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神奈川県中小企業家同友会
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【例会レポート】ダイバーシティ委員会8月例会

2024年8月28日にダイバーシティ委員会では「やりたいこと最優先事業経営」 ~全ての若者達を地域とつなぎ自分らしい「はたらく」を実現できる社会へ~(報告者:株式会社フェアスタート、NPO法人フェアスタートサポート代表、永岡鉄平氏)をテーマに8月例会を開催しました。

児童養護施設出身者を中心とした若者の就労支援を主軸に活動を展開

ダイバーシティ委員会8月例会には約40名が出席。司会をNPO法人フェアスタートサポートの小金井花さん、座長には同団体の理事を務める小林雅人さん(株式会社ワイズ・インフィニティ)が務めました。

はじめに、永岡さんが取り組んでいる「フェアスタート」の活動事業についての説明がありました。フェアスタートは児童養護施設出身者を中心とした若者の就労支援を主軸に活動を展開しており、2011年の設立以来、フェアスタートは資本金500万円、年商3,000万円(2法人合算)、社員数6名という規模で着実に成長を遂げて、その事業は14年間続いています。

フェアスタートの事業は同業他社が存在しない、独自のビジネスモデルです。全国的な注目度も高く、NHKをはじめとするメディアで紹介されることも少なくありません。また、同友会での障害者問題全国交流集会(障全交)での2度の報告や、各県の同友会に招かれるなど、多くの場で紹介されています。

フェアスタートの事業をはじめた背景と動機

永岡さんがこの事業を始めたきっかけは、2010年に参加した子供の貧困をテーマにしたシンポジウムでした。児童養護施設出身者が社会に出た後、就労や生活に苦労する現状を知り、これを解決することが社会全体にとって有益であると感じたことが、事業を始める動機となりました。

施設出身者たちは、家庭の事情により親から離れて生活しており、進学や就職の際に多くのハードルに直面します。特に、進学率が低く、キャリア教育が不十分なため適切な意思決定ができず、早期に仕事を辞めてしまうことが多いという課題が浮き彫りになりました。永岡さんは、こうした若者たちが社会で埋もれてしまうことを防ぐため、この問題に取り組むことを決意しました。

事業の概要と取り組み

フェアスタートの活動は、児童養護施設出身者を対象に、彼らが社会に出るための支援を行うことを目的としています。具体的には、企業と連携して若者たちに就労体験を提供し、キャリア教育を施すことで、彼らの自立を支援しています。

活動初期には、資金調達やネットワーク構築に多くの困難がありました。永岡さんは企業に対して施設出身者の就労支援の重要性を訴え、理解のある企業との協力関係を築きました。また、児童養護施設を訪問し、自社の活動を理解してもらうことで、信頼関係を構築しました。これにより、支援対象者を増やし、就労支援の基盤を確立しました。

しかし、マッチングが成功しても早期に離職するケースが多く、これが課題となりました。永岡さんは、若者たちの声を直接聞き、彼らがなぜ離職するのかを探るためにヒアリングを実施しました。その結果、キャリア教育が不足していることが主な要因であると分かり、事業の重点をキャリア教育にシフトさせました。

NPO法人の設立と事業の発展

当初はソーシャルビジネスとして事業を開始しましたが、人材紹介料だけでは十分な支援ができないことに気付き、NPO法人を設立しました。NPO法人としての活動により、助成金や寄付を活用して、より広範な支援が可能となりました。特に、地域の中小企業との連携を強化し、施設出身者たちが地域に根ざした生活を送れるよう支援しています。

例えば、静岡県沼津市では、地域企業と施設との連携を進め、若者たちが地元で就職できるようサポートする取り組みが行われています。このような活動を全国に広げることで、地域社会全体の支援ネットワークを構築することを目指しています。

現在の活動状況と成果

現在、フェアスタートは約14年間の活動を経て、多くの若者を支援してきました。就職相談件数は750件を超え、企業とのマッチング事例も増加しています。また、NPO法人として助成金の獲得や寄付金の増加により、安定した運営になってきました。

特に、東京都の調査によると、施設出身者の就職後1年以内の離職率は43%に達していますが、フェアスタートを通じて支援を受けた若者たちの離職率は20%程度まで低下しています。これは、キャリア教育や職業体験が若者たちに大きく寄与しているとことを示しています。

今後の展望として、今後も地域社会との連携を強化し、全国規模での活動展開を目指すこと、地域ごとの企業と施設の連携を深め、若者たちが地域に根ざした生活を送れる環境を整えることを目標としています。また、NPO法人としての活動を通じて、日本全体にキャリア教育の重要性を広めることで、社会全体の課題解決に貢献したいと考えています。

ダイバーシティ委員会の次回例会案内「勇気と希望をお届けするレインボーコンサート」

次回のダイバーシティ委員会の例会は、アクティブシニア部会、女性部会と共催で2024年9月21日(土)開催となります。

障害がありながらも歌手として活躍する天羽柚月さんをはじめとするアーティストたちによるコンサートです。詳細は以下をご覧ください。

勇気と希望をお届けするレインボーコンサート