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神奈川県中小企業家同友会
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神奈川同友会景況調査報告(KD レポート) (2021 年 1~3 月期)

売上高DI、経常利益DIは、大きく回復した。経常利益の水準DI、業況水準DI、業況判断DIでも数値は伸びた。
ただ、主要な項目によってはDI が水面下のままである。建設業の売上高DI、経常利益DIにおける次期見通しの数値は落ち込んでいる。

  • 前年同期比では、売上高DI、経常利益DIが大きく増加している。次期見通しにおいても、売上高 DI、経常利益DIは若干だが回復している。業種別では、建設業は他業種よりも数値が低い。次期見通しでは、全業種間で差があり、製造業、情報・流通・ 商業は回復傾向にある。今期の業況水準DIが△5、業況判断DIが前期比の9、前年同 期比の△1、次期見通しの15である。
  • 今期の設備投資の実施企業は約4割、次期の設備投資を予定している企業は約5割である。今期の設備投資の内訳では「設備機器」、「情報機器」、「採用」が上位である。
  • 資金繰の状況では、3→19 と改善傾向にある。
  • 経営上の問題は、「従業員の不足」、「人件費の増加」、「民間需要の停滞」の順に割合が高い。一方、経営上の力点として、「新規受注(顧客)の確保」、「付加価値の増大」、「既存客のフォロー」が上位となっている。
  • 前回のKDレポートの結果と比較して、全業種の主要項目で数値が大きく回復している。景気悪化の底を打ったように見受けられるが、業種によっては、主要項目の次期見通しが伸び悩んでおり、景気のV字回復が実現できるかは不透明である。

【調査要領】

  1. 調査時 2021月3月15日~4月15日
  2. 対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
  3. 調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)と FAX、Google フォームによるアンケート
  4. 回答企業数775社より140社の回答を得た(回答率18.1%)
    (建設業14社、製造業43社、情報・流通・商業22社、サービス業58社、不明3社)
  5. 平均社員数 1.正規社員24人 2.パート・アルバイト12人

※文章中の DI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
~概況報告~

玉川大学経営学部准教授 長谷川英伸

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準・業況判断

1-1. 売上高

全業種の売上高DIは、前年同期比で△34(前回調査時、以下省略)→△3の30ポイント増加、次期見通しは△24→6の30ポイント増加となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。前年同期比では、建設業の△54→0の54ポイント増加、製造業の△68→△2の66ポイント増加、情報・流通・商業の△30→5 の35ポイント増加、サービス業の△8 →△3 の5ポイント増加となっている。次期見通しでは、建設業の△31→△25の6ポイント増加、製造業の△49→14 の63ポイント増加、情報・流通・商業の△22→18 の40ポイント増加、サービス業の△6→3の9ポイント増加となっている。

前年同期比と次期見通しを比較すると、建設業の前年同期比の売上高DIが0にまで回復したものの、次期見通しでは△25と伸び悩んでいる。製造業の前年同期比の売上高DIは △2(前回調査時よりも66ポイント増加)、次期見通しでは、14となり水面下を脱している。 情報・流通・商業の前年同期比の売上高DIが5、次期見通しでは18となり回復傾向にある。サービスの前年同期比の売上高DIが△3、次期見通しでは3になっており、増加幅は 小さいが回復している。全業種で売上高DIは回復し、特に情報・流通・商業では次期見通しにおいても数値が伸びている。

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益DIは、前年同期比で△39→△7 の 32 ポイント増加、次期見通しは△28→△4の24 ポイント増加となっている。各業種のDIは下記の図表2の通りである。建設業は、前年同期比が△23→△30 の7ポイント減少で、次期 見通しでは、△8→△33の25ポイント減少となっている。製造業は、前年同期比が△68→ 2の70ポイント増加で、次期見通しでは、△46→10 の56ポイント増加となっている。情 報・流通・商業は、前年同期比が△53→5の58 ポイント増加で、次期見通しでは、△33→ 5の38ポイント増加となっている。サービス業は、前年同期比が△15→△10 の 5 ポイント増加で、次期見通しでは、△15→△9 の6ポイント増加となっている。

