9%となっている。新型コロナウイルスによる景気悪化が常態化するなかで、新規顧客開拓が急務であると考えられる。
今回の特別質問では、新型コロナウイルスの影響に関する融資や政策支援に関する項目 について行った。結果をみていくと、まず、新型コロナウイルス感染症対応の融資に関す る項目では、「利用した」は 56.7%、「今後利用の予定」は 3.9%、「検討中」は 11.8%、「利 用を検討しなかった」は 23.6%、「利用できなかった」は 3.9%であった。融資に関して、 「利用した」割合が半数を超えており、新型コロナウイルスによる業績悪化のため、資金 確保に動いた会員企業が多いことがわかる。
次に、中小企業への支援策(国、行政の補助金・助成金)に関する項目では、「利用した」 は 69.3%、「今後利用の予定」は3.9%、「検討中」は 9.4%「利用を検討しなかった」は 14.2%、「利用できなかった」は3.1%であった。中小企業への支援策については、「利用した」割合が約7割になっており、支援策を活用できている会員企業が多いことがわかる。
次に、中小企業への支援策(国、行政の補助金・助成金)に関する項目で「利用した」と回答した会員企業で、具体的な支援策の内容について問う項目では、「持続化給付金」は 29.5%、 「雇用調整補助金」は 24.5%、「休業等の給付金」は8.3%、「家賃支援給付金」は9.7%、「経済産業省系の補助金(ものづくり補助金、IT補助金、持続化給付金等)」は 5.5%、「厚生労働省系の補助金(雇用調整助成金以外) は4.6% 、「行政(県・市町村等)の支援策」は13.4% 、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置」は1.4%、「その他」は3.7%であった。「持続化給付金」は、申請方法が比較的安易であったため、他の支援策より も多くの会員企業が活用できていることがわかる。
最後に、中小企業への支援策で具体的に必要だと思うもの(継続してほしいもの、終了したものを含む)を問う項目(自由回答欄)では、雇用関係の回答が多く、例えば雇用調整補助 金の拡充等を求める声があった。また、税金の軽減、新規事業への支援、IT化の促進支援、持続化給付金等の声もあり、企業経営の基盤を強化する支援策が求められている。
以上のように、景況調査結果の数値をみると、新型コロナウイルスによる景気悪化の現状が色濃く表れている。次期見通しの主要な項目の DI は、増加している傾向にあるが、新型コロナウイルスの猛威は、収まる気配がなく、景気の二重底も考えられる。