報告者:CURE労務事務所代表 組織開発コンサルタント 特定社会保険労務士 田中聡美氏
開催日:2023年11月27日(月)
多くの経営者や人事担当者が日々の努力にもかかわらず、社員の退職やハラスメント、トラブルに直面しています。
問題がなぜ起こるのか、そしてそれを未然に防ぐ方法はあるのか?
これらの疑問を解決すべく、田中氏は長年にわたり学び、研究を重ねました。
今回のセミナーでは実際のケースを基に、社員が辞めずに定着し、企業が成長するための具体的な戦略と方法を学びました。
皆さん、こんなケースを経験もしくは耳にしたことはありませんか?
A子さんは経営学を学んだ新入社員で、大手広告代理店の市場調査や広告活動を行う部署に配属されました。彼女はすぐに仕事に慣れ周囲からも期待をされていましたが、先輩のB子さんから急な残業を頼まれることが多く、これが不満の原因になっていました。
A子さんは他の社員と比較して自分だけ残業が多いと感じ、不満を抱えながらもB子さんや他の社員に相談できずにいました。組織内でのA子さんの立場は、他の女性社員とは異なり、マネージャーから直接仕事の指示を受けるスペシャリスト(将来の管理職候補)として期待されていました。
しかしA子さんは、入社1年後に退職してしまいました。※事例は要約しています。
最初に、大手広告代理店で発生した新人社員の退職事例をもとに、グループに分かれて以下の3項目について話し合いました。
そして各グループの代表が発表しました。
①組織の問題点
②A子さんが辞めた理由
③次に入ってくる方に、同じ事がおこらないようにするにはどうすれば良いのか
組織に問題が発生した際、人材力(人の強み)、組織力(目的や目標、ルール、役割など)、関係力(コミュニケーション)という3つの視点で整理することで解決策が見えてきます。
今回の事例で見られる人材力(s)の問題として、本人の意見が十分に聞かれていない状況、周囲の対応の不備、立場の違いへの理解があります。
組織力(s)では、急な残業の頻発や残業理由の不明瞭さ、あいまいな指示系統、それから属人化や情報共有の不足が問題として挙げられます。
さらに、関係力(R)の観点からは、言いたいことが言えない環境、相談しにくい状況、信頼関係ができていないなどが存在します。
これらの問題に対処するためにまずは責任の明確化、つまりマネージャーの役割とA子さんへの期待を明確にすることが重要です。
次に個々の信頼構築のため、1on1面談を強化し、チームの目標やビジョンを形成します。この目標やビジョンをチーム全体で共有することが次のステップであり、これが極めて重要になります。問題解決の要はこのプロセスの順序にあります。
このようにSSR理論にもとづく分析を行うことで、組織の問題点が明確になり、それぞれに適切な対策を講じることが可能になります。
チームビルディングとは、個々のメンバーの強みや長所を最大限に活用する組織創りです。
このアプローチでは、メンバーのスキル、知識、そしてモチベーションを深く理解してそれぞれの得意分野を生かすことが重要です。
各メンバーは、数字分析、アイデアの創出、時間管理、行動特性など、独自の強みを持っています。
これらを組み合わせることで、チーム全体として、そして組織としての成長を加速させます。
組織内での自由な意見交換と、安心して話し合いを行える関係の構築は、会社の成長に不可欠です。
これはSSR理論の基本であり、これらの要素がスムーズに機能することで、会社は着実に成長します。
この理念に基づいたチームビルディングは、組織の力を引き出し、持続的な会社の成長へと導くカギとなるのです。
最後に、参加者それぞれが『チームビルディングの簡易診断』を実施し、自社の現状を評価しました。
この診断を通じて、自社の問題がSSRのどこにあるのかを理解することができたと思います。
組織が直面している課題を明らかにし、改善に向けた第一歩となったことでしょう。
今回のセミナーでは経営者コーチングの専門家、田中氏によるSSR理論を活用した会社の問題点の特定方法を学ぶことができました。
この知識を通じて参加者は自社を再評価し、会社のさらなる成長への貴重なヒントを得ることができたと感じています。
結の会は、毎月異なる経営者ゲストを招き、多角的な視点から学びを提供しています。
2020年9月25日に設立されたこの会は、新旧の会員間の交流を重視しています。
さまざまな業界の専門知識や市場の最新動向を学び、参加者が自社の成長に生かすヒントとして活用することを目的としています。
皆さん、同友会の理念である良い会社をつくるために、次回もぜひ参加をして学びを深めていきましょう。