前年同期比と次期見通しを比較すると、建設業では、前年同期比が△30(前回調査時よりも7ポイント減少)で、次期見通しは△33と減少傾向にある。製造業は前年同期比が2(前回調査時よりも70ポイント増加)で、次期見通しが10と回復傾向にある。情報・流通・商業 では、前年同期比が5(前回調査時よりも58ポイント増加)で、次期見通しは5と伸び悩んでいる。サービス業では、前年同期比が△10(前回調査時よりも6ポイント増加)で、次期見 通しは△9 と減少している。

経常利益DIは、全業種において、製造業、情報・流通・商業が前年同期比で大きく落ち込んでおり、次期見通しでは数値が増加しているが、伸び悩んでいる。

1-3. 経常利益の水準・業況水準・業況判断

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDI は△9→17の26ポイント増加、建設業は 20→36 の16ポイント増 加、製造業は△47→27の74ポイント増加、情報・流通・商業は△24→9の34ポイント増加、サービス業は 14→16 の2ポイント増加している。製造業は他業種よりも数値が大幅に回復し、サービス業では数値が伸び悩んでいる。

次に業況水準についてみていく。全業種のDIは△31→△5の26ポイント増加、建設業 は△30→△14 の16ポイント増加、製造業は△57→2 の 59 ポイント増加、情報・流通・商 業は△32→5 の37ポイント増加、サービス業は△15→△10 の5ポイント増加している。全業種で数値が増加し、製造業の数値は大きく増加している。

業況判断では、全業種の前期比は△16→9 の25ポイント増加、前年同期比は△37→△1 の 36 ポイント増加、次期見通しは△32→15 の 47 ポイント増加となっている。建設業の前 期比は△22→36 の 58 ポイント増加、前年同期比は△50→0 の 50 ポイント増加、次期見通 しは△20→7 の 27 ポイント増加となっている。製造業の前期比は△35→14 の 49 ポイント増加、前年同期比は△46→△5 の 41 ポイント増加、次期見通しは△46→12 の58ポイント 増加となっている。情報・流通・商業の前期比は△25→36 の61ポイント増加、前年同期 比は△35→23 の 58 ポイント増加、次期見通しは△47→41 の 88 ポイント増加となってい る。サービス業の前期比は△2→△10 の 8 ポイント減少、前年同期比は△19→△9 の 10ポイント増加、次期見通しは△17→10の27ポイント増加となっている。情報・流通・商業 は、他業種よりも数値が高い。全業種の次期見通しでは、増加している。

2. 経常利益が増加した理由、減少した理由

経常利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の64.3%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の12.5%、「人件費の低下」の7.1%であった。 一方、経常利益が減少した理由で1番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の52.0%で あった。次いで「人件費の増加」の17.3%、「売上単価・客単価の低下」の 13.3%であった。

経常利益が増加した理由として、「人件費の低下」が上位にあがっており、コスト削減が影響している可能性がある。経常利益が減少した理由で、「人件費の増加」の割合が大きく、人手に見合った利益が思うように稼げていない現状が考えられる。

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期に設 備投資を実施したと回答したのは全体の41.4%→41.4%、次期に設備投資を計画していると回答したのは 44.1%→49.3%であった。次期の設備投資を実施した割合が前回の調査結果よ りも増加している。今期の設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別(上位3位) にみてみると、「設備機器」が 18.5%、「情報機器」が 16.0%、「採用」が 16.0%となってい る。次期の設備投資計画では、「採用」が 19.8%、「設備機器」が 19.0%、「広告」が 13.2% という結果である。今期の設備投資では、「設備機器」、次期の設備投資は、「採用」が最も多くとなっており、新型コロナウイルスへの対応策に関連する設備機器の導入、事業運営 を円滑するための人材確保が進められている。

