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神奈川県中小企業家同友会
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【例会レポート】ダイバーシティ委員例会2月例会を開催しました!

2025年2月18日のダイバーシティ委員会では、「相互理解の種は誰が撒くのか?~ネクストテラスが目指すソーシャルイノベーション~」をテーマに、ネクストテラス株式会社 代表取締役 岡本忍さんにご報告いただきました。

ネクストテラスの事業内容と提供するサービス

岡本さんは多様なキャリアを経て2022年2月にネクストテラス株式会社を設立。

会社名のNext terrace「次への挑戦」「晴れ晴れとした瞬間を迎えるサポート」という意味が込められています。企業理念として「挑戦は楽しい」「課題は価値になる」「創造と変革で人と社会の持続的な成長に貢献する」「多彩な社会へ つながる、つづくをつくる」を掲げています。

CSV(Creating Shared Value)の考え方

岡本さんは企業活動の基本的考えとして「CSV(共有価値の創造)」を重視しています。「社会的課題を解決しながら経済的価値を創造していく」という概念を実践しています。「つながり方を変える」「つながりを作る」ことで価値が創造され、変化が生じるという視点が特徴的です。

中井やまゆり園の課題と背景

2016年に発生した相模原市の事件をきっかけに、中井やまゆり園では抜本的な改革が求められるようになりました。岡本さんは県内唯一の地域共生コーディネーターとして、施設の在り方や支援の方法を見直してきました。

1973年に設立された中井やまゆり園は、知的障害者のための施設として機能してきました。しかし、長年の運営の中で、「人を人として扱う環境が形成されていなかった」との指摘がなされました。支援のあり方にも問題があり、家具の固定や水回りの制限など、利用者の尊厳を考慮しない施策が見受けられました。

また、施設内では刺激の少ない環境が長く続いたため、利用者が社会と関わる機会が極端に限られていました。こうした状況を改善するため、地域との連携を強化し、共生社会の実現を目指す取り組みが進められています。

1. 地域共生への取り組み

岡本さんは改革の一環として、行政の方と連携をとりながら「地域共生駅前進出モデル事業」をスタートさせました。この事業は、秦野駅近くに拠点を設け、地域の商店街や諸団体との連携を図りながら、利用者が地域の一員として活動できる環境を整えました。

具体的な取り組みとしては公園の管理を担う里親制度の活用や、イベントでの受付業務など、地域の人々と直接関わる機会を作りました。これにより、8年間真っ暗な部屋で過ごしていた利用者が、人前で受付業務を行うまでに成長するなど、確かな変化が生まれています。

2. まだ残る課題

日中活動の充実が進む一方で、医療・健康面での課題も浮き彫りになっています。車椅子利用者の多くが施設入所後に歩行困難となるケースが増えており、支援のあり方に見直しが求められています。

また、支援者側と社会の相互理解が十分でない現状も課題の一つです。行政や企業との協力を円滑に進めるためには、福祉団体側のアプローチの仕方を工夫し、双方が受け入れやすい形で連携を進める必要があります。

今後の展望

令和7年度には地方独立行政法人化が予定されており、新たなグループホームの設立や、学生や高齢者との交流拠点の開設が進められています。今後は、より多様な人々が関わり合うことで、地域全体での共生を目指す方向へとシフトしていくことが期待されます。

その上で岡本さんは「ソーシャルイノベーションが重要」と語られました。市民や企業にとって必要不可欠であり、誰もが当事者になり得るものと考えられる。その実践として「地域を作る」ことが重要であり、「つながるをつづく」という考え方がポイントになるとのことです。他人事を自分事に変えるためには、まず「身近化」を意識し、関心を持つきっかけを作ることが必要です。知ること、学ぶこと、伝えることを通じてアクションを起こし、ソーシャルグッドやサステナブルグッドな取り組みを進めていきたいそうです。

まとめ

中井やまゆり園の改革は、単なる施設の改善ではなく、共生社会の実現を目指す大きな一歩となりました。支援者・利用者・地域住民がともに関わることで、新しい可能性が広がりつつあります。この取り組みを通じて、「共に生きる社会」の実現に向けたさらなる発展が期待されます。