2025年8月19日、神奈川県中小企業家同友会ダイバーシティ委員会では、株式会社ENCHORDの高垣内(たかがいと)文也代表を報告者に迎え、「ヤングケアラー」をテーマに例会を開催しました。
ヤングケアラーとは、「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども・若者」のことです(こども家庭庁定義)。高垣内氏自身もヤングケアラーとしての経験を持ち、報告では、現在も学校のクラスに1〜2名のヤングケアラーがいるという実情が語られました。
このような話からも、ヤングケアラーは決して遠い存在ではなく、私たちのすぐそばにいる「身近な社会課題」であることが明らかになりました。
ヤングケアラーの背景は多様で、障害のある家族を支えるケース、精神疾患を抱える親のケアをするケースなど、状況は一人ひとり異なります。進学や就労を諦めざるを得ないケースも少なくありません。
しかし、就業時間の調整、在宅ワークの許可をはじめとする個別の配慮があれば、彼らが働ける可能性は十分に高まります。企業が職場環境を整え、柔軟な働き方や支援制度を導入することで、ヤングケアラーの就労機会は大きく広がります。
実際、ヤングケアラーによる離職や就労困難がもたらす経済損失は、将来的に年間約9兆円になるとも言われています。少子高齢化が進む日本において、若い世代を支援せずに放置することは、社会全体にとっても企業にとっても大きな損失です。
2024年3月、経済産業省は「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を発表しました。このガイドラインは、介護を担う従業員(ビジネスケアラー)を支援するための具体的なステップを示していますが、ヤングケアラー支援にも応用可能な点は多いと思われます。
「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」について
働きたくても働けない人たちがいる。その人たちを「戦力化できないか?」という視点を持つことが、企業の成長にもつながります。
今回の例会は、私たちが「企業は何のために存在するのか」という原点に立ち返り、「企業の社会的責任」を考えるきっかけとなりました。
ヤングケアラー支援は、単なる福祉ではなく、同友会の「人を生かす経営」の1つと言えます。人手不足に悩む中小企業、そして同友会会員こそが、柔軟な雇用と支援の仕組みを整えることで、ヤングケアラーという社会課題の解決と企業価値の向上を両立できるのではないでしょうか。