資金繰の状況について、現在の資金繰の状況をみていく。資金繰の状況に関しては、余裕ありが14.8%→17.1%、やや余裕が19.5%→24.3%、順調が34.4%→36.4%、やや窮屈が25.0%→15.7%、窮屈が6.3%→6.4%となっている。余裕ありとやや余裕と回答した企業割合からやや窮屈、窮屈と回答した企業割合を引いた資金繰DIは、3→19の16ポイント増加し、資金繰が改善傾向である。

4. 現在の経営上の問題点・重点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3つまでを選び回答したものであ る。1番高い割合を示したのが、「従業員の不足」の12.7%で、次いで「人件費の増加」の12.1%、「民間需要の停滞」の11.8%となっている。人材に関する項目の割合が大きく、新型コロナウイルスの影響による事業縮小からの揺り戻しで、人材確保が問題となっている。

経営上の重点では各企業上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注(顧客)の確保」の 20.9%、「付加価値の増大」の18.0%、「既存客のフォロー」の12.1%となっている。新規顧客を確保することに注力しながら、付加価値を向上させることが求められている。

5. 特別質問の結果について(無回答は除く)

今回の特別質問では、新型コロナウイルス感染症収束後の経済・社会への対応「ポストコロナ対応」に関する項目が設けられた。結果をみていくと、まず、ポストコロナ対応に ついて(情報収集、新事業対応、DX、BCP,労務面の見直し等)に関する項目では、「対応・対策している」は39.3%(55)、「検討中」は42.9%(60)、「していない」は 17.1%(24)、「それ どころではない」は 0.7%(1)であった。対応している等の割合は約4割となっているが、検討中、していない割合を合わせると約6割にのぼっている。

次に、この 1 年で自社の周辺業種や知り合いが倒産廃業等をしたかに関する項目では、「している」は30.9%(43)、「していない」は67.6%(94)、「自社も危機的状況」は 1.4%(2)であった。「していない」割合の方が、「している」割合を大きく上回っている。ただ、「している」割合は決して低くなく、「している」と回答した方への記述式では、サービス業関連で19件、製造業で8件、商業で2件、建設業1件等があげられていた。

次に、新型コロナウイルス感染症関連融資に関する項目では、「返済できる」は59.4%(82)、「返済の目途が立っていない」は 5.8%(8)、「融資を受けていない」は 34.8%(48)であった。「返済できる」割合は約6割と返済見込みが立っている会員企業が多い。一方で、「融資を受けていない」割合が約3割存在しており、資金を借りる必要がないのか、借りたくても融資条件等が合わずに借りられなかったのかを精査する必要がある。

次に、(コロナ対応の)補助金、助成金等、国や自治体の公的制度に関する項目では、「利用した」は77.1%(108)、「申請等に苦労し、利用しにくかった」は 2.9%(4)、「自社に合う 制度が無く利用していない」は 17.9%(25)、「その他」は2.1%(3)であった。「利用した」割 合が約8割にとなっており、少なくとも1つの制度を利用できている方が多いのがわかる。一方、「自社に合う制度が無く利用してない」割合は約2割も存在している。

最後に、自社もしくは神奈川県内の経営者仲間の現在の「お困りごと」に関する項目(自由回答欄)では、主な回答内容に触れていくと、DXに関する回答が7件(例えば、DX導入検討の具体例がわからない)、テレワークに関する回答が5件(例えば、テレワーク導入が業種上困難)、人材に関する回答が11件(例えば、人材不足、技術力向上のための体制不備)、 ポストコロナに関する回答が9件(例えば、ポストコロナの経営環境・世界経済の変化に対する情報に偏りがあるので、正確な情報収集)、後継者に関する回答が2件(例えば、後継者 問題を含む役員及び幹部社員の世代交代)であった。企業内外の環境変化にどのように対応すれば良いのかを悩んでいる会員企業が多く、多面的な課題を抱えながら、会員企業は日々経営活動に取り組んでいる。

以上のように、景況調査結果の数値をみると、景気悪化の底を打ったように見受けられる。ポストコロナに対応すべく、資金を調達し、積極的に設備投資に取り組んでいる会員企業は少なくない。次期見通しの主要な項目のDIは、回復傾向にあるが、景気のV字回復を実現できるかは、依然不透明である。