ダイバーシティ委員会は、障害者福祉に限らず、児童養護、外国人労働者、LGBTQ、シングルマザー、ヤングケアラー、触法者などをテーマとした例会を開催しています。例会内で専門的な用語が登場することもあり、簡単な用語集を作成しました。
2024年4月1日に、障害者差別法の改正法が施行され、すべての民間企業に対して「合理的配慮の提供」が義務化されることになりました。本記事では、改正法の概要とともに、私たち中小企業がとるべき対応について考えます。
「障害者差別解消法」は、2013年に制定された法律です。障がいがあることを理由とする差別を解消するため、「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」を規定しています。
これまで、民間事業者における合理的配慮の提供は努力義務とされていましたが、2024年4月1日の改正により義務化されました。これにより、大企業や中小企業、個人事業主にかかわらず、すべての事業者が規定に対する法的義務が発生します。これまでは「法定雇用率」をはじめ、大企業を対象とした障害者関連の法律はありましたが、私たち中小企業も無関係ではなくなるのが大きな違いです。
不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障がいを理由に利用を断ったりサービスの提供に制限をつけたりすることです。例えば、「前例がない」「もし何かあったら困る」「責任が取れないから」といった、障がいの種類や程度などを考慮せずに画一的な対応をとることも不当な差別的扱いに含まれます。個別の状況に応じた合理的配慮の提供を検討しなければなりません。
合理的配慮とは、個々の障がいの特性や状況に応じた柔軟な対応のことで、以下の具体例が挙げられます。
・具体例(1)
飲食店で「車椅子のまま利用したい」との申出があったため、車椅子のまま着席できるスペースを確保するために備え付けのイスを片づけた
・具体例(2)
セミナーで「学習障害があるため板書に時間がかかる」との申出があったため、デジタルカメラやスマートフォン等で撮影できることとした
民間の事業者において障がいを理由をする差別が繰り返し行われ、改善が期待できないと判断された場合には、必要に応じて行政機関から助言・指導や勧告を受けるでしょう。このとき虚偽の報告をしたり報告を怠ったりする場合には、20万円以下の過料対象となります。
Q7.企業などがこの法律に違反した場合、罰則が課せられるのでしょうか。
障がいのある人にも、分け隔てなく商品やサービスを利用してもらうために、合理的配慮の提供は大切です。しかしながら、店や施設の本来の目的や機能を損なうこと、客観的に見て物理的・技術的・人的・法的・金銭的に実現不可能なことは対応しなくてもかまわないとされています。
例えば、上記具体例(1)のケースで「食事介助もしてほしい」と申出があった場合、「食事介助を事業の一環として行っていない」ことを理由に断ってもかまわないでしょう。ただし、全面的に拒否するのではなく、対応可能な範囲と理由を説明して理解を得るように努める姿勢が大切です。
※内閣府より
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_qa_kokumin.html
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>
合理的配慮は、障がい特性や状況によって必要な対応が異なります。まずは、障がいのある人と対話しながら対応を探ることとなるでしょう。円滑に進めるために、主な障がい特性や合理的配慮の具体例を確認して、法令や障がいに対する理解を高めておくと安心です。その際は、社内への周知と情報共有も徹底します。また、合理的配慮の具体例に基づき、社内設備やルールの見直しといった環境の整備を行うことも有効です。
障害者差別法の目指す未来は、障がいの有無にかかわらず、相互に認め合う共生社会の実現です。そのために必要な合理的配慮では、個性を尊重した臨機応変さが求められます。
判断に迷ったときは「つなぐ窓口」の活用も検討しましょう。
対応時間:月~日 10時~17時 祝日・年末年始を除く
電話番号:0120-262-701
メール:info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp
事業者と障がいのある人、両者にとって無理のない解決策を目指していくことが大切です。