仕事の「やり方」だけではなく、人としての「在り方」を見られている、ということ
新しい年を迎え、4月の新入社員を迎える時期が近づいてきました。採用難が続く中、「ようやく採用できた人材に、いかに定着し、成長してもらうか」は、多くの中小企業にとって避けて通れない経営課題となっています。
私たちの会社でも、過去の指針会議の中で、ある課の中堅社員から率直な問題提起がありました。
「うちの課は新入社員が定着しない」「なぜ辞めてしまうのだろうか」
その課でも定期的に新卒採用を行っていましたが、2年も経たないうちに退職してしまう状況が続いていました。表面的には指導社員への不満が理由として挙がる一方で、「本当の原因はもっと深いところにあるのではないか」と、幹部社員も交え、自らの組織風土を見つめ直す大切な機会となりました。
今回の問題定義で何より重要だったのは、「現場の社員自らが一石を投じた」という点です。とてもピュアで、同時に重みのある一石だったと感じています。
議論を重ねる中で出てきたのが、「私たちは仕事のやり方、つまり技術だけを教えてきたのではないか」という気づきでした。本来、技術の習得を通じて人間性も育てていくはずなのに、その視点がおろそかになっていたのではないか。技術的なうまさは確かに尊敬に値します。しかし、上司の人間性が善良で、フェアさや誠実さがあり、人として安心してついていける存在でなければ、長く働き続けることは難しいのではないか、という意見が共有されました。
その後、その部署では「新入社員には意識的に声をかけ、全員で関わっていく」というルールが決められました。小さな取り組みではありますが、組織の在り方を見直す第一歩になったと感じています。
新入社員は、仕事の「やり方」だけでなく、上司や先輩がどのような姿勢で仕事や人に向き合っているのか、つまり人としての「在り方」を日々見ています。その在り方こそが、「この会社で働き続けたいかどうか」を大きく左右しているのです。
この気づきは、中小企業家同友会が大切にしてきた「人を生かす経営」や「共育・共感」の考え方と重なります。人を育てるということは、一方的に教えることではなく、互いに学び合い、共に育つ関係を築くことです。理念を掲げるだけでなく、日常の関わりや判断、評価にまで落とし込むことで、組織の土台は少しずつ強くなっていくのではないでしょうか。
経営者と社員がともに成長し合える風土があり、安心して意欲的に働ける環境が整ったとき、社員の定着率は自然と高まっていくと感じます。社員の採用、定着、育成という課題は、これから先も形を変えながら向き合い続けていかなければならないテーマです。
新入社員を迎えるこの節目の時期だからこそ、あらためて自社の理念に立ち返り、「人を育てるとは何か」「自分たちはどんな在り方を示しているのか」を問い直してみるのもよいのではないでしょうか。
文責 株式会社ベルザ
福岡 